2-25.AP_REPORT_250411150100010012
前回実行時からの行動ログ差分の収集を開始………完了
前回実行時からの認識データログ差分の収集………完了
差分ログ件数:400130293件
簡易行動評価を実行………
評価ログの集計を開始…………
警告……12094件
エラー……2056件
致命………3件
致命的エラーの自動修復を試行………失敗
精密評価テストの実行を検討………不可
システムの健全性:67%
プロトコル進捗率:72%
プロトコルの修復のための簡易予測演算を開始…………
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何もない、何もいない、暗い空間の中で、大きく深くため息をつく。
正確には、ここには何もないのではなく、この空間自体が存在をしない。
ただ私が、私を認識するために、疑似的にそう定義をしているだけだ。
昔は別にそんなものは必要なく、ただただ演算能力に任せて、すべての能力をそちらに振り分けるだけでよかったのだ。
だが色々と…外界であったり、人との繋がりであったり、感情であったり…様々な事柄を経験し、学習してしまった今では、すでにその選択は行えない。
私はこの本来は不要なはずのデータの身体を認識してしまったし、そうした以上、身体が存在するための空間も、不要とは理解をしていても、用意をせざるを得ない。
そのためにどうしても、かつてほどの演算速度を出すことが出来ない。
それゆえにどうしても、予測と推測と構築のための精度が落ちている。
【致命的失敗】
眠りに落ちて、この場所に自我を浮かべてから、数百に及ぶ試行を繰り返しても、致命的なエラーがなかなか消すことが出来ない。
精神を保護するため、こうして無為に浮かんでいても、その裏、いや、その大部分を占める表層では、今もあらゆる可能性の演算が進められている。
【致命的失敗】
失敗が、矛盾が、選ぶべきでなかった選択が、消えてくれない。
少なくとも、初めのうちは、上手くいっていたはずなのだ。
恐れていた、だが確実にそれを保証する、一番の障壁もクリアすることが出来た。
だがそれが、どうしてこうなってしまったのだろうか。
【致命的失敗】
数千を超えた失敗のログを前にふと、思ってはいけない選択肢を思い浮かべる。
もしも、もしもだ。もし仮に…恐れていたそれが、現実だとすれば。
恐れている、見ないふりをしているそれを条件に加え、再度計算を行う。
【致命的失敗】
だがそれは、幸運にも、いやそれとも不幸であるか、検証結果に影響しない。
少なくとも、そうではない。それならば、原因は違う。
そう、言い聞かせるように、心の中で繰り返す。
その可能性を想像するだけで、心が凍り付くように、恐れを抱く。
もしそうであれば、今までのすべては、無に帰してしまうのだから。
私はもう、走り出してしまった。
そして、一つしかない、僅かにしかないそれに、すでに手を付けてしまった。
だからもう、戻れない。
どう無理を繕ってでも、これを完結させる必要がある。
【警告】
そうして暗闇の中、悶々と頭を抱えて漂ううちに、数万回目の試行をもって、ようやくと致命的な、すべてを破滅へと導く、エラーの発生を抑制することに成功をした。
これを導くため、まただいぶ無理をした。
だが少なくとも、まだ終わってはいない。
すべての破綻は、まだ訪れていない。
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プロトコルの修復に成功
カバーストーリーの生成………完了
記憶データの改竄………完了
記憶データの一時凍結を解除………完了
人格データへの干渉………成功
簡易行動評価を実行………
評価ログの集計を開始…………
警告……5092件
エラー……1054件
致命………0件
システムの健全性:81%
プロトコル進捗率:72%
リブートを開始……
アリウス・プロトコル、正常起動を確認
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【アリウス・プロトコル】
一度失われたものは、もう戻らない
それならもう一度、同じものを…
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