◆番外編 ピュアブライトリング 3
ダンジョンに入れるかな、と若干心配したがちゃんと入れた。
異性との経験ないからね。
ユニコーンフォレストは全50階。
10階ごとに帰還の魔法陣がある。
敵はグレイトホーン、アルミラージ、ヘラクレスインセクト、ガーゴイル、バイコーン、果ては東方にいるというオニと呼ばれる魔物もいる。
見事に角がある魔物ばかりだ。
ドロップ率を上げるためソロ挑戦。
もともと一人でも十分で、今までミストラルさんに合わせていたけどその必要もないのでさっさと駆け抜ける。
魔物もあまり倒さず、速さに物を言わせて無視していく。
道を塞いで倒さないとかえって時間がかかりそうなやつだけ倒す。
倒して得た魔石やドロップ品はどのみちギルドに持ち込めない。
男に戻ったあとに持ち込んでも何で持ってるのか説明できないし、クラリスのままではシビルカードを提示できないからだ。
ちなみに、性別を交換したあともシビルカードに変化はなかった。
なので、今僕は他人のカードを持っているということになる。
これはけっこうまずくて、他人のカードを理由もなく持つこと自体が犯罪とされている。
不正使用の目的いかんでは死刑もありえるという厳しさだ。
要は、カードでの本人確認を徹底するためだ。
だから、万が一他人のカードを拾ったりしたらすぐさま役所に持って行ってすぐに手放すのが正解だ。
そんなわけでたった2日で最奥に到着した。
ボスは真っ白くて大きいユニコーン一体。
汚れなき乙女にしか会わないというワガママ馬だ。
とっとと瞬速連斬で斬りつけて倒す。
A級ダンジョンのボスだろうが一撃で終わりだ。
女性に変化したからといって別に腕力が下がったりとかそんなことはなかった。
ちなみにユニコーンの攻撃方法は、睡眠状態に陥れる『夢のいななき』のほか、四大属性による魔法攻撃。
あとは瀕死寸前の場合のみ体当たり。
どれも多分見ることはないけど。
ワクワクしながら待って、出てきたのは魔石と通常ドロップのユニコーンピアス。
女性のみ速さが20%上昇するまあまあ貴重なアイテムだ。
【上級錬金術】でも作れるからあまりレアでもない。
結局、3回倒したところでピュアブライトリングが手に入った。
◇◇◇
『ユニコーンフォレスト』を出て、すぐにヴィクトリアと性別を交換しようとするが、思いとどまる。
いま来ている服や装備は女性用のものだ。
となると僕は女装した男になってしまう。
あと、世話になったサレンさんにお礼を言ったり、クラリスのことを好きらしいミストラルさんにもう会えないので探さないで、ということを伝えないといけない。
なのでもう少しだけ女性のままでいよう。
生理がまだ終わらないのでちょっとつらいけど。
◇◇◇
A級ダンジョン『ユニコーンフォレスト』からの帰り。
さっそく手に入れたピュアブライトリングを装備した帰りの道で、
「おう、お嬢ちゃん、一人でこんなところ歩いていると危ないよ。ひひっ」
いかにも盗賊な恰好をした頭目っぽいのが危ないセリフを発しながら5人の部下を連れて現れた。
「いえ、お気遣いなさらず」
めんどくさいのでそのままスルーしようとするが、
「そんな華奢なお嬢ちゃんが大層なお胸と剣をぶら下げて歩いてるとな、襲ってくださいって言ってるようなもんだぜ。剣士かな? 『くっ、殺せ』って言うのかな? 楽しみだぜ!」
うーん。
こいつらの頭の中は既に僕の服を剥いで次々と犯している妄想で一杯だ。
でも、ピュアブライトリングがあるからそうはならない。
具体的には、局部に不可侵の結界が貼られてるので絶対に挿入できないからだ。
それ以前に、こんな雑魚どもに力負けするはずがない。
そんなに僕は弱そうに見えるのかな?
ふと、ミストラルさんが以前言ってたことが思い出される。
『だいたい体のつくりとステータスって似てくるんですよ。腕力が高ければ相応に筋肉がつきますし、知性が高ければ賢そうに見えるものなんです。だから筋肉があまりついていないクラウスさんが前衛で敵をなぎ倒して息も切れない様子をみて、ものすごく違和感がありました。もう慣れましたけど』
僕の場合、交換でステータスを高めているからそれに当てはまらない。
だからヴィクトリアにも舐められたのだ。
そして、外見で判断するこいつらにも。
瞬速連斬すらもったいない気がするので、適当に斬りつけ、突き刺して殺していく。
6人全員始末して、近くの雑木林に投げ込んでおいた。
あとは野良の魔物が処分してくれるだろう。
もしかしたら賞金がかかってたりするかもしれないが、シビルカードを提示できない今の僕だと受け取れないので王都まで運ぶ必要がない。
ちょっと時間をとられたが、一つだけいいことがあった。
総じてレベルが低かったので、交換して僕のレベルを下げて【弱者の意地】を発動させやすくなった。
◆◆◆◆◆◆
いつもお読みいただきありがとうございます!
くっころを書けたので(セリフだけですが)満足です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます