ヒーロー、流される



「あの男とはどういう関係ですか」


 灰田の去った後。いったいいつからどこで見ていたのか、怜央が声をかけてきた。エタニティとの戦いもなかったのに何故ここがわかったのだろう。

 深く考えると怖いので、考えるのをやめる。


 あの男とは誰のことだろう。状況的に灰田しか思い当たらないが。


「…………高校時代の友人?」


 答えながら、灰田から受け取ったキーホルダーをポケットの中でもてあそぶ。どうしたらボタンを押せって言ってたんだっけ。押したらどうなるんだろう。


「ずいぶん親しそうでしたね」

「……そうか?」


 まあたしかに青には灰田以外の友人がいない気がする。


「ブルーさんの連絡先を知っていて、その上プレゼントを贈るような人物……炎の戦士フレイムも危険だし、思った以上にライバルが多いな」


 怜央が何かブツブツと呟いていたが、よく聞こえなかった。


「……でも、負けませんから」

「はあ」

「僕とも連絡先を交換してください」


 ぐい、とまた迫られる。圧が怖い。


「やだ」


 でも連絡先を教えたくはない。それこそ一分おきにメッセージが飛んできそうだし返事をしなかったらすぐさま電話がかかってきそうだ。


「何故ですか」

「え、えっと……」


 何かうまく断れないだろうか。それか怜央の興味を他に持っていくことができれば……全然思いつかない。


「ひ、ヒーロー活動に支障が…………?」

「わかりました、とりあえず今回は諦めます」


 何故かすぐに引いた。


「ブルーさんの邪魔はしたくありませんから」


 そう続ける怜央のしょんぼりした表情がなんだか可哀想で、うっかりスマホを取り出しそうになった。危ない危ない。

 一分おきにメッセージなんて送られたらトレーニングどころじゃなくなってしまうし、あの小包みたいな長文が送られてきたら恐ろしすぎる。


 ……いや、まてよ。こうして追いかけてくるのは『邪魔』じゃないのか?



「邪魔はしないので、カッコイイブルーさんの活躍は、見に来てもいいですよね?」

「……あ、ああ」


 あれ、結局流されてしまった。

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