第13話

僕たちは4階に着くといつものごとくボス部屋を探す。4階は相も変わらず雑魚を配置しまくったのでしょっちゅうナーシンが剣を抜くが、もはや斬るのは作業と化しているので色々と話をすることが出来た。

 ナーシンの国の観光名所とか、どんな料理が美味しいとか、毎日騎士見習いとしてどんな訓練をしていて休暇は何をしているなどなど。


 「へー、そうなんだ。ナーシンは頑張り屋だね」


 「いや、そんなことは無い。まだまだ切磋琢磨し、武を極めたいところだ」


 なんだか初めの頃よりナーシンとより仲良くなれてる気がする。これは好感度アップイベ発生中ですな!


 僕は終始ご機嫌で4階を探索していると、突如として天井から水がポタポタとこぼれ落ちてくることに気づく。それはどんどん酷くなりいつの間にか僕たちの目の前には大きな水溜まりが出来上がる。


 「こんな立派な塔でも雨漏りするんだな」


 「そうみたいだね」


 結構老朽化してきてるからなぁ。こんなに水が降ってくるってことは大規模な修繕工事しなくちゃならんなぁ。


 そんなことを思っているとナーシンがなにかに気づき、水溜まりを足で踏む。


 「この水、かなり粘度があるな。イミリア、通る時は気をつけるよ………」


 その言葉を言い終わらずしてナーシンの体は水たまりに覆われる。


「!?」


 「ナーシン!!」


 その水溜りはタコのような腕を生やし始め、ナーシンの手足をガッチリとからめとる。


 「なんだコイツは……!」


 「大丈夫かい!?今助け…」


〈イミル様……〉


 な、なんだこいつ!直接脳内に……!テレパシーが使えるのか!?しかもバレてる!!


 〈イミル様、私です……数十年前に道端で私を拾われたではありませんか……〉


 そう言われてみればなんかこのグロテスクなショッキングピンクの触手見覚えが…………あ!


 「お前は……お前はあの時道端で瀕死になっていた無形触手!!」


 あれは僕がまだこの塔に来たばかりの時、とりあえず近くに何があるのか知るために試練の塔周りを散策していた時のことだった。近くでピンクの小さな水溜まりを発見したのだ。何かと思い近づくとそいつは細い触腕を生やしていた。多分必死に餌を探して伸ばしていたんだろうがもう衰弱しきっていて僕が近づいても逃げる様子を見せなかった。僕は別に弱者に興味はなかったがその時は何気なくそいつを持ち帰り、餌を与えてみたのだ。みるみる元気になったそいつをたしか僕は……


 〈そう、貴方は私に食べ物を与えるだけでなく仕事もくださったのです。ここで私はスクスクと育ち、ここまで大きくなることが出来ました。そして私は役目を果たしておりました〉


 役目?なんか僕言ったっけ?


 〈あのお言葉を忘れはしません!私はあの使命を忘れずに、忠実に行っていました。そしてこれからも!〉


 え、もしかしてあの言葉って……まさか!

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