◆番外編 ギャングスター 1

(第11話 冒険者狩り 1  後半からのifルートです)


 ラークの森で採取を続けていると、【探知】に反応があった。

 薬草を採取する場所を変えるふりをしながらゆっくりと後ろに向きを変えると、少し遠くに黒づくめの人影が見えた。



 ステータスも見える。名前はタケヤマ、LV52、MPが何と200‼︎

 固有スキルは【ギャングスター】【最大MP2倍】(転生者特典)【風神の加護】【オートヒーリング】とある。


 ギルドでエリアさんが言ってたスキル強奪の犯人は多分こいつだ。


【ギャングスター】

・攻撃を当てた相手からランダムで1つスキルを強奪

・奪ったスキルによる技や魔法は消費MP半分で使用可能

・技について再発動までの時間が半分、魔法は詠唱時間が半分に短縮

・相手が死ぬと奪ったスキルは失われる

・攻撃を当てる前に、相手に対してスキルを奪う宣言が必要



 これっていったん固有スキル同士で【ギャングスター】を【交換】と交換しといて、そのあとこいつから【交換】を奪えば両方のスキルを持てるんじゃないかな。


 というわけで、さっそく【ギャングスター】と【交換】を交換する。

 ……このとき僕は重大なミスを犯していたことに気がつかなかった。

 レアスキルに目が眩んだのかもしれない。



◇◇◇



 タケヤマがひどく困惑している様子が見て取れる。

 【ギャングスター】がなくなってよく知らないスキルに置き換わっているんだもんね。

 このチャンスを逃さず、【ギャングスター】発動のための宣言をする。


「タケヤマ、お前のスキルを奪う」


 タケヤマに近づいて、ブレイズダガーで斬りつける。

 反応が鈍いのであまり実戦経験がなさそうなのが伺える。


『固有スキル【交換】を強奪しました』


 脳内でアナウンスが流れる。よかった。

 運良く一撃目で僕のスキルを取り返したぞ。

 斬られた腕を抑えながらさらに困惑するタケヤマに構わず、何度も宣言を繰り返してタケヤマを斬りつけていく。


 ……こうして、【最大MP2倍】【風神の加護】【オートヒーリング】や、他に持っていた汎用スキルを奪ってタケヤマを気絶させた。



◇◇◇



 タケヤマをどうしよう? スキルを奪ったから用無しだ。

 僕が【ギャングスター】を持っていることは知られるべきではない。


 口封じするのがベストだ。

 でも、殺したらコイツから奪ったスキルが使えなくなるんだよね? あれ、僕間違った?


 行動不能にしておいたタケヤマを横目にあれこれ考えていたので、こちらに来る人間に気が付かなかった。


「ん、クラウスではないか? こんなところでどうした? 気絶しているその男は一体……? 黒髪の黒づくめの格好、もしや『冒険者狩り』では!」


 サブマスターのマリーさんが僕を見つけて駆け寄り、僕の横にいるタケヤマを発見する。


「ええ、偶然出会って僕のスキルを奪われると思ったので、気絶させました」


「そうか、私も探していたが先に見つけるとはお手柄じゃないか。さすがエリアリア様が見込んだだけはあるな」


「え?」


「いや、なんでもない」


「……う、うう。はっ、貴様、よくも俺のくれたな!」


「クラウス、離れろ!」


 そう言いながらサブマスは、目が覚めて僕に襲いかかろうとしてきたタケヤマを素早く取り押さえた。


「クラウス、どうやら話を聞く必要がありそうだな」

 

 あ、もう隠せない。タケヤマめ、余計なこと言いやがって。

 サブマスの鋭い目が僕を見つめていた。



◇◇◇



「なるほど。ということはタケヤマを処刑すれば、奪われた者にスキルが戻るかもしれない、と」


「ええギルドマスター、その可能性が高いと思います」


 あのあと、タケヤマをギルドに連行するサブマスに着いて僕もギルドにきた。


 ギルマスの部屋で、ギルマス、サブマス、エリアさんと向き合い、僕はタケヤマに遭遇し自分の固有スキルで【ギャングスター】を所持することになったことも含めて全て隠さず話した。


 タケヤマのあのセリフのせいで僕がスキルを奪うスキルを持っているということがサブマスに間違いなくバレているし、タケヤマと共犯で仲間割れとかしたとさえ思われているかもしれないとかの疑いを晴らすためだ。


 サブマスやエリアさんを交えて素直に話せば悪いことにはならないだろうという打算もあるけど。



 僕はタケヤマから【ギャングスター】を交換したとき、多分タケヤマも気づいてなかったであろう特性に気がついていた。

 【ギャングスター】は、所持者が死ぬと奪われたスキルのレベルが上がって元のスキルの所持者に返る、という特性についてだ。

 これもちゃんと話したので、当然タケヤマを処刑しようという話になる。


「あの、タケヤマを処刑しない……のは無理ですかね?」


「……クラウスさん、タケヤマを処刑すれば貴方がもともと持っていたはずのスキルもあわせてなくなるのではないかと危惧しているのですか?」


「エリアさん、その通りです」


「クラウス、被害者が奪われたスキルの補填をお前が出来るのか? 逆に考えろ。このままタケヤマを処刑すればお前は自分の稀有けうな固有スキルを犠牲にしてまで『冒険者狩り』を捕まえた英雄となるのだぞ。処刑に反対したとなれば英雄どころか共犯者と見られるかもしれない。それが嫌だからこれまでの経緯を素直に私たちに話したのだろう? どちらが賢いか言うまでもあるまい。私を失望させるな」


「…………はい」


 サブマスの言う通りだ。


「クラウスよ、どのみちタケヤマの処刑は免れん。お前には【ギャングスター】が残るのだ。どうすればいいかはいっしょに考えよう。マリーよ、判明している被害者を集めてくれ。その後処刑しよう」


「わかりました。一週間ほどお時間をいただいても?」


「頼むぞ」




◇◇◇




 そして一週間後、集められた被害者の前でタケヤマが処刑された。

 


◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 12話でなぜ【ギャングスター】を交換しないのか、というコメントがあったのを思い出したので、【ギャングスター】を交換した場合のルートを書いてみました。

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