◆番外編 ピュアブライトリング 1

【20万PV突破記念】

(第52話あたりからのifルートです)



 僕は愛読している『月刊 冒険者ガイド』を開いて、レアアイテム紹介のページを見ていた。


 そこには、今月のレアアイテムとして、アクセサリーの『ピュアブライトリング』が乗っていた。

 外見は何の変哲もないシルバーリング。

 効果は、悪魔系モンスターからの被ダメージ半減、悪魔系モンスターへの与ダメージ2倍。

 女性が装備する場合のみ男性からの性的接触をガードするという機能もつく。



 上級ダンジョンにいる悪魔系は基礎ステータスが人間よりも遥かに高いので、上位冒険者は大枚はたいてでも欲しい。

 また上級貴族の子女の護身用として必須のアクセサリーとされている。


 入手方法は、A級ダンジョン『ユニコーンフォレスト』のボスであるユニコーンからのレアドロップ。

 パーティ人数が少ないほどドロップ率が上がるという変則仕様。


 肝心のダンジョンには、入場に厳しい制限がある。

 男性と非処女は入ろうとすると弾かれるのだ。

 

 つまり、ピュアブライトリングを手に入れるためには、男性経験がない女性で出来るだけ少ない人数でA級ダンジョンを安定してクリアできる者が必要。

 そのため、流通はほぼない。

 オークションでごくたまに出品されるが、間違いなく大貴族に高値で買われる。




 うーん、さすがレアアイテム。

 ていうか、そもそもダンジョンへの入場条件が鬼畜すぎる。

 清らかな女性しか入れないってどういうことだよ。


 ちなみに僕的にどうでもいいけど、このダンジョンは貴族が結婚する前までにおかしなことをしていないかを確認するのに使われる。

 平民は婚前交渉しても別になんてことはないのに、貴族はそのへんダメらしい。

 厳しいね。



◇◇◇



 僕はミストラルさんとガルバリウム支部の2階に上がっていく。

 そして、見知らぬ女の人に声をかけられた。


「よう坊ちゃんたち、来るとこ間違えてるんじゃねえか?」


「ん、どういう意味ですか?」


 僕は言われていることの意味が分からず聞き返した。

 相手は大柄で赤髪を無造作にポニーテールで括っている。

 胸も大きいが、担いでいる斧も大きい。

 言うなればヒュージスの女版と言ったところかな。


「耳の穴腐ってんのか? なんでひょろっちいお前がB級の受付にいるのかって聞いてんだよ」


「それは僕がB級だからです」


「見たことない顔だが?」


「最近王都に拠点を移したんです」


「んで、どうやってB級に?」


「それは……」


「どうした、言えねえのか?」


「それは国にがあったからです、『鋼鉄のヴィクトリア』さん。ですよね?」


「あたしのこと知ってたか」


 直接は知らないけど、『月刊 冒険者ガイド』で見たことがある。

 ソロの女性でB級に成り上がった者。

 生まれつきの頑強な体とさらにそれを強化する固有スキル。

 ただし性格は猪突猛進で思い込みが激しい。

 それと、『特別な貢献』、と僕が口にした瞬間から彼女のステータスが見えた。

 それで名前が分かったのだ。


ってなんだよ? 金でランクを買ったんじゃねえのか? あたしはそういうのが大嫌いだ。今すぐB級を辞退しな!」


「いやです。正当な評価の上でのランクなので」


「あたしと勝負して実力を証明してみせな!」


「なんでそんなことしなきゃいけないんですか。ギルドが認めているんですよ。文句ならギルドに言ってください」


「あたしは自分の目で確かめたものしか信じねえんだよ」


「あなたの信条なんて知りませんよ。ていうか、あなただと僕に勝てないので時間の無駄です」


「なんだとこのガキ! 斧でカチ割ってやる!」


 ヴィクトリアが大きな声を上げて斧を持ち上げた。


「そこまでです。ギルド内での私闘は見過ごせません」


 ここでエリアさんが出てきて、仲裁に入る。


 ここまでか。

 まあここまで煽ればいいかな。



◇◇◇



 僕も『鋼鉄のヴィクトリア』もこの場は引き下がった。

 エリアさんからはお小言をもらったけど。


「クラウスさん、どうしてあんな言い方をしたんですか? あまりクラウスさんらしくなかったですよ」


 ミストラルさんからもお小言をもらうが、仕方ない。


「ええ、まあそんな気分のときもあります。ごめんなさい、気をつけます。それと、ちょっと用事ができましたのでしばらく単独行動してもいいですか」


「はあ、分かりました」


 これで準備は整った。



◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 20万PV感謝の番外編です。

 元ネタはどこかのコメントであった性別変えるというところからです。


 『特別な貢献』についてヴィクトリアが過剰に反応したのは、『お金を出したらランクを買うことができる』という噂をヴィクトリアが信じているからです。

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