第3ー2話 霹靂とは青い空を見ていたからこそ気づける

 しかし金曜日。真央の目に映る俺は再びゴミだった。木曜日の勢いで元気良く挨拶するも、返ってきたのは舌打ちだけで、最悪の気分で学校に行くことになった。


 授業中。この不可解な事象についてずっと考えていた。


 薄々感じていたのだ。あの木曜日の真央は真央でなかった。見た目は彼女だ。しかし中身が違う。気の迷い、とか演じていたとかでは決してない。


 別人だ。真央と繋がった血がそう言っている。兄ちゃんブラッドが騒ぎ立てる。


 俺の漫画脳は真央の中に別の誰かの人格が入り込んだという仮説を組み立てた。

 幽霊などに乗っとられるとか、二重人格とかでは無いように感じたからだ・・・・

と言うのも真央がポロッと俺の宿題の内容について話していた事を思い出したからだ。


 俺の宿題の内容を学年の違う彼女が知るはずもない。ここで俺は、もしかしたら同級生の誰かが、妹の中に入っているのでは?と思った。


 誰かの人格が入り込む・・・・こんな考察は馬鹿らしいと思うか?


 じゃあ真央の事をよく知る母親に聞いてみよう、と思ったのが土曜日。

 この日は真央は外に遊びに行ってしまっていたので会話をしなかった。だから入れ替わりが起こったのかどうかは知らない。


 母は俺の仮説を鼻で笑った。曰く彼女に変化は全く無いと。曰く真央は俺の事を嫌っていないと。曰く彼女は俺に対して常日頃から優しいと。


「ほら。よくあんたが醤油欲しがったらすぐに取ってくれるじゃない。あれよ。あれ」

「それは優しさって呼んでいいのか?」

「バカね。そういう小さな事に気づかないで、目に見える変化が生じた時だけ文句を言うようじゃ嫌われるわよ。晴天の霹靂に文句を言えるのは、常に空を見ている人だけよ」

「なかなかに詩的な表現で・・・」

「女優の表現力ってのは演技だけじゃないのよ」


 そう母に諭されるも俺は納得していなかった。


 謎は解けぬまま、翌日。

 日曜日の真央は正真正銘の真央だった。

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