006 こまちちゃんねる その1
「こんこんこんこんこんこーまち! 自称・酒吞童子と小野小町の子孫、酒呑小町です! 今晩の『こまちちゃんねる』は晩酌配信です! 恒例の特別ゲストもいるよ!」
「恒例と特別ゲストって両立するの?」
「いいの! するってことで!」
「いつものことだけど、テンションすごいよね。アホなの?」
「相変わらずの毒舌! 言いたいこと言ってくれるみんなのアネゴが来たよ!」
「誰がアネゴか。……はい、こんばんは。国選及びギルド認定特級救命探索者のフェイスレスです。お酒とごはんと聞いてやって来た」
『フェレス来た!』
『フェレちゃんだ!』
『いつもの特別ゲスト(棒読み)』
『知 っ て た』
『フェイスレス!』
『特別ゲストアリって連絡あったしねー』
『こっちも酒とつまみは準備しているぞ』
『一番認知度高いよな、特級の中で』
アネゴチャンネル『キター』
『ビール三本で戦えますか(震え声)』
『非公式公認チャンネルもスタンバイしてる!』
『頭おかしくなりそうなチャンネル』
『酒の貯蔵は十分か……⁉』
『こまっちゃんも可愛い!』
『百合回キター!』
相も変わらずコメントが騒々しい。ただ、今日の迷惑女のときと違って歓迎ムードなので不快感は少ない。イヤホンをしていないというのもあるかも。
スピーカーから自動読み上げ機能が機械音でコメントを読み上げているが、小町は結構良いマイクを使っているのと位置取りに気を遣っているので、それが配信に乗ることはない。
「いつも思うけどさ、リビングを配信部屋にするってイカれてるよね?」
「えー? 一番長く使う場所だし? お客さんが来る場所でもあるし、お金かけるんならここでしょ!」
「理屈は理解できるっていうのが、なんとも」
「あはは! 配信で流しちゃうしね! 汚部屋にできないから定期的に掃除するし、意外といいよ!」
「そういうメリットもあるか」
『フェレスの言うことはもっともだけど、こまっちゃんの言うこともわかる』
『騙されるなフェレス』
『フェレスの部屋とか見てみたい』
『意外とセンスの良い小町』
『女の子女の子してない辺りがフェイスレスと気が合うのかね?』
『飾ってある花って造花?』
『ソファ高いやつじゃね? レスフォーレスか?』
『革張りソファということしかわからん』
『小町が前に配信機材公開してたけど、金かけてるよな』
『意外と細かいところに金を使う女こまち』
『(知らない話だ……!)』
『(シッ! 黙ってろ……!)』
「ああ、あの花は前に私があげたやつだね。飾ってくれてるんだ?」
「飾るわな! フェレちゃんがくれたやつだし、効果すごいしね!」
ダンジョン素材の花を加工してこれまたダンジョン素材で薄くオイル漬けにしたもので、特殊なハーバリウムといえる。生花の造花というかなんというか不思議なモノ。
生花の本来持つ香りを数年は放ち続けるようになっていて、使っている花がダンジョン素材なので、それなりの効果がある。
具体的にはリラックス効果だ。常にヒーリングミュージックを聞き続けているのと同じくらいの効果がある。
私としては手慰みというか実験で作ったものなので手放しても惜しくないのだが、小町的には「もう手放せない!」といった様子。
ちなみに見た目は小柄な胡蝶蘭なので、部屋にあって雰囲気を壊すことはない。だいたいの部屋には合うだろう。大事なのはオイルなので、どんな花ででもできる。効果は素材の花次第。
ちなみにコメントでちょろっと語られていたレスフォーレスというのは、ダンジョン素材を六割以上使った家具しか販売していないブランドのことだ。普通に三桁万円で安いといえるレベル。
まあ、これは偽物なのだが。偽物というと聞こえが悪いな。レスフォーレスブランドじゃないよと言った方がいいか。
座面の皮革がダンジョン素材というだけ。それでも一般的には十分高いだろうが。
『は? 何その効果。すご』
『俺の部屋にも欲しい』
『売ってください売ってください』
『いや、ダンジョン素材関係なく、その技術だけですごいんよ』
「いいだろー! うらやましいだろリスナー! やらんからな! フェレちゃんはあたしんだ!」
「私は別に小町のものじゃない」
「ああんっ」
黒革の三人掛けソファに横並びになっている私と小町。小町が横から抱き着いてくるので、引き剥がしておく。
続いて流れるようにテーブルの上に置いてある金色の缶ビールを手に取る。片手でそのままプルタブを開けると、小気味良いカシュッという炭酸の音がした。
季節は夏なのだ。
つまりはビールだ。
これだけでもはや数え役満。誰も私を責めることなどできんだろう……!
「マズイ! フェレちゃん空気読まずに飲む気だ! みんな乾杯準備!」
『はえーよ!』
『相変わらずの好き勝手。でも好き』
『媚びない姿勢が好き』
『男より女ファン多いよなフェイスレス』
『ヅカ系っぽいからでは?』
アネゴチャンネル『4:6くらいで女性ファン多め』
『片手で開けるの飲み慣れてる動作なんよ』
『小町もレズ公言してるしな』
『レズ公言で男ファン増えたの草』
『花作って売って……』
『レモンサワーでもいいですか?』
そこは好きなお酒でいいと思う。なんなら水も可。
あと缶のプルタブを片手で開けられるのは飲み慣れているからではなく、単に器用さが高いからです。生産系ジョブの頂点なので。
というか、誰でもできるだろうこれくらい。
「まだ! まだ飲まないでフェレちゃん! 何自然と口に持っていってんの⁉ ちゅーしたげるからそこは我慢して!」
「ちゅーは要らんけど我慢する」
「どうしてそっちを……⁉」
『すかさず欲望を捻じ込む小町』
『おそろしく速い骨ん。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね』
『本音駄々漏れですよ』
『誤字定期』
アネゴチャンネル『おそろしく速い本音。オレじゃなきゃ見逃しちゃうね』
『おせーよ』
『おせーよ』
『早い方なんだよなあ』
『誤字』
『キスしてくれてもいいのに』
『フェレスにファンサを求めるのが間違い』
『アネゴはこのままでいい』
『とりあえず服は脱いだ。暑いし』
わちゃわちゃしている小町を横目に、この状況を改めて考えた。
彼女、酒呑小町もまた、昼の迷惑女と同じくライバー探索者だ。かつて迷惑系探索者だったということも共通している。もっともあの女と違って、自分の衝動を制御できないままヤバい状況になっても突っ込んで行くタイプだったのだが。
彼女自身がそこそこ能力のある探索者だったので、それを矯正しつつ面倒を見られる人物というと少なく、女性ということもあって私に白羽の矢が立ったのだった。
まあ、それからあーだこーだがあって、友人関係になった。
以来、たまにこうして一緒に飲んだり遊びに行ったりしている。小町の自宅で宅飲みするときというと、たいていは晩酌配信だ。
普段ダンジョンで配信していることもあって、ライバー探索者はたいてい、彼女のように晩酌だったりゲームだったり、他の配信も行っている。
小町は性格上、お酒をメインとした料理系配信ということになるだろうか。料理をするというわけではなく、紹介するという方向性だが。主にコンビニのお惣菜。
そして「ウィスパー」開発の端緒も酒呑小町の存在にあった。
いや、フェイスレスが
そういうことを会議で言ってみたところ、「じゃあ作ってみようか」という話になって、探索者用のギルド公式SNS「ウィスパー」が生まれた。
意図的にフォローできる上限は100アカウントまで。尚且つ、相互フォローでないとウィスプを送り合うこともできないという欠陥SNSだ。
じゃあ使わないか、というと、それもできない。ギルドのアカウントと紐づいたダンジョンチューブの配信に関しての告知はウィスパー限定とされているのだ。規約を守らなかったらアカウント凍結も有り得る。なんせギルド公式のものなのだから。
有料だとアカウント制限はなくなる。
おかげで「クソSNS」とか「守銭奴」とかギルドは言われているが、実際は別の狙いがあったりする。
というのも、不用意に探索者になろうとする若者を減らすためだ。
ダンジョンは財政というか財源のひとつだが、あくまでもアニメやマンガ、ゲームなんかのオタク産業と同じ程度でしかない。決して軽視できるほどではないが、国の根幹を為すほどのものでもないのだ。
だというのに、ダンジョンに潜る探索者は命を懸ける必要がある。
税収の関係から、衰退させることはできない。
一方で、前途ある若者を死亡率の高い場所へ不用意に送り込むこともできない。取り返しが利かないからだ。
高ランクの探索者や冒険者は高額納税者ではあるが、それでも大多数の人間が納める税収に敵うはずもない。
仮に匹敵したとしても、本当に必要なのはお金を回す人数だ。数は力なのである。
よって、一定の枷を掛ける必要がある。
その一手として、わざと使い難い、不便なSNSなどを強要したのだ。
「よーっし! 皆様、お手を拝借!」
やがて準備ができたらしく、小町が張りのある声を上げた。
私も眼鏡をクイッと持ち上げるように仮面を装着し直す。別に激しく動いても落ちたりしないのだけれど。
「フェレちゃん! どうぞ!」
「あ、私? そんじゃま、かんぱーい」
「えっ⁉ そんなアッサリ⁉ か、かんぱーい!」
『かんぱーい!』
『乾杯!』
『かんぱい』
アネゴチャンネル『乾杯!』
『かんぴゅい!』
『かんぱいいいい!』
エアコンは効いているけれど、先んじて開けてしまったせいで、ちょっとぬるくなったビールを喉に通す。
うん、それでも良いのど越し。美味しいな。
「んー! 美味しい!」
「うん。美味しい」
「フェレちゃんいっつも最初はビールだけど、何かあるの?」
「あー。お父さんが『最初は生!』っていつも言ってたからかな。刷り込みみたいなもんだよ」
「へえ~。じゃあ、美味しくはないの? あ、美味しいって言ってたか」
「最初は慣れなかったかな。今では美味しいって感じられるからいいけど」
「あたしも、ビール美味しく飲める女の子の知り合い少なくってさ! フェレちゃんがいて良かったよ~」
「はいはい抱き着かない」
「いけずぅ」
『お父さん呼びもらいました』
『かわいい』
『真似かわいい』
『パパじゃないのか』
『なんでか俺がぞくっとした』
『生』
『生』
『非公式公認チャンネルここ切り抜いて』
『生』
『刷り込ませてェ……』
『ビール美味しく感じられるの難しいよね』
アネゴチャンネル『苦くね……?』
『慣れです』
『ビールは喉で味わうもんなんだよ』
『喉に味覚ねえんだよなあ……』
『ビール飲める系女子いいな』
アネゴチャンネル『アネゴの不評を買うと怖いので当方
『年齢不詳な模様』
『てぇてぇ』
『役立たず!』
『いけずもらいました』
配信というものに慣れなくて、最初はこの晩酌配信も緊張したなあと思い返してちょっとおもしろくなる。
今では慣れて、自然体で居られるけれど。
なんなら「アネゴチャンネル」なる意味不明な切り抜きチャンネルが生まれたくらいだ。おもしろくて許可出しちゃったよね。
世間的に「アネゴ=フェイスレス」なのだが、そのフェイスレスの公式チャンネルはないのに、切り抜きはあるという。しかも、それに関してはフェイスレス本人が切り抜きして収益を得る許可を出しているという不思議。
これが非公式公認チャンネルと呼ばれる
「じゃじゃーん! 今日はフェレちゃんからおつまみの差し入れがあるのだー! まあ毎回あるけど」
「グロいけどね、見た目」
私が出したのは魔目の茹でたやつ。つまりピンポン玉くらいのガンギマリ眼球だ。見た目はそのまま。
『なぁにそれぇ?』
『えっ、えぐ……』
『マジ?』
『は⁉』
アネゴチャンネル『ダンジョン食材くんさぁ……』
『目玉やんけ』
『穿ったん? すごい数……』
「ダンジョン食材だね。名前は『魔目』。見た目えぐいし、茹でたらキマってきて見た目がえぐくなるとんでも食材。美味しくはある」
「あたしは虫も食べられちゃう系女子なんだぜー! これくらい平気平気~!」
「まあ、それを知ってないとさすがに持って来ない」
おっちゃんとこに卸した余りである。さすがにビジュアルの問題がありすぎて、あんまり買ってくれるところは少なかった。味に関してはどこも認めてくれていたからここで消費しようと思って。
最悪、持って帰って潰して豆コロッケにしようかなと思ってた。見た目どうとでもなるし。ずんだだずんだ。
「ンふんッ⁉ ぅあっはぁぁ……! 美味しい……」
「ダンジョン食材のダメージを喰らったご様子」
『いつもの光景定期』
『そして普段通りのフェイスレス』
『美味そうってことだけは伝わる』
『美味そう』
『食べたいけど食べたくない。二重の意味で』
『食べて蕩けて色っぽくなるならいいけど、アカン顔なんよなぁ……』
ダラシない顔とかしまりのない顔というのが一番的確な表現な気がする。
ダンジョン食材特有の未知のうまみ成分による副作用みたいなものだ、表情筋が緩むのは。
とりあえず、現在の小町が浮かべている表情は、少なくとも23歳の女性が浮かべてよいものではない。百年の恋も冷めそう。配信で垂れ流してるけど。ワールドワイドに。
フェイスレスタグあるから世界レベルで観られるんだけど、ほんとにいいのだろうか……?
「あとは商店街のお肉屋さんとか惣菜屋さんとかで色々買ってきたよ」
「おぉ〜、焼き鳥! 炭火だ⁉︎ 匂いでわかる!」
「そうそう。いいよね炭火」
「……いいけど、もっと良いモノ持ってるよね? いいなあ〜」
「自分でがんばれ」
『炭火の焼き鳥⁉︎』
『あ! あー! いけません!』
『絶対うまい』
『匂いからして暴力。配信だから匂わないけど、想像できるんだよなあ』
『商店街とか行くんかフェイスレス』
『いつもあの仮面じゃねーだろ』
アネゴチャンネル『アネゴの仮面の下とかわからんけど、なんとなく美人なイメージはある』
『わかる』
『クール系で頼む』
『あれでかわいい系なのもそれはそれで』
『それで頼む』
『それも頼む』
『シュレディンガーのアネゴ』
『ハツも頼む』
『からあげください』
『良いモノ? エロティックな?』
『いや普通にアイテムボックスじゃね?』
『あ〜、ね? あったかいから、焼き鳥温め直す必要ないのか』
『マジで持ってる人いるんだ』
『まあフェレなら妥当』
『順当』
『メリットのがデカい』
私はタレより塩が好きだが、タレも食う。小町はタレばっかなので、ややタレ多めで買ってきた。
若い女二人分だけど、探索者なので一般男性顔負けくらいには食べる。
そのことも知っているので、商店街のおっちゃんたちは私が飲み会をすると言うと嬉しそうにしてくれる。大量に買うからね。
スーパーやデパートだと嫌な顔まではされないけれど、ギョッとされるのが嫌で、商店街の方が好き。
まあデパ地下のサラダとかも好きだが。以前に色々食べ比べてみたいと思って100グラムずつ注文したら、基本的に一口200グラム注文を想定された箱だったらしくて、なんかものすごく貧相な見た目になったんだよね。
「あの試験、合格させる気あるのかな〜?」
「そりゃあ、迂闊には渡せないでしょあんな代物」
『それはそう』
『どっちの言い分もわかるけど、フェレスが正しい』
『物流崩壊するわな』
アネゴチャンネル『ロマンあるけどな、アイテムボックス』
みんなが注目しているのは、私が虚空から焼き鳥を取り出したからだろう。まあ私の場合はスキルなんだけど、世間一般的には大きくひっくるめて「アイテムボックス」で伝わる。ゲームやマンガの影響もあるし、わかりやすいしね。海外でも共通で使える単語だし。
誰でも気が付くくらい、アイテムボックスの重要性と社会的危険性は高い。
ゆえに、試験がある。かなり厳しめのやつが。
『アネゴはクレバーなので』
『クレバー過ぎてクールがクライシス』
『面接もあるし、その後同意書とかまで書いて、それでも貸し出しなんだっけ?』
『そう。しかも結構な金額を取られる』
「私が見付けて引き渡したのは5〜6個だったかな? 基本的にレンタル代は税金で持っていかれるから、私の手元にくるのは月々60万円くらいか。アイテムボックスを国に渡せば、一カ月15万円くらいは延々ともらえるね。30年間くらいだったかな」
「ん? 微妙にちょっと安くない? 金額合ってなくない?」
「容量とか時間遅延性能とか色々あるから。ざっくりした目安だよ。平均的な性能のアイテムボックスだと、国に引き渡せば一カ月15万円くらいもらえるって話。もちろん、借りる場合はもっと高い。月々150万円くらいかな」
『アコギやな国……』
『ボリ過ぎィ!』
『そんなぶん取っとるんか⁉︎』
『ええ……アネゴなんでそんな大人しいん? 搾取されてない? 大丈夫? 相談乗るよ?』
『マジ寄生虫やなクソギルド』
『ギルドと国は別定期』
『絶対癒着しとるやろ』
『なんか変なヤツ沸いてない?』
『いや15×12で年間180。30年で5400万円の不労所得が入ると思えば、そんな安くもなくない? ダンジョン入らんでいいし、危険もなくなるし』
『所持義務とか諸々いらんしな』
『アイテムボックスに関しては非課税になるんだっけ?』
『アイテムボックスは税込でそんだけもらえるんだったかな?』
『かぶりかぶり』
『結婚しろ』
「うん、非課税というか所得税とか諸々計算済みのお金として処理されてる。その上での実質手取りとして、さっき私が言った金額だよ。だから性能差はあるけど、トータルでいうと国は3000万から6000万くらいで買い取ってると思えばいい」
ある意味、国はアイテムボックスをローンで買っているようなものだ。ちなみに死んでも売買契約は成立しているので受給権限は相続されるし、その点に関しては相続税もかからない。
「アイテムボックスを国が管理するのって、どう思うの?」
「それは私個人として? ギルド所属臨時職員として?」
「あ~。フェレちゃん個人で」
小町は焼き鳥のももを食べながら訊ねてくる。
私の仕掛けた爆弾にはまだ食い付いていない様子。
まあそれはそれとして、私個人として、か。
ぶっちゃけてしまうと、そんなの好きにしろって感じで、喋っている間に目の前の焼き鳥が冷めていくのが嫌なくらいにはどうでもいいのだけれど。
まあ仕方ない。かなり地は出しているけど、解把月見ではなくフェイスレスとしてこの場にはいるのだ。けど小町、いくらタレだからといって、そっちのもも肉は私のものだ。おまえさっき食ったろ。人の物を取ったら泥棒。
『たしかに聞きたい』
『ギルド所属の意見ってなると、ギルドの公式見解だけだしなー』
『このチャンネル、フェイスレス出るようになってから登録者数アホみたいに増えたよな』
『小町はフェイスレスに足向けて寝れない』
『寄生虫ウザすぎ』
『またなんか湧いたな』
『わからんでもないけど、普通に仲良いのにな』
『ウゼエのはオマエらだっつーのに』
『スルー定期』
アネゴチャンネル『無視推奨』
『黙れよ。喋ってもらえねえだろ』
結構高速なコメントを聞き流しながら、からあげを食べる。
このお肉屋さんのからあげは塩味だとニンニクがガッツリ利いてて美味しい。けれども醤油味は意外とあっさりしていて、どっちも良い。個人的にごはんと合わせるなら塩、お酒となら醤油。というわけで、比較的醤油味のからあげが多めです。
「フェレちゃん、もうよさそうだよ」
「あ、ほんとに?」
「質問無視してからあげ食べ始めるからどうしようかと思ったよ~」
「や、勝手に騒いでるし。邪魔するのも無粋かなって」
『すみませんでした』
『すまぬすまぬ』
『コメ欄で勝手にエキサイトするのは違うよね』
『ごめんなさい』
『すいません』
アネゴチャンネル『申し訳ありませんでした』
「いいよ。からあげが冷める方が問題だし」
「この情熱のなさである。配信中ですよ~?」
「私の配信じゃないし、どうでもいいかな」
「あたしの配信じゃー! どうでもよくはないわ!」
私にとってはどうでもいい話である。
横から胸倉掴んでぐいぐいやったかと思えば、人の胸元に顔をやって深呼吸するのやめてくれないかな。
「あたしの知らない匂いがする!」
「香水だけど」
「女の家で宅飲みなのにわざわざ香水を……? 妙だな……?」
「いや普通に身嗜みなだけだわ」
だから鼻息荒くにじり寄るのをやめなさい。
意気消沈してたコメント欄もにわかに勢い付くんじゃない。
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