第34話



 「…あの」


 「ん?」


 「…バンパイア…って、いるわけないですよね〜…なんて」



 「バンパイア」なんているわけがない。


 そんなのは口にするまでもなかった。


 空想上の生き物で、おとぎ話の中の存在。


 言ってる自分が恥ずかしくなった。


 天ヶ瀬から聞いていたとはいえ、はっきりとは喋れなかった。


 それが普通だろ?


 100歩譲ってそういう存在がいたとして、それが東京中にいるなんて…



 「全然説明できてねーじゃねーか」


 「説明しましたって」


 「コイツの顔を見ろよ?なーんもわかってない顔だぞ、これ」


 「…はぁ」



 天ヶ瀬は深いため息をついた。


 そうかと思えば首を小さく横に振って、呆れたように俺の方を一瞥した。



 「コンビニであったことを話せばいいんだよ」


 「…え、ああ」



 コンビニであったこと。


 それって、例えばあのおっさんに出くわしたこと…とか?


 そう聞くと、彼女は軽く頷いた。



 …えっと



 コンビニに行って、おっさんに出会って、それで…



 最初から、洗いざらい話した。


 俺が思い出せる範囲で、できるだけ正確に伝えようとした。


 慎重に話さざるを得なかった。


 だって話してても、うんともすんとも言わないんだ。


 せめて頷いてくれよって思った。


 ちっとも反応がないから、ちゃんとわかってくれてんのかもわからなかった。


 頼りになるのは天ヶ瀬だけだっていうのに、天ヶ瀬は天ヶ瀬でずっと不機嫌だし…


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バンパイア・ガールズ 〜コンビニ強盗から救った店員は、絶賛片思い中のアイドルだった〜 平木明日香 @4963251

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