◆番外編 レティ様ルート 8
教皇は聖女の補佐役、ということが明確にされ、以降教皇は聖女が指名することとになった。
こうして教国は安定に向かうかと思ったんだけど……
「レティシア様、スパイト王国が滅亡しました。原因である
ミストラルが持ってきたのはまさかの凶報。
「かの王国には【澄水の剣聖】がいたはず。帝国の【焔の剣聖】と並び称される彼ならその程度……」
「いえ、レティシア様、今回のスパイトのS級ダンジョン『死霊術師の塔』が原因のスタンピードの模様です。であればさすがの剣聖殿でもどうしようもなかったのでは」
「でもS級ダンジョンってスタンピードは起きないものなのでしょう?」
そこへクラウスがやってきた。
「いやレティ、千年に一度の規模で起きるんだよ。そして起きれば周辺国がまとめて滅びるんだって。エルフが言ってたよ」
「エルフが……? いやそれより早く対処を。歴代の聖女を防衛戦線に回して。神聖結界を展開させればしばらくは持つはず。魔力ポーションもあるだけ全部持たせて。聖騎士も出動よ。それと付近の街へ避難指示を。聖都で受け入れ準備。物資が足りなくなったら、ティンジェルへの支援要請を……、それは無理かもしれないけど」
「ただちに」
「クラウス、出番よ。時間稼ぎのうちに
「わかった」
◇◇◇
「いやー、これなんなんだろ。スケルトン、グール、ゴースト、カースドッグ、リッチ、レイス、ヴァンパイア、カーミラ、デュラハン、ノスフェラトゥまでいるよ。不死者の見本市かな?」
クラウスは、進軍のスピード差で先にたどり着いてきていた魔物を昇天させ前線を国境線まで押し返したあと、あたり一面不死者で埋め尽くされた地平線を眺めていた。
黒い波がうねりながら不気味な雄叫びを響かせつつこちらへ向かってくる。
「さて、やりますか。【MPバースト】、そして焼き払え、ディバインレーザー!」
クラウスの手元から一条の光が伸びていき、着弾点で大爆発する。
【光魔法マスター】の攻撃魔法により黒い波の一部が抉れた。
そして、さらにレーザーを左右に振り回して
「ここが、多分王都か」
黒い波を押し返し滅びし王国を進んでいった先にクラウスが見たのは、多数の廃墟。
家屋の数からおそらく王都だったのだろう。
一際大きい廃墟は王城だったものか。
その崩れた門の入り口には、一人の騎士が仁王立ちしていた。
そのフルプレートメイルは深青色、両手には幅広のバスタードソードがそれぞれ握られたまま地面に突き刺さっていた。
スパイト王国にその人あり、と謳われた【澄水の剣聖】は全身が焼かれ爛れて絶命してもなお魔物を通さんとばかりに。
「この人が【澄水の剣聖】……。澄んだ流水のごとき剣技はどんな攻撃も受け流し、二刀流を極めた彼の猛攻は反撃を許さず、暴虐を極める帝国の【焔の剣聖】すら対決を避けたという王国の守護神。さぞかし無念だったでしょう」
稀代の剣聖とはいえ、千年に一度の災害にはなす術がなかっただろう。
クラウスは一礼して敬意を表したあと、そこからさらにすすんで本命のS級ダンジョン『死霊術師の塔』へ向かうのだった。
◇◇◇
無人のスパイト王国の中心に私とクラウスはいる。
教国から聖騎士と神官を派遣して掃討しているものの、かなり負担となっている。
元から断たねば、ということでやってきた。
私の手には拳大の大きさの『聖石』が握られている。
これはクラウスが
効果は聖女の力を増幅すること。
「レティ、準備はできてるよ」
クラウスはMPタンクだ。
スパイトの地を浄化するには到底MPが足りない。
しかし、【MP限界突破】を持つクラウスと、MPを借りることができる私ならば。
『……慈愛、贖罪、正義を司る我が女神よ、貴方の使徒たる私は祈りを捧げ、穢れし魂を浄化する、ソウルピュリファイ!』
清白の輝きが聖石から放たれ、聖女最高の浄化魔法が強化された上で発動する。
「うおっ、まぶしっ!」
隣でクラウスが何か言ってるが私はそれどころじゃない。
発動する端からMPがごりごり減っていき、補充するため隣のクラウスからMPを借りる、これを同時に行うのはとても神経をすり減らす。
どのくらいこの作業を続けたのか、もう時間の感覚も麻痺してきて何も考えずにただひたすら作業していたところ、フッと手応えがなくなった。
成功したのだ、と思った瞬間私の意識は途絶えた。
◇◇◇
「お疲れ様、レティ。無事に浄化は終わったよ」
目が覚めたとき、視界に入ったのはクラウスのいつもの優しい顔だった。
「あれからどれくらい経ったの?」
「三日だよ」
「そんなに……」
私が寝ている間、
勝手に実行したのはミストラルだけど。
ま、教皇派を潰すために市井に噂をばら撒いたのも彼だったし。
ふふっ、聖女と英雄の婚姻なら皆から祝福してもらえるかもね。
◆◆◆◆◆◆
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