ヒーロー、仲直りする
鶴見に貰った休みが終わり、またヒーローの仕事をすることになった。怜央とはあれ以来会ってないが……会うことになるだろうな、とは思っていた。
灰田に「仲直りしたら」と言われたけど。結局のところ悪いのは宇宙人なことを隠していた怜央であって、青が譲歩してやる必要は無いのだ。
なのに、どうしてこうなったんだろう。
アッシュが逃げてしまったため、怜央と二人きりになった。久しぶりというのもあるけれど、今までどうやって会話していたのか急にわからなくなる。
俺も逃げたい、と思った時には怜央に腕を掴まれていた。うん、そうなるよな。
さっき何か色々言われたような気がしたけど良く思い出せない。お買い得だからそばに置いて、みたいな。
「青さんになら利用されてポイ捨てされても本望ですから」
「それ、お前にメリットはあるのか」
「青さんのそばにいられますね」
まっすぐ向けられる視線に込められた熱。嘘は無い、と思う。
「……お前が他の宇宙人みたいに、人を襲わないという保証は?」
「隣に置いてくれればそんな暇はありません。それに、青さんは強いので僕なんて簡単に倒せますよ」
そうだろうか?
アッシュに向けられた魔法のような力を思い浮かべる。アッシュにさえ勝てない青が、あれに勝てるだろうか。
「……まあ、何やらかすかわからないし見張っておいた方がいいのか」
呟いた言葉に怜央の目が輝く。
「見張ってくれるんですか!」
喜ぶところなのか、それは。なのに、ありもしないしっぽをちぎれるほど振っているように見えて、気がつけば怜央の頭を撫でていた。
そんなわけで、一人で戦っていたヒーローは犬を飼うことになりましたとさ。
めでたしめでたし――と、終わりたかったのだけど。
「そういえば、お前たちは何で地球に来たんだ?」
「故郷のエネルギー問題ですね。人間を襲っているのもそういった事情です」
と、いうことは怜央も結局人間を襲う必要があるのではないか?
青の目が光っている間にはさせないつもりだけど、それで大丈夫なのだろうか。
「問題無いです。僕には青さんがいるので」
にこにこしている怜央に、もっとよく聞いおくべきだったと後で悔やむことを、青はまだ知らない。
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