ヒーロー、同担に出会う


「……カッコイイ」


 青はフレイムのブロマイドを手に、深いため息を吐いた。ヒーローを目指していた頃は買っていたが、こうして自分がヒーローになってからは何となく遠ざけていたものでもある。

 そんな青が久しぶりにブロマイドを買おうと思ったのは、ついこの間生フレイムを拝み、同じヒーローとしてはとても情けないことに、守ってもらったからに他ならない。

 やっと自分自身も憧れのヒーローになることができたというのに、敵を倒すこともできず、更には守ってもらうなんて……情けなすぎる。そう嘆く一方で、フレイムの戦いがあまりにもカッコ良かったのも事実である。


「……やっぱりフレイムは俺の目標だ…………これはイメトレに必要なアイテムなのだから仕方がない」


 そう自分に言い聞かせながら、自分の持っていない種類を探す。ううむ、これは持っていた気がするが、枕の下に敷く用として買ってもいいかもしれない。こっちのポスターは壁に貼って眺めながらトレーニングしよう。


「――あ、あの……あなたもフレイムファンですか?」

「はい?」


 夢中でカゴに色々入れていると後ろから声をかけられ、振り返ると見知らぬ男子高校生がいた。見覚えのある制服を着ていたが、もしかしたら青の母校のものかもしれない。


「……あ、すみません。俺は黒川甲斐って言います。俺、フレイムの大ファンで! それで周りに仲間があんまりいなかったからつい……」

「そうなんだ……。俺は室田青。俺も、フレイム好きなんだ。カッコイイよね」

「そうですよね!」


 甲斐が嬉しそうに頷く。

 こんなふうに思ってもらえて、フレイムが羨ましい。悲しいことにブルーのブロマイドは店のどこにも置いて無かったから。


「今度隣駅のショップに行きませんか? 新作入荷するらしいですよ」

「いいね。あそこの駅にあるフレイムカフェなんだけど入ったことがなくて……」

「あー、俺もです! 一人だと入りづらくて。一緒に行きませんか?」


 ブルーにもいつか、一途に思ってくれるようなファンが現れるだろうか。

 甲斐と連絡先を交換しながらそんなことを考えた。




 青は佐藤怜央のことをすっかり忘れているのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る