第40話 おじさんとコスプレ。
それから、時々、先生とメッセージの交換をすることになった。
先生は見識が広く、子供達のこともよく考えている。とても好感のもてる女性だ。偶然、俺と同じ大学出身ということもあり、それからは頻繁にメッセージをくれるようになった。
挨拶や世間話などができるようになった。つむぎのことも相談しやすいし、助かる。
俺は最近、腰が痛い。
腰を使うような行為はしてないし、たぶん、単に自重が重いんだと思う。困ったな。悪化してヘルニアにでもなったら大変だ。
椿先生はマッサージが得意らしく、腰のことを相談すると、「機会があったら揉んであげます」と言われた。
でも、機会って言っても。どういう場所とタイミングだと、マッサージを頼めるんだ?
そんな機会は一生ないと思う。
リップサービスだな。
ある日、つむぎが俺の部屋に飛び込んできた。
「我、来週、◯◯神社でやるコスプレのイベントに行きたい! 行きたい! いきたーい!!」
なんでも、つむぎが好きなレイヤーが、つむぎの推しキャラ『淫魔 サリス』をするとかで、絶対に見に行きたいとのことだった。
まぁ、イベントは学校のない日だから、いいけど。っていうか、その淫魔とかいうキャラ大丈夫なのか?
公然わいせつで会場入りする前に逮捕されそうなんですけれど。
こいつ、18禁ゲームとかやってないだろうな、別の意味で頭が痛い。
イベント当日、つむぎは風邪をひいた。
つむぎは、こういう時に運が悪い。昔からそうだ。小学校の遠足でも、前日までは元気なのに、当日に熱を出すのだ。
俺が看病していると、看病はりんごの方が上手と言われてクビになった。俺は役立たずだから、代わりにイベントにいって、お目当てのレイヤーの写真を撮ってこいとのことだった。
たしかに、りんごの方がいいのだろうけど。
お父さん。悲しいです。
そんな訳で、俺はコスプレ会場にいる。
神社の境内でやるとのことだが、すごいな。よく許諾をとれたと思う。神主さんもコスプレオタクなんだろうか。
俺が呆然としていると、観客がゾロゾロと移動しはじめた。イベントが始まったらしい。
俺は会場案内をみる。
つむぎのお目当てのレイヤーさん。カメリアさんと言うらしい。うーん。どこにいるんだろ。
少し歩くと、一際大きな人だかりがあった。
人混みをかき分けると、いかにも淫魔というコスチュームの女性がいる。
ボンキュッボンという言葉が相応しい肢体。切れ長の目には青いコンタクトレンズ。ウエストでセパレートしている翼のついた黒い衣装に、パンツまで見えるフリルの短いスカート。網タイツを履いている。黒い髪に、赤いアイラインのメイク。
あれがカメリアさんか。
相当の美形だ。
きっと、プライベートでもかなりの美人なのだろう。
肉感的なお尻を突き出し、片足をあげてポーズをとっている。なんだか舌を出して棒みたいなのを舐めてるぞ。
エロい。
エロすぎる。
つむぎ、この人を好きって、ほんと大丈夫なんか? あいつの本棚、チェックした方がいいじゃなかろうか。
カメリアさんと目が合った。
カラン……。
カメリアさんは、咥えていた棒を落とした。
ん。あの顔。
どこかで見たことがあるような……。
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