第3話 10年前のあの日①
時は遡って今から10年前の2010年のとある夏の日。
俺はそこで1度死んでいる。
これは嘘や死にかけた経験などではない。
俺は確かに死んだんだ。
その日は俺と俺の家族である父、母、妹、弟の5人で江の島の海に海水浴に行った。
当時8歳の俺の妹と弟は当たり前だが俺よりも幼い。
その2人を父と母で見守り1番上でその時はスイミングにも通っていた俺は浜辺に近いところで遊ぶように母に言われ最初は浜辺付近で1人で遊んでいたが次第に甘え、沖の方へと言ってしまった。
最初は余裕だったが何回か大きい波が発生し気が付いたら俺はだいぶ浜辺から遠いところにいた。
途中までは俺でも足がついていたが気が付いたら足はつかなく、どんどん沖に流されていった。
戻ろうにも幼い体でゴーグルや浮き輪と言った装備も何一つなく、助けを求めようにも辺りに人は居なかった。
この目で見えたのは浜辺でウロウロしている母。
多分、名前が聞こえた記憶があるので俺を探していたんだと思う。
でも俺の体はそれを目に焼き付けたと同時に沈んでいく。
俺はその時、死を悟った。
あぁ、ここで俺は死ぬんだな。
もっと生きたかったな。
父と母には沢山迷惑かけたな。
まだ何も返せてないよ。
でも、言いつけを守らなかった俺が悪いんだ。
ごめんなさい。
そう思いながら俺はギリギリ顔を出して息継ぎで耐えていた状況から奥深くへ流され沈んでいく。
最後の最後に俺は今俺がいる沖よりちょっと奥に誰かがいるのを細くなっていく目で捉え、手を伸ばし今出せる声で助けを求め落ちていく。
そこで俺の心臓は止まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます