第10話
犯行時刻の1時間前に大阪道頓堀で大勢に目撃され、なおかつ大勢のSNSでその姿がアップされていたのだ。
「さすが大阪 グリコとタイガースのコラボ!」
「この時期にこの格好寒うないんかな」
「大阪といえばタイガース!大阪といえばグリコ!」
などのコメントと一緒にあげられた写真はピンストライプのタンクトップに同じ柄の短パン、胸にはタイガースの文字があり、グリコの看板と同じポーズで立っているものだった。
SNSにあげられるのは時差があるとはいえ複数のアカウントから同じ時間にあげられているので間違いなさそうである。
極め付けに高梨は交番に落し物を届けていた。
日時と名前がしっかりと記入されており、対応した警察官も本人に間違いないと言っている。
どんな手を使っても1時間で大阪から東京へは移動できない。
捜査がまた振り出しに戻ってしまった。
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武は相変わらず話せないが、この日は大谷が面会を求めて病院に来ていた。
高梨のアリバイが崩せない以上、武から少しでも何か聞き出せないかと藁をもすがる思いなのであろう。
今日は私が武に付き添っていた。
「たけちゃん見てこの写真。あの時もしもボックスの前でみんなで撮ったやつだよ」
「このことで何かいいたいんでしょ?たけちゃん答えてよ」
返事がない武の前でで写真を手にぼーっと座っていたところに部屋をノックする音が聞こえた。
面会はまだできないはずよね。と思いながらドアを開けると
「初めまして捜査一課長 大谷と申します。えっと・・武さんにご姉妹はいないとのことでしたが。あなたは婚約者とか?」
と言わ慌てて目の前でてをぶんぶんと振って「いとこです!兄弟のようないとこです」と答えた。
「そうでしたか。失礼いたしました。この度は大変なことで・・・」
とお互いに深くお辞儀をした。
「せっかく来ていただいたのですが面会はまだ出来ませんし、たけちゃん・・えっといとこ。あ、兄はまだ話もできない状況でして」
「そうですよね。分かってはいたのですが、申し上げにくいことに捜査が行き詰まっておりまして・・・何か少しでも情報があればと」
「あ・・あの。実はお話ししたいことがありまして。警察の方に私なんかが何かをお伝えるするのはどうかと思っていたのですが」
5年前の研究室での事と、武の「もしもし」のうわごとのこと、それが二人の中で交わした
もしもボックスのことなのではないかと言うこと。
そして現場の映像で見たあのボックスのこと。
5年前に終わった研究のはずが、現場の映像では決して古く見えなかったので何か引っかかっていたことなど、話の時系列が前後したり武との思い出も挟んだりしたせいで気がつけば二時間近くたっていた。
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