マリーローズside-4-







 十年後


 王立レモングラス学園に通うようになる頃にはレバート、バーム、エルダーだけではなく、ナルキスもマリーローズを女神のように崇めている。


 優秀な婚約者にコンプレックスを抱いている事に対してマリーローズが彼等を認める言葉を常日頃からかけている事もあるが、何と言っても───。


 マリーローズが美和子だった頃に培った、パパ達を夢中にさせた手練手管を行使して男達を夢中にさせているのだ。


 彼女の術に嵌まった攻略対象者達はマリーローズに金品やドレス、アクセサリー等を貢いだりするだけではなく、テストの時には教師を買収して全教科満点にするように圧力をかけている。


 攻略対象者達のおかげで王立レモングラス学園を首席で卒業し、逆ハーエンドを達成したマリーローズは晴れて王太子となった。


 逆ハーを達成しているので、王太子妃になった今でもマリーローズはナルキスだけではなく他の攻略対象者達との関係が続いている。


 そんなマリーローズが王太子妃になって数年後、彼女は男児を産み落とした。


 本来であれば王子誕生に祝福するのが通例なのだが、マリーローズの腕に抱かれている赤子がナルキスと同じ金髪でもなければレバートと同じ青い髪でもない。


 バームと同じ赤い髪でもなければ、エルダーと同じ緑の髪でもない。かといって母であるマリーローズと同じ紫の髪でもない。茶髪だったのだ。


 そう。


 美和子だった頃の記憶を取り戻したと同時に、心の奥底では常に欲求不満を抱いていたマリーローズ。


 幼い頃は自分で自分を慰めて、学園に通うまでに出会った攻略対象者達を相手に欲求不満を解消していた。


 だが学園を卒業し大人になると攻略対象者達は多忙となり、マリーローズは逆ハーメンバーと楽しめなくなった。


 逆ハーメンバーが自分を構ってくれないので、マリーローズは城内に居る見目麗しい兵士や庭師達と遊んでいたのだ。


 愛しいマリーローズが産んだ子が自分達の特徴を受け継いでいれば、ナルキス達は父親として子供に接しただろう。


 だが、愛しい女が抱いている赤子には自分達の特徴が何一つ見受けられなかった。


 自分達以外の男と不貞をしていたという事実は憎いはずなのに、それを上回る愛しさを覚えた攻略対象者達は愛しい彼女が自分達以外の男に目を向けないように、自分達以外の男と言葉を交わす事がないように、自分達以外の男と交わらないように、彼等は産まれたばかりの子供を孤児院に預けた後、マリーローズの為だけに特別な離宮を造設しそこに幽閉する事にしたのだ。


「出して!出してよ!私はナルキスの跡取りとなる王子を産んだ王太子妃なのよ!!!」


 離宮の一角に閉じ込められたマリーローズは扉を叩くが、ナルキスの命令なのか、門番は王太子妃の助けを求める声を無視している。


「何で?・・・何で私が閉じ込められなきゃいけないの!?」



 どこかで行動を間違えてしまったから?


 だから自分でも知らない内にバッドエンドルートを進んでたの?!


 やっぱり本物のヒロインじゃないから!?




 攻略対象者達の行動が自分に対する愛から来るものだとは夢にも思っていないマリーローズは、己の未来を想像してしまい声を荒げて嘆くのだった───。









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どうやら私は乙女ゲームの聖女に転生した・・・らしい 白雪の雫 @fkdrm909

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