第8話

何か見落としているんじゃないか

伊原は熱くなった肩を片手で揉みながら、冷たいコーヒーを疲れた目に当ててため息をついた。


もう一度最初の映像を見る。


それからまた一駅ずつのカメラを凝視して「みつけた!!」


そこには黒い帽子に黒いTシャツ白いスウェットに赤いスニーカーを履いた男が映っていた。

「伊原さん。本当にその男ですか?」

若手の捜査員が疑わしい目で見る


「目立つ格好して不自然だと思ったらわざとだったんだ。電車の中で着替えたんだ。

流石ズボンまでは着替えられなかったから白のスウェットはそのままだ」


手ぶらなのを見ると荷物は電車に置きっ放しにしたんだろう。

格好を変えても、背格好と歩き方は変えられない。

男は肩をいからせて歩く。走るときは手のひらが開いている。


「伊原さん!流石です!」


「感心している場合じゃない。次はこの駅からの足取りを追うぞ」


降車駅を突き止め、入ったコンビニのカメラについに顔が写っていた。

キャップのつばで半分ほどしか見えていないが、顔認証にはギリギリかけられそうだった。


しかし過去に犯罪履歴がないと顔認証は意味がない。


犯人の素性を探るのと同時進行で犯行の動機を調べ

るのが捜査一課長の大谷貴司率いる捜査班である。

捜査一課とSSBCはよくタッグを組む

伊原と大谷はまとめて大谷翔平と陰で呼ばれていた。


大谷は現場から紛失したものを念入りに調査したが教授が死亡し、一番近くで働いていた研究員もまだ面会謝絶のため、何がなくなったのか分かる人がいなかった。

教授がしていた研究を遡り、それに関わっていた研究員たちを洗い出して行く。


一方伊原の方の顔認証はやはり空振りだった。

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