第3話


 …え?



 目を疑った。


 自動で開いたドアの向こうで、何やら口論している2人がいた。


 1人は中年の男性で、ふっくらした体型の人だった。


 もう1人は店員だった。


 コンビニの制服を着てて、店名のロゴの入った青い帽子を被ってた。



 …何かあったのか?



 それにしては様子が変だった。


 男性客の口調は強く、かなり怒っていた。


 しかも店員は女性だ。


 …女性っていうか、女子?


 俺と同じくらいの年の子だった。



 …っていうか、どっかで見たことが…



 最初は気になる程度だった。


 変なクレームをつける客は世の中に山ほどいる。


 どうせすぐに収まるだろ


 そう思ってた。


 その、矢先だった。



 「金出せ、金!」



 …は?



 その「言葉」は、“ただのクレーム”とは程遠い攻撃性を持っていた。


 普通じゃ考えられないような言葉だった。


 そしてその口調も、ただ怒ってるにしては…って感じだった。



 「困ります。お客様」


 「ああ!?さっさと出せ!殺すぞ!!」



 …おいおい


 …嘘だろ…?


 これって、まさか強盗…?



 そんなバカな



 頭の中に占めていたのは、大体そんな感情だ。


 だって、普通あり得ないだろ?


 「強盗」だぞ?


 そりゃ、そういう出来事があるってことは知ってるよ



 …でも身近に、まして目の前でそんな出来事が起こるなんて思わなかった。


 血の毛がさーっと引いた。


 目の焦点でさえ、うまく合わなかった。


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