マリーローズside-1-
「マリーローズ!ガニメデス王国が認めた聖女であるライムミントに対して罵詈雑言を浴びせただけではなく、命まで奪おうとしたそうだな!お前のような女を妃に迎える訳にはいかないし王妃になるなど民は納得せぬだろう!マリーローズ、お前との婚約を破棄する!」
調査の結果、オノコスキー公爵令嬢による聖女に対する嫌がらせという言葉が可愛く感じる殺人未遂が真実だった事が分かったので王太子の婚約者だった彼女は国外追放。
実家のオノコスキー公爵家は責任を取る形で伯爵に降爵となり、晴れてライムミントは王太子と華燭の典を挙げるのだった───。
女の脳裡に過るのは、婚約者に対して断言した金髪碧眼の男性及び緑とか青とかの髪のイケメン達に守られる一人の美少女と、そんな彼等を睨みつける目つきは鋭いが美人である事が伺えるオノコスキー公爵令嬢の姿だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この場面って確か王太子であるナルキスによる婚約者の断罪から聖女にして王太子妃誕生へと続くシーンじゃないのーーーっ!!!」
異世界転生ってネット小説とかで見るけど、我が身にそれが起こるなど夢にも思わなかった。
空が夜の帳に覆われている深夜
目を覚ましたと同時に前世を思い出し、ゲームではマリーローズと呼ばれていた少女は頭を抱えながら絶叫するしかなかった。
どうやら自分は学生時代に暇潰しでプレイしていた【聖なる箱庭】という18禁な乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生してしまったのだ!
「転生するならマリーローズではなく、逆ハーでイケメン達に愛される日々を送るというエンドが確定しているライムミントが良かった・・・」
ヒップバーム伯爵令嬢にしてヒロインのライムミントの髪の色は穀物を象徴する淡い金色、水と氷を象徴する水色の瞳に自然の恵みを象徴する緑色の瞳を持つオッドアイ。女であれば誰もが夢見る女性らしい理想的なプロポーション。
そして聖女である事を示すかのように全ての属性に適性があるだけではなく膨大で聖なる力を感じさせる魔力。
ライムミントの聖なる魔力のおかげでガニメデス王国は豊穣で水が枯渇する事もない。
正にチート!
そんなヒロインに転生したかったと心の底から思っているマリーローズの前世は竹下 美和子という。
両親に甘やかされて育った彼女は親ガチャに恵まれていたと言ってもいいだろう。
一代で企業を成長させ巨万の富を築いた父親は一人娘が入学した大学に近い場所に建つタワーマンションの家賃とは別に月百万円の生活費を負担してくれた。(学費は父親が負担であり、自身の高校時代の成績も良くなかったので裏口入学でもある)
美和子が身に纏っていた洋服にアクセサリー、バッグに化粧品は全て高級ブランドだ。それに綺麗でいる為にはエステに通わなければならないし、家事は家政婦に料理はケータリングかウーバーイーツに頼んでいる。
(月百万円!?たったこれだけで生活をしろだなんて無理に決まっているじゃない!!!)
美和子は父親に抗議したが、父親は娘の言い分に耳を傾けず『これ以上の我が儘を言うのであれば勘当する!』とまで言い切ったのだ。
男達は若くて綺麗な女子大生の美和子の言いなりになって彼女が望むままに貢ぎ、それと引き換えに美和子は身体を差し出した。Win-Winなお付き合いである。
そんな美和子も大学を卒業した後は就職し、父親が勧めた相手と結婚して専業主婦になった。但し、独身時代と同じように掃除洗濯は家政婦、料理はケータリングとウーバーイーツだったので時間が余っていた美和子は大学時代に知り合った男達とのWin-Winなお付き合いを続けていたが。
夫となった男はエリートであったが、一言で言えばケチだった。
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