第31話


 「まずはコーヒーでも飲みましょう」


 「アリス姉!?」



 金髪は驚いていた。


 金髪が言う“アリス”とは、背後にいる彼女のことなんだと思う。


 日本人離れした顔つきだったから、ひょっとして外国人なのかな…?


 彼女は俺の腕をほどき、ソファに座るよう促してきた。


 砂糖は?と聞かれたので、3つと答えた。


 ガラス瓶に入った角砂糖が見えたからだ。


 壁に設置された簡易式の棚の上に、雑誌やら陶器などがおしゃれに並べられていた。


 その中に角砂糖入りのガラス瓶が見えた。


 促されるままにソファに腰掛けると、クマの絵柄のついた肌色のマグカップが、コトッと目の前に運ばれてきた。


 窓際の長机に置かれたコーヒーマシンから、豆を砕く音が聞こえる。



 …あれって、コンビニに置かれてるマシンじゃないか…?



 古びた部屋の割には、ところどころにおしゃれな要素が散りばめられていた。


 よく見ると、大きい瓶に敷き詰められたコーヒー豆が、合計で10個くらい置かれていた。


 コーヒー自体あんまり飲まないから、コーヒー豆についてはよくわかってない。


 ただそれが“飲むためのもの”であることはなんとなく知ってた。


 カフェやスタバとかで、よく見かけてたからだ。



 「ミルクは?」


 「…あ、はい」



 どっちつかずの返事をしてしまった。


 悪いけど、落ち着いて座ってなんかいられない。


 つい流れで腰掛けたけど、正直ソワソワして仕方がなかった。


 天ヶ瀬は天ヶ瀬ですごく不機嫌そうにしている。


 金髪は不満そうに向かい側のソファに座り、足を組みながらふんぞり返っていた。



 …何かやばいことが起こる気がする



 今まで一度だってこんな状況に陥ったことはないし、こんなひりついた空気を味わったことはあまりなかった。


 俺が何か悪いことをしたって言うんなら、まだ状況が整理できる。


 ようは、怒られてる理由を反省すればいいわけだ。


 話の流れというか、状況的にさ?



 

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