第41話 おじさんと、カメリア。
すると、カメリアさんは顔を真っ赤にして、そのまま控室に戻ってしまった。あたりにはブーイングが起きる。
なんだか悪い事をしてしまったかな。
それにしても、あの女性……。
あっ、カメリアって、ツバキのことか。
もしかして。
いや、絶対そうだ。あのレイヤーさんは、椿先生だ。
スタイルが良いとは思ったが、あそこまでだとは思わなかった。俺の開脚の妄想は、上方修正しなければならないらしい。
そんなこと思ってると、椿先生からメッセージがきた。
「あの……、このことは学校には内緒にしていただけませんか? わたしにできることなら、どんなことでもしますんで」
やっぱり、正解だったらしい。
こういう時は、図々しいくらいのエッチなお願いをするのがお決まりなのだろうけれど、娘の担任にそれをする勇気はない。
おじさんは、打算的……、いや思慮深いのだ。
だけれど、まぁ、何かお願いしとかないと、逆に不安にさせちゃうか。
「じゃあ、つむぎともっと仲良くしてあげてください。あいつ、ああ見えても寂しがり屋なんで。それと、絶対に誰にも言わないので、安心してください。キレイで素敵でしたよ」
卑猥という感想は、胸の中にしまうことにした。おじさんが「卑猥」という単語を口に出すだけで、セクハラになりそうだし。
話しただけでセクハラ。
おじさんって、つくづく不遇だよな。
数分して、先生からメッセージがきた。
「ありがとうございます。内緒の趣味だけれど、知ってる人に褒められるのは、やっぱり嬉しいものですね。それと、わたし、つむぎちゃんのこと大好きなので、そんなお願いがなくても、かまっちゃいますよ。素直な子ですよね」
「そうなんです。こんな俺にはもったいない娘なんです」
「ふふ。つむぎちゃんも同じこと言ってましたよ。自分にはもったいないパパだって。あの、よければ、少し手伝っていただけませんか? 荷物が多くて……」
俺は控室の前でまつ。
すると、つむぎからメッセージがきた。
「先生には会えたか?」
って、アイツ。知ってたのか。
確信犯だな。もしかしたら、風邪も仮病かも知れない。今しがたの「いい子」認定を撤回したい(笑)。
先生は電車できたのかな。
荷物多そうだし、趣味といえども大変だよな。
先生が出てきた。
大きなスーツケース2個に箱を1つ持っている。多いとは思っていたが、思ったより遥かに多い。よくこんなん持ってここまできたよ。
「せん……、カメリアさん。すごい荷物ですよね。これ。俺、車で来てるんで、送りますよ」
「いえ、そんな。悪いです」
「この荷物を見逃すことの方が罪です。断られても送りますんで。ご心配なら、先生は電車で、荷物だけ俺が運んでもいいですし」
先生は、少し悩んでから頷いた。
「山﨑さん。紳士ですね。つむぎちゃんが言っていた通りだ……」
車に荷物を乗せて、先生には助手席に乗ってもらう。先生の家は、ちょうど帰り道の途中だった。これなら、本当にお安い御用だ。
先生は一人暮らしで、マンションの3階に住んでいる。俺が荷物を玄関先まで運ぶと、先生は言った。
「あの。何のお礼もできませんけれど、せめて、お茶でも飲んで行ってください」
先生はカギを開け、家に入れてくれた。
娘の担任女教師の部屋。
なんだか、言葉にできない背徳感と新鮮さにドキドキしてしまう。
先生の家は1DKで、1人なら快適そうだった。
俺は部屋に通してもらって、先生を待つ。
部屋は意外にも、白とピンクを基調にした乙女な雰囲気だった。アロマのようないい匂いがする。
男の気配はない。
彼氏は、いなそうだ。
すごく整理整頓されていて、本棚には専門書や小説がたくさん並んでいる。さすが、国語の先生。知性の塊のようなラインナップだ。
だけれど、ベッドの方の本棚には、ラノベが並んでいた。うん。それはそれで好ましい。
読みたい作品があったので、ベッドの向こうの本棚から数冊を手に取ってみた。
先生はこのベッドで寝てるのか……。
キチンと整っていて、俺のベッドのように、枕が裏になったり縦になっていたりはしていない。
だから、つい興味本位で、粗探しをしたくなってしまった。手始めに、掛け布団をめくってみた。
すると、何枚かの下着と、つるんとした棒状のものが置いてあった。いや、隠してあったと言うべきか。
……これ、大人のオモチャだよね?
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