仲間の集い

 恐竜たちが海辺に集まっていた。というのも、海には最強と名高い恐竜時代の生物が住んでいたからである。康実と信光は恐竜たちの群れを見つけて、近寄っていった。一匹の巨大恐竜がやってきた。

「僕はスピノサウルスの砂島勝長だよ。猛川くんを呼んでくる」

「猛川?誰だそいつは?」

 勝長は海の中へ入ってしまった。次の瞬間、海トカゲが現れた。

「俺が、京の都で噂になっていた猛川淀成だ。汝らと違って、俺は正確には恐竜ではない。しかし、元から大阪の海に住んでいたゆえ、わからないことがあったら聞くがよい」

「承知した。ところで、なぜお前は京の都で噂になっていたんだ?」

「猛川淀成は魔術が使える。それは淀成の最大の武器といえようぞ」

「そんな奴がいるんだったら安心だ。淀成、もし何かあったら頼むぞ」

「任せておけ」

 猛川淀成は海の中へ戻ってしまった。鎧竜と立派な鶏冠がある竜がやってきた。

「私はアンキロサウルスの鎧岡勝敏だ。見た目通り、防御力には自信がある」

「わたくしはパラサウロロフスの長橋信近です。以後、お見知りおきを!皆様お聞きください、新しいお仲間がいらっしゃいました!」

「俺は、ティラノサウルスの恐野康実だ!よろしく!」

「僕はトリケラトプスの三条信光だよ。三本の角が目印なんだ!」

 恐竜たちは歓声を上げた。しかし、それを見た人間たちもやってきた。

「恐竜たちが来たのか?わしは、今人間の世界で実権を握っている、徳川家康だ」

 ひとりの人間が家康を睨みつけた。

「何を言っている!太閤殿下に対する忠義は、私が一番だ!私は石田三成、五奉行のうちの一人だ」

 美形な人間が言った。

「私は宇喜多秀家です。徳川殿と同じく、五大老の一人です」

 大城正家の後ろに隠れていた南原秀俊だが、秀家の姿を見て飛び出した。

「宇喜多さん!俺は南原秀俊だ、よろしくな!」

 秀俊は姿勢を低くし、前足を秀家の前に差し出した。秀家はその前足にそっと触れた。

「しっかりとした前足だな。お前の体は冷たいが、なぜかぬくもりを感じる。私のそばにいてくれよ」

「ちょっと今ので興奮したかも」

 秀俊はさらに姿勢を低くした。

「俺の背中に乗ってくれ」

「いいのか?」

「もちろんだ!」

 宇喜多秀家は秀俊の背中に乗った。

「見晴らしがいいな。馬に乗っていたらこんな景色は見られない」

 秀家は秀俊の背中をそっとさすった。その有様を、正家が向こうから見ていた。

「わしのような年寄りよりも、宇喜多殿のような若者と恋をする方が、あやつにとってはいいのかもしれない」

 そこに輿が運ばれてきた。その上には白い布で顔を覆い隠した人間が乗っていた。人間は正家を見上げた。

「俺は、大谷吉継だ。刑部って呼んでくれ」

「わしは、アルゼンチノサウルスの大城正家だ。長い寿命とこの巨体が取り柄でな」

 刑部は正家の大木のような足に触れてみた。

「わしは巨大だが、頭は意外と悪くてな。それが悩みでもある」

「もし戦になったならば、その巨体で俺を支えてくれ。頭脳は俺が補佐するから」

「戦になることを前提にするじゃと!」

「誰とは言わないが、ここには戦をしそうなやつがようけおる。それを食い止めるためにも、恐竜たちがここにいる」

「戦となれば、あの恐野康実とかいう暴君が暴れ回るに違いない。あやつと戦はしたくない」

「そのためにも、五大老と五奉行という人間たちの集団が努めてまいる」

「頼んだぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

共倒れのバラ 齋藤景広 @kghr

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ