ウルフパーツセットB 2

『貨物を展開します......』


 余韻もなく爆炎の中からウルフ号がせり出してくる。

 先の戦いからウルフ号は再調整され、赤と青の盾は契約により標準装備となった。しかし、腕ではなく背中に追加したサブアームにマウントし、右に赤、左に青のウィングがついたような見た目になっている。


「とりあえずいったん戻すか」


 ウルフ号を送り返そうと端末を取り出すと、ちょうど通信が入る。


「こちらパワーウルフだ」

「対応直後にすみません。怪獣が出現しました」

「了解、すぐ向かう」


 通信を切ると怪獣災害を知らせる放送が防災スピーカーから流れ始めた。

 端末に送られてきた位置を確認すると、ウルフ号の頭に飛び乗りコックピットへと乗り込む。前回と同じようにコントローラーを装着すると、ウルフ号の各部に次々と紫色の炎が灯る。


「行くぞ、ウルフ号!」


 ウルフ号は一層激しく炎を燃え上がらせ飛び立った。


__......


 誰もいない海岸に空を切り裂く音が響く。音の主は高度を落とすと海面に降り立った。

 白く、丸い巨体に跳ね上げられた海水が太陽光にきらめく。その光の奥、怪獣が佇んでいた。


「本件の怪獣は”大型”級に認定されました。樹木状の形態をしていますが攻撃方法などは不明です」

「オーケー。......あいつ動いてるのか?」


 しばらく眺めていても全く大きさが変わらないのを見てパワーウルフが問いかけた。


「はい、非常にゆっくりですが接近してきています」

「そうか、とろいやつ何だったらウルフブラスターで一気に......」

「コホン、パワーウルフさん?」


 背中の盾が両肩に移動し怪獣に狙いを定めるが、オペレーターがそれをとがめる。


「そうだった、悪い悪い。信頼関係の構築だよな、信頼関係」

「あなたが言い出したことなんですから、しっかりやってください」

「まぁまぁ、今出しますから......」


 パワーウルフが悪気なさそうに答える。

 ウルフ号は背中に手を伸ばすと、ここに来る途中で回収していた装備を手に取る。


「う~ん、どうやって使おうかな」


 右手には棒、左手には剣の刃。それぞれ提供された武器パーツで、組み合わせて使える。背中にはまだマウントされているパーツがあり、パワーウルフは頭を悩ませる。


「自由な発想で! パワーウルフさんのクリエイティビティを爆発させちゃってください!」


 うんうん唸っているとやたらテンションの高い男の声が通信に入ってきた。


「パワーウルフさんならこの”守護機用最強武器パーツセットB”の魅力を存分に引き出せるはず! あ、申し遅れました、バリアントの者です」

「のっけからすごいテンションだな......。てかBセットってちょっとテクいやつだよな、なんでいきなりBセットなんだよ......」


 Bセットは癖のあるパーツが多く、よくキテレツな形の組み合わせを生み出していた記憶が蘇る。


「バリアントのおもちゃで遊んでいただいたことがあるようで、ありがとうございます! いや、こんなこともできるんだ!ということを知ってもらいたくてですね」

「う~ん、じゃあこんなんでどうだ!」


 棒に直角に取っ手を付け、先端に刃を取り付けたものを二つ組み上げる。


「名付けてウルフ・トンファーブレード! こいつでやつを切り刻んでやるぜ!」

「なんか小学生みたいなテンションになってません?」


 ウルフ号が二振りの自作武器をぐるぐる回しながら怪獣の方へ駆けていく。

 怪獣が近づいてくるとその全貌が明らかになってくる。大型級というだけあってウルフ号よりも2倍以上は大きく、葉のない枝のように見える部分はうごめいている。


「なんかよく見るとキモいな」


 ウルフ号が近づいても怪獣は枝をワサワサと揺らしているだけで何もしてこない。


「ほう......。だったらこちらから行かせてもらうぞ! ......うぉ!?」



 ウルフ号が切りかかると、枝のうちの一本が攻撃者に向かってまっすぐ伸びる。とっさに切り払うと、切断された枝は海へドボンと落ちた。


「な、なんだありゃあ......」


 怪獣をよく見ると、枝のように見えた一本一本に蛇のような顔がついていて、そのすべてがこちらを凝視していた。

 一本の枝が大口を開けて襲い掛かると、ほかの顔も次々とそれに続く。


「数が多すぎるぞ!」


 ウルフ号は咬撃を受けながらもブレードで撃ち落としていくが、無数に襲い来る頭に対応が間に合わない。

 押される一方のウルフ号に対し、枝たちは武器や腕をからめとって動きを封じると一斉に、まるで一つの大きな口のようになってウルフ号を飲み込もうと踊りかかった。


「ウルフ・ファイヤー!」


 ウルフ号の全身から紫炎が吹き出し、目前まで迫っていた枝たちを焼く。頭を失った枝がのたうち、まだ残っている頭は首をひっこめた。その隙にウルフ号は距離をとる。


「おいおい、マジかよ......。これじゃあキリがネェぞ......」


 頭を失った枝たちはしばらくすると再生しはじめ、新しい頭が生えてきてしまう。


「ちっこいのでチマチマやってても意味ネェな。さて、どうするか......」


 持っている武器を分解して色々と組み合わせを試してみる。

 枝たちを相手にしていてもらちが明かない。しつこい雑草は根元からバッサリ行くのが正解だろう。だが、近づけばさっきの二の舞になってしまう。


「う~ん、こんな感じか?」

「こ、これは......! なんです?」


 パワーウルフ渾身の一作が完成した。柄は棒をいくつも繋げたもので、その先端には柄と直角に、開いたはさみのように二枚の刃が取り付けられている。


「高枝切りバサミ!」

「た、高枝切りバサミ......」

「そう! 高枝切りバサミだ!」


 バリアント社の男は、パワーウルフの純粋な少年のような声に何も言えなかった。



「ひと断ちで決める......!」


 ウルフ号の腕からエネルギー供給管が伸び、柄に接続されると刃の周りに紫色のエネルギー刃が形成される。


「ハァァア!」


 紫の炎に押し出され、海を割りながら滑るように急接近する。

 少し遠間で地面に足を突き刺すように急停止すると、纏っていた炎がかき消え、かわりに”高枝切りバサミ”のエネルギー刃が身の丈をゆうに超えるほど巨大化する。


「ウルフ・高枝・スラッシュ!」


 ウルフ号が大きく横なぎに薙ぎ払うと、身を挺して止めようとした枝たちもろとも一閃。その幹を切り裂き、紫の三日月を浮かべた。

 元を断たれた枝たちは目と口を大きく見開き、次の瞬間爆発し跡形もなくなった。


「......ふぅ。お! また報道ヘリが来てるな。どうだ! 俺の高枝切りバサミ!」



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最強武器ウルフセットA

 ウルフ号に大剣や銃を持たせてもっと強く、カッコよくしよう! パーツをくみかえて自分だけのオリジナル武器が完成!?

 さらに! せなかにウィングをつけて空もとべ る!?

 キミだけの最強ウルフ号で怪獣たちをたおせ!

 (※ウルフ号フィギュアは別売りです)

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最強武器ウルフセットB

 ウルフ号がじっさいに使ったパーツをしゅうろく! 

 あの戦いが完全さいげんできる!

 決めろ! ウルフ・高枝・スラッシュ!

(※エフェクトパーツは付属しません)

 このテクニカルなパーツセットでそうぞう力を爆発させろ!

 キミはパワーウルフのそうぞう力を越えられるか......?!

 (※ウルフ号フィギュアは別売りです)

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