第29話
「この前言ったよな?勝手のことすんなって」
「…くッ」
天ヶ瀬は苦悶の表情を浮かべている。
まずいッ…
何が何だかわかんないが、このままじゃまずい
覆い被さる腕を振り解こうとした。
が、今度は俺の片腕を後ろに回し、背後から押さえつけてくる。
「優しいのね。でも、下手に近づかない方がいいわ。マキを怒らせると厄介だから」
耳元でそう囁いてくる。
振り解こうとしたけどダメだった。
びくともしなかった。
「お前はまだ“新人”だろうが。いいか?“外”じゃ「ルール」ってもんがあるんだ。一体誰が、勝手に催眠を使っていいって言った?」
「…誰も言ってません」
「じゃ、なんで使った?」
「…事情があって」
「事情?アタシらを危険に晒すほどの事情がか!?」
「そういうつもりじゃなくて…」
「じゃ、なんだ?バレなきゃいいとでも思ったのか?」
「ちゃんと報告したじゃないですか」
「報告した?どの口が言ってんだ、テメー」
なんで押さえつけられてるのかも、なんで怒られてるのかもわからなかった。
入ってきてすぐだぞ?
最初、俺が怒られてるのかと思った。
ここに連れてこられたのは俺なわけだし、視線はこっちに向いてたし…
「マキ。そのへんにしておきなさい。ユカも、マキの言ってることはわかるわね?」
背後から、2人を窘める声が聞こえる。
声のトーンは一定だった。
少しも、動揺している様子がない。
引き剥がそうとする俺の抵抗をものともせず、女性とは思えないほどの圧力が背中越しに伝わってくる。
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