ヒーロー、上司に相談する

 

 佐藤怜央のことを心のどこかでドッキリか冗談か嫌がらせじゃないかと思っていたし、自分は男だからおかしなことにもならないだろうと高をくくっていた青だったが、あの手紙を受け取ってから考えが変わった。もしかしたらガチなやつかもしれない。

 つまり、もしかしたら危ないかもしれない?


 ――上に言って出禁にしてもらえば


 灰田の言葉をようやく思い出した青は、鶴見博の元を訪れていた。出禁というのは無理かもしれないが、何か怜央の追っかけをやめさせる方法が見つかるかもしれない。もしまたエタニティを倒しに行って怜央が居たら、かなり怖い。

 鶴見は青と同じマンションに住んでいて、階は違うが何度か訪ねたことがある。隣にやたらイケメンの男子高校生が住んでいるのも知っている。最近はその友人らしき青年にもエントランスでよく出くわす。


 今日も遊びに来ているようだが仲がいいな。最近の高校生は何して遊ぶんだろう。


 ……などと思いはしたが、肝心の相談事を忘れてはいけない。


「──ということで、追っかけに困ってるんです」

「いいんじゃない? やっとファンが出来たんでしょ」

「いや、あんな怖いファン嫌です。ヒーロー続けていく自信が無くなります」


 ヒーローとしてどうかと思うが、怖いものは怖い。


「最近フレイムはブラックナイト絡みじゃないと働かないし、ブルーが辞めちゃうと氷川に嫌がらせする手段がなくなっちゃうなあ……」


 鶴見が正義側とは思えない言葉を呟いていたが都合よく青には聞こえていなかった。


「じゃあいいものをわけてあげよう」


 そう言って鶴見が渡してきたのは怪しげな薬が三種類。色もカラフルでかなり怪しい。


「こ、これは」

「僕の発明品」


 答えになっていないし、怪しさがぐんとレベルアップした。



「説明書も入ってるから、まあ適当に使ってみてよ」

「……はあ」


 鶴見に相談して良かったのだろうか。

 怪しげな薬と共に、役に立つのかわからない作戦もいくつか貰う。


「ズバリ『追われる前に乗り込め』作戦」

「……うーん?」



 やっぱり相談相手を間違えたような……?

 だがフレイムに相談したところで相手にしてもくれなかっただろうし、鶴見で良かったのか。本当に効果があるのかわからない怪しげな薬の説明書と、鶴見による謎の作戦が記された紙に目を通す。

 不安しかないが、試してみるしかないのか。



 灰田が見たら全力で止めたであろう作戦を、青は試すことにしたのだった。

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