007 こまちちゃんねる その2

「じゃあ聞く態勢が整ったということで話すけどさ。私個人がユニークスキル派生で、アイテムボックスに似たスキルがあるんだ。もちろん、ギルドに開示した上で承認されてるし、資格も持ってる」


 裏から手を回してもらったので、きちんとした試験は受けてないけどな。

 でも義姉さんに勉強はさせられたし、公的でないとはいえ、一応テストはやった。そこらへんは兄が支部長をしているとはいえ、きっちりしている。

 試験時期や年齢などの制限を取っ払っただけのことであり、実力や知識がないのなら、さすがにギルドも許しはしない。


「あ、一応説明しておこうか。アイテムボックス系って一言でまとめてるけど、正式には『亜空間収納系』って名前があるんだ。試験とかに出るかもしれないから、受けるかもしれない人は覚えておいた方がいいよ。たまに引っ掛け問題で『異空間収納系』とか書かれてるやつもあるからね。『異空間』だと別の空間ってだけだから、時間経過が普通。『亜空間』だと時間経過も弄れるやつだね。どっちもアイテムボックス関連の試験で出るから」


 紛らわしいよねえ。


「覚え方としては、『空間』と『空間』かな。『あ』の方が五十音順で先に来るから、格が上って覚えておくといいよ」

「ああ! 本当だ⁉」


『マジだ⁉』

『ややこしかったのに一発で……』

『これは間違えませんわ』

アネゴチャンネル『さすアネ』

『これはさすがフェイスレスと言わざるを得ない』



 実際のところ、この覚え方は義姉さんから教わったことだからな。私はデカい顔などできないのである。ただそのことを伝えることはできないので、また今度謝っておこう。ちょっと香りの違う香水をあげたらいいかな。

 こういうときに贈り物で使えるように、私がプレゼントする香水の類は全部、瓶の大きさが市販のそれよりだいぶ小さいのである。三分の一くらいかな。だから同じ匂いのやつでも喜ばれるし、違うやつでもお試しに贈りやすいのだ。


「異空間系も悪くないけどね。収納庫としての能力は亜空間系より上だし」

「持ってない人の方が多いから、贅沢ってやつだよ~」


 ぶーぶー言わない。ほら、せせりもうまいぞ。塩だからって文句言うな。


 ところで私の「蔵」は異空間系に属するため、本来なら時間経過が存在する。

 そんなことは許されないと奮起した私は蔵の扉に掛けてる錠前に時間関連のスキルを付与した。マスターキーで扉が開かれていない間は疑似的に亜空間系となったのだ。


「で、そういうスキルを持っている身から言わせてもらうけど――まあ、国が管理しようとするのは当たり前だよね? むしろ日本はかなり緩い方じゃない? 外国だと『人権って知ってます?』ってレベルで管理されてるみたいだし」


 そこそこ近所のお国ですよね。


『やっぱりフェイスレスでもそう思うのか……』

『夢も希望もない』

『妥当じゃね?』

『ヤバすぎる』

『22世紀から安易に持ってきていいもんじゃないよな』

『アレはソレ以外もヤバいから』

『青い狸と一緒にすんな』

『フェイスレスも結局ギルド職員だし、国家の狗なんだろ!』

『いきなりポッケから銃やら刃物やら爆弾出せるわけだしな。持ってるだけでテロ予備軍扱いするのも、理屈の上ではわかる』

『ユニークスキルは選べないだろ』

『強制取得させられて犯罪者扱いはクソやろ』

『理屈の上ではって言われてるだろいい加減にしろまたフェレス怒るぞ』

アネゴチャンネル『適当にクールダウンしようぜ。コメント投稿前に深呼吸だ』


 自分たちで管理してくれているようで、助かる。

 まあ騒いでくれたら、それはそれで。ごはんを楽しめるので。これ晩酌配信なのにな。


「ぷひゅ~」

「お、かわいい吐息……と、かわいくないアルミ玉……」

「おっと、つい」

「は? どゆこと? は?」

「うっかりうっかり」


『なんかえぐいことしとる』

『は? 握力ゴリラ?』

『手の皮ゴリラ?』

『面の皮ゴリラ?』


 誰が面の皮ゴリラだ。


 私が何をしたかというと、ついマヨヒガの自宅で飲んでいる感覚で、飲み終わったビール缶をくしゃっと丸めてしまったのだ。コンパクトになるので。

 問題は片手で、かつ、ピンポン玉サイズまでまとめてしまったことか。


「まあ探索者をしてると、こういうことできるようになるよね」

「ならないよ⁉ どういうこと⁉」

「そのうちなるよ」

「なれるの⁉ なっちゃうの⁉ ええ……」


『ヒェッ』

『ヒュンッ』

『気軽に握手もできないこんな世の中じゃ』

『探索者怖すぎかよ』

『フェイスレスの言う探索者ってどのレベルからなんだ……』

『ぽわそん』

アネゴチャンネル『そんなアネゴについて行きます』

『冒険者たちでも厳しくね?』

『正直フェレス効果で登録者数増やしたってのはあるけど、こまっちゃんもライバー系探索者では強い方だったじゃん? それでもドン引きしてるんですが』

『誰かフレンチの魚料理を』


 魚料理ポワソンか。フレンチもいいな。食べたくなってきた。作るのはめんどくさい。

 うん。また今度食べに行こう。合わせるなら白ワインか、スパークリングワインか。意外と日本酒も悪くない。舌平目の良いやつを……。


「フェレちゃん?」

「おっと。……小町、また今度フレンチ食べに行く? 奢ったげるけど」

「マジ⁉ 行く行く! やった~、デートのお誘いだ~!」

「デートではないが」

「いいや! デートだね!」


『これはデート』

『間違いない』

『小町の喜びようがガチなんよ』

『さすがレズ公言するだけはある。そしてそれを誘うフェイスレス……』

『これは……』

『いや、フェイスレス好きな人いるって断言してるやん。男の』

『でも! 小町とのてぇてぇ百合が微レ存……』

『おれたちは百合が見てえんだ! 可能性くらい許してくれたっていいじゃないか!』

『腕組んで離すんじゃねえぞ……!』


「私は百合じゃないっちゅーに……」

「いいものですよ?」

「いらん」


 おっぱい揺らしながら近づいてくんな。それよりぼんじりも食え。塩だからって差別するな。ビールに脂っこいのは最高の組み合わせだろうが。

 枝豆代わりに魔目もあるし。


 ……そうかあ。塩だから、なかなか罠に食い付かないのか。しくじったなあ。

 いや、でも……アレはタレでなく、塩で素の味を楽しんでもらいたいしなあ……。


「ま、話を戻そうか。……晩酌配信で話すような話題じゃないと思うけど」

「いいのいいの! そういう気楽なのはそういうムードのときで! フェレちゃんがいるときにこういう真面目な話してくれるの、うちのチャンネル的にはすごくありがたいしさ~」

「そうなの?」

「そうなの! 普段は観に来ないような真面目な人たちが来たりしてるみたいだよ! もちろん、普段から観てくれてるリスナーもありがとうね! 感謝してます!」


『ええんやで』

『こっちも楽しんでます~!』

『酒が尽きた! どうしてくれる⁉』

『なんで1CS用意していないのか』

『焼酎4Lボトル買っといた』

『ウイスキー2.7Lボトルは常備してる』

『なんでこんな覚悟完了してるやつらばっかなん?』

『知らんのか? ここは酒吞童子の子孫のチャンネルだぞ? なお自称』


 まあそういうことなら、と新たなビールを開ける。

 今度は日本で一番古いクラフトビール工房の代表作。味が濃くてうまいんだ、これが。

 缶の方はぶっちゃけそこまでって感じだけど、瓶の方は美味しいんだよねえ。

 指で王冠を弾き飛ばし、「蔵」から取り出したビールグラスに注ぐ。

 どうでもいいけど、私はジョッキよりグラスで飲みたい派です。


「んん~、ぷはぁっ♪ うまいっ!」

「えっ? こっちまで良い匂いする。何、それ?」

「んっふふ、美味しいクラフトビール。温度管理もばっちりだ」


『なに今の口調』

『かわゆ』

『酔ってる?』

『フェレス意外と弱かったっけ?』

『温度管理もってことは、やっぱ亜空間系収納なのか』

『フェイスレスの持ってるスキルのすべてが最上級でも驚かん』


「飲んでみる?」

「飲む! 飲まないでか!」

「じゃあ新しいグラスを……」

「このままで! なんなら口移しで!」

「やだよ気持ち悪い」

「ぐはっ…………ありがとうございます!」


 あと酔ってる疑惑のリスナーよ、さすがにこの程度では酔わない。

 自分でお酒に強い方とは思っていないが、ウチの家族はだいたい強い方だ。なので、少なくとも人並みくらいには飲めると思う。

 ……家族と飲むと最初に潰れるのが私だから、まったく参考にならないんだよなあ。


「このクラフトビールは低温性酵母を使った下面発酵のビールなんだけど――」

「ストップストップ! 蘊蓄うんちく語り始めたら長いでしょフェレちゃん! それはまた今度か配信終わってからあたしがたっぷり聞くからさ!」

「あ~、それもそうか。じゃあそこはいったんやめとこう」


『別によかったのに』

『フェイスレス、イケる口だよな』

『そこらへんもあってか、割と中年とか上の世代の人もアネゴ好きだよな』

『ずばっと忌憚なく言うところもじゃね?』

『それはあるな。言っていいんか? ってとこまで言ったりするし』

『良くも悪くも、強いから許されてることではある。日本に三人しかいない特級救命探索者の肩書は重い』

アネゴチャンネル『いや待て罠だアネゴ! 小町の顔見ろ!』

『うわほんとだ』

『ニチャアってわらったよな今』

『嗤ってた』

『絶対何かろくでもないこと考えてる』


「だぁっとれリスナー‼」

「引くわー」


 けどこわいから魔目くん齧っておこう。実はアルコール分解酵素を多量分泌させてくれるので、お手洗いが近くなるのと引き換えに酔い難くしてくれる。

 正確にいえば、良い感じのほろ酔い以上にはならず、なおかつ翌日に残り難くなるのだ。あと油物系の分解を早めてくれる。

 お酒のお供として滅茶苦茶優秀なのである。なお見た目。天は二物を与えなかった模様。いや、性能と味はすこぶる良いから、二物は与えられているのか。それと比肩するマイナス要素があるだけで。


 それにしても……私が言うのもなんだが、話がなかなか元に戻らないな。

 お酒が入っているからなのは間違いないだろうな。あくまでも晩酌配信だから許されてるんだろうな、これ。ふわふわすぎる。会話も、雰囲気も。


「アイテムボックスのヤバさってさ、いつでもどこでも危険物を取り出せるとか、阻止する方法がないとか言われてるじゃない?」

「おおう、話が急に元に……。そうだね、そう言われてる」


『話題転換が急すぎる』

『陰キャコミュ障か?』

『強さゆえの傲岸不遜もありえるから困る』

『実は陰キャコミュ障のが萌えるだろうが!』

『それはそう』

『フェイスレスなのもそういう理由なのか……』


「あー。勝手に話すから、ついてけないリスナーのことは知らないよ? あとでアーカイブを見返すなりなんなりしてね」

「それでいいよ。それで?」

「ギルドの見解とか国の意見とかと似たり寄ったりになるんだけどさ。さっき言った通りのヤバさもあるけど、それより物流がヤバいでしょ。普及したら仕事失う人大量に出るじゃん?」

「あー。それはそうだね? まあ、普及って言っても、かなりの数が必要な気はするけど」

「…………なるほど。現役探索者で、一応配信者で食っていけてる小町でもそういう意見か」

「え?」


 私が言った一言に小町が固まる。

 同時に、リスナーたちも同様の反応を返し始めた。


 普及するまでかなりの時間がかかると思っているのだろう。

 現状のドロップ率などから考えて、そう判断している。

 甘い、甘い――人間の欲は、想像を遥かに超える。

 だからこそ、現実は小説より奇なりといわれるのだ。


「……たぶん、一瞬だと思うよ? 少なくとも出回り始めて一年以内に社会は変わると思う。否応なく変革を余儀なくされる。どこの流通関係だろうと――流通関係じゃなくてもお金出すだろうけど、まあ一番は流通関係だろうね――手に入れようと、数多く確保しようと躍起になると思う。それ自体が広告にもなるから、予算に糸目は付けないんじゃないかな? あとからいくらでも取り返せるって判断しそうだ」


 私の意見も入っているが、これは神様から与えられた手引書などに付随して書かれていた内容だ。だから不用意に収納系スキルの存在は明かさないように、とあった。

 まあ、私たちのような神様に選ばれた者の子孫ら関係者が自衛のために作った組織がギルドなので、公開しているのだけれど。


「一度民間に出回り始めたら、もう十年以上は止まらないよ。より良い性能を求める一方で、需要はいくらでもある。探索者たちはアイテムボックス特化型の人たちで埋まりそうだよね。下手したら、冒険者にも出てくるかも」


 間違いなくそうなるよねー。

 一般企業が手に入れられるなら、次は個人だ。

 中古なりなんなりで絶対出回るようになる。

 そうなると、もう抑えなど効くはずもない。


 数は力だ。

 今はまだ少人数だが、メインでアイテムボックスを掘りに行く連中が増えれば、あっという間だろうと私は思っている。


「犯罪大国が生まれるよね? あと流通が減るから、高速道路とかの管理財源が失くなるかもしれないよね? ……私はアイテムボックスが普及したら、こうなる社会がくると確信しているよ」


 だからこそ、今のうちに管理を一元化するのだ。

 国がアイテムボックスを管理し、ギルドを通して必要な探索者や組織にレンタルするという形で税収を得る。

 引き換えとして消費税なんかが軽くなる……ことはないが、「何か」が起こっても税金が重くなるという事態を避けられるかもしれない。

 そしてこれは、アイテムボックスの数が増えれば増えるほど税収が増えることに繋がる。

 国は意欲的になるだろう。治安維持と税収増額の一挙両得だ。

 そのための法律は、実はもう既に成立している。

 報道されないけれども。特級を優遇する法律と同じく。


「だから、アイテムボックスに関しては厳しく取り締まらなきゃなんだよ。こう言っちゃ悪いけど、黙って所持していたらテロ予備軍なんて当たり前の話だよ。国家騒乱罪とか転覆罪とかそこらに値すると思ってる。……もちろん、私個人の考えで、ね」

「……なんか、急にすごい真面目な話になったね」

「だから今回みたいな配信で話していいのか困ってたんでしょーが」


 嘆息しつつ、「食糧庫」から先日おっちゃんから買ったプチトマトのマリネ――を真似て私が作ったやつを取り出す。そのままだと、おっちゃんがこの配信を見たときにフェイスレスの正体に気付きかねない。

 まあ仮面の認識阻害効果が強いので大丈夫だとは思うのだが、一応。


 あー、うん、相変わらず美味い! もっと食べたいけど自分で作るのは面倒だった!

 三瓶分買ったけど、もっと買えばよかったかも? お代わりトマトを増やすべきか?


「まあ、誰がアイテムボックスを持っているのかとか、国が把握してわかってないと話になんないってわけですな。これに関しては、もし犯罪行為に使ってるヤツがいて抹殺指令とか出されたら、私は抵抗なく引き受けるね」

「いやいや、フェレちゃん、配信配信」

「おおう。そういう説もあったか」

「説て」


『抹殺指令言うてますやん』

『国家認定暗殺者』

『は? マジ? さすがに酒の席の冗談やろ?』

『あー。どっちもありえるから怖い』

アネゴチャンネル『粗相すればアネゴが来てくれるって⁉』

『サイコパスかな?』

『サイコパス量産かな?』

『アネゴに魅かれし者はサイコパスになるのだ……』

『馬鹿な、俺もサイコパスだと……?』

『親泣かせてるしサイコパスかなって』

『おいやめろ』

『こんな発言ができるやつはサイコパスに違いない……』


 んー。別に私の禁句ワードに入ってないから言っても大丈夫な範囲なのだが。別段報道されるわけじゃないし、知らないかー。

 あー、んー、そうねー。


「隠してるわけじゃないから、言っておこうか。周知させとくのも防犯に繋がりそうだ」

「おっと。なになに?」


 小町がわざとらしくノッてくれる。こういった際のフォローが、自分の色を出さずに私に尽くしてくれるから、たぶん、今もまたこうして彼女の配信に顔を出しているのだろう。

 利用しているのはこちらも同じことなのだ。


「ギルドも国も隠してないけどさ。救命探索者の、それも特級ってやつは特別な権限が結構あるんだ」

「ほうほう」

「そのうちのひとつが――これ物議を呼びそうなんだけど――殺人の肯定ね」

「は⁉」

「『死刑執行担当官』って役職というか役割というかがあるんだ。特級にはね。別に私たちが勝手に人を殺していいってわけじゃなくて、国とギルドの双方で『コイツは殺しておかないと、不幸な事態が拡がる』って判断した相手を殺しに行くわけ」


 意図的に露骨な言葉を使っていく。

 こんな話、反対意見があって当然。それをできるだけ、私個人に持っていく。

 人によってそれができるできないはあるのだろうけれども――まあ私は兄さんに嫌われないのであればどうでもいいので。

 兄さんは「理屈あっての殺人」はたぶん受け入れるはずだ。それも国やギルドの裁可があり、殺人機械として私が動く分には、私を嫌いになることはない。

 だから、問題なく言える。


「ダンジョンとかで常人離れした力の持ち主なんかはさ、不用意に放置できないわけ。特に犯罪者にでもなられたら大変でしょ? あるいは、法的には犯罪じゃないだけで、倫理的にはアウトなのとか。グレーゾーンもあれば、法の抜け道を通るのが連中の得意分野なわけだしね? あるいは、テロ組織。思い浮かぶの、あるよね?」

「あーあ、ああ! そういう……」

「言い方悪いというかアレだけど。私がこの国滅ぼそうとしたら、法に則って行動する限り、どうしようもないからね? そういうように立ち回るし、そうできるだけの技能があるからさ」


『そういうわけか』

『あーびっくりした』

『どっちにしろ犯罪者やんけ!』

『んー、なんとも言いにくい!』

アネゴチャンネル『ウチはアネゴ全肯定で』

『悪には悪を?』

『毒を持って毒を制す的な』


「おっ。今のコメント近いな! 毒を以て毒を制す……うん、その解釈でいいと思うよ」


 蛇の道は蛇でも可。


 相手がルールを守らないというなら、国やギルドもルールを守らないというだけの話。形振なりふり構わず国を守るのだ。あとは建前が付けばいい。


 そこまで必死にさせるくらい、ダンジョンで力を得た犯罪者というのは恐ろしいのだ。

 だからこそ、国やギルドも同じく、ダンジョンで力を得た切り札を切ることにしただけのこと。


「無法者に対処するために、法で取り締まれない力の持ち主を使うことにしたんだよ。それが特級。名目と表現が違うだけで、たいていの国では同じようなのがいるよ。公開、非公開はあるけどね」


 そういう意味では、日本は相変わらず甘ちゃんな国だろう。そういった人員が三名しかいないと公表してしまっているのだから。

 まあ、その三人は世界の探索者の基準からすると飛び切りだとは思うけどね? それでも数は力と言われると、私も反論は難しいかな。私含めて特級三人だって、そういう取り締まり業務で頑張りたいかと問われると、否なのだから。

 基本的に、国やギルドから請われてやっている職務であり、立場なのである。


 望んで殺人なんてしないよ。

 だって、殺してドロップとかないし。食べたいとかいう気持ちもないし。

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