第25話 夜のパレード。

 

 それからは、渋るつむぎを引っ張って、いくつかのアトラクションに乗った。


 つむぎは、魔法陣がリアルじゃないとか、なぜ豚なのに話すのかとか、ピーちゃんがヒヨコのくせにデカすぎるとか。文句ばっかりいってる。


 りんごは、キラキラした目で楽しんでくれている。つむぎと2人だったら、虚無感で泣かされてたかもしれない。りんごは、留守番するって言ってたけれど、やはり、こういうところは大好きらしい。


 その後は、お土産を大量に買って、出口渋滞が起きる前に帰路についた。


 帰りの高速は渋滞だったが、皆んなで撮った写真を見ながら爆笑していたので、退屈はしなかった。


 つむぎは早々に爆睡してしまった。

 所詮は子供よのぅ。


 つむぎの大量のお土産が後部座席を占拠しているので、りんごは助手席に座っている。


 ……。


 会話がなくて気まずい。

 すると、りんごが口を開いた。


 「つむぎちゃんが言ってました。山崎さん、つむぎちゃんのお母さんとあまり上手くいってないって。もしかしたら、お父さんが1人ボッチになっちゃうかも知れないから心配だって」


 ……つむぎのやつ、そんな事を気にしてたのか。


 りんごは俺の右手に手を重ねてくる。


 「もし、そうなっちゃっても、わたし一緒にいますんで」


 「あぁ、大学を卒業するまではよろしくな」


 りんごの手に力が入る。


 「……いや、そういう意味じゃなくて、あの。ご迷惑じゃなければ、ずっと一緒に……」


 それって……。 

 なんて答えればいいか分からない。


 裸を見てしまってから、りんごが1人の女性に見えてしまうことがある。だけれど、同時に可愛い愛娘なのだ。


 だから、いまは受け入れることはできない。でも、真面目な性格の子だ。軽く扱うこともできない。


 「りんごちゃんはまだ子供だし、もうちょっと、せめて大学を卒業してから、また話そう」


 りんごは頬を膨らませると、声のボリュームをあげた。


 「わたし、子供じゃないです。いくとさんのワイシャツだって、いつもその。匂い嗅ぐと、変な気持ちになっちゃって。それでそれで……ひとりで……って、わたし何を。やっぱ何でもないです!」


 りんごは、プイッと反対を向いてしまった。

 怒らせちゃったかな。


 しばらく車を走らせる。

 りんごは流れる夜景を見ていた。


 でも、重ねた手はそのままだ。


 少しすると、りんごからもクゥクゥと寝息が聞こえてきた。この状態で寝るとは(笑)。


 まぁ、朝から、つむぎのお世話をしてくれてたし、疲れたよな。りんごに膝掛けをかけた。


 ちっ


 後ろの席から舌打ちが聞こえてきた。

 つむぎめ、起きてたな。


 「あーあ、我が千載一遇のチャンスをお膳立てしてやったのに意気地のないヤツよのぅ。もっとガツガツいかんか」


 「おまえなぁ……」


 「パパさまよ。一回しか言わぬから、よく聞けよ? アカシック•レコードからのすばらしき叡智じゃ」


 またまたアカシックな。

 はいはい。


 すると、つむぎは座席の後ろから腕を回して、俺を後ろから抱きしめるような体勢になった。そして、らしくない優しい声で語りかけてくる。


 「おとうさん。本当の家族を作っていいんだよ? ずっとずっと、わたしのために頑張ってくれて、ありがとうね」

 

 「おま……」


 つむぎは知ってたのか?

 だから、やたらとりんごと俺をくっつけようとするのか?  


 俺が振りか返ろうとすると、頬を押されて制止された。気づけば、俺は涙を流してきた。


 あっ。

 しまった。つむぎの腕に涙が落ちてしまう。


 すると、つむぎの声は、いつもの調子に戻っていた。


 「こんなことで泣くとは。ほんとうに仕方のないパパさまじゃのう。まだしばらくは、我も汝とともにおるからな。安心するがよい」


 中1の娘に慰められる俺。


 ……ダサすぎる。


 

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