第24話 失踪事件の真相に迫る
NDSラボの調査が進展する中、奈緒美はラボの一室で資料を広げ、考え込んでいた。失踪事件に関する新たな証拠が次々と明らかになり、その裏に隠された真実が徐々に浮かび上がってきていた。しかし、全体像を捉えるにはまだ繋がっていないピースがいくつか残されていた。
玲奈はその部屋に入ると、奈緒美の隣に座った。彼女の表情には決意が見え隠れしていたが、内心の動揺は隠せないでいた。「奈緒美さん、この事件が本当に私の過去と関係しているんでしょうか?」玲奈は不安げに問いかけた。
奈緒美は深く頷き、「そうね、玲奈。この事件にはあなたの過去に繋がる重大なヒントがあるわ。あなたが紗絵子さんとどのように過ごしてきたか、その一部がこの事件によって明らかになる可能性が高い。」
高橋剛が部屋に入り、彼が持ってきたラップトップを奈緒美の前に置いた。「暗号の解読が進みました。この手紙は一見、無害な個人的な内容に見えましたが、実は隠しメッセージが埋め込まれていました。」
奈緒美はその画面を覗き込み、画面上に表示された文字列に目を凝らした。「…なるほど、紗絵子さんはこの手紙を通じて、玲奈を守るための計画を密かに進めていたのかもしれない。」
「計画?」玲奈は困惑した表情で奈緒美を見た。「お母さんは私を守るために一体何をしていたんですか?」
奈緒美は一息つき、慎重に言葉を選んだ。「紗絵子さんは、失踪事件の背後に何か大きな陰謀があることに気づいていたのかもしれないわ。その陰謀に巻き込まれる前に、あなたを守ろうとした。だからこそ、秘密の場所や隠しメッセージを使ってあなたを安全に導こうとしていた可能性が高いの。」
高橋剛がさらに続けた。「この手紙には特定の座標が記されていました。私たちが調べたところ、その座標は玲奈さんが幼少期を過ごした街の近くにある廃工場を指していることが分かりました。」
玲奈は目を見開き、「廃工場…そういえば、お母さんとよくそこを通り過ぎる時に、いつも何かを隠しているような気がしていました。でも、何も聞けなかったんです。お母さんが何かを隠そうとしているのを感じたけれど、怖くて聞けなくて…」
奈緒美は玲奈の手をそっと握り、励ますように微笑んだ。「大丈夫よ、玲奈。今なら私たちが一緒にその真実を確かめることができるわ。その廃工場に行って、紗絵子さんが残した手掛かりを確認しましょう。」
玲奈はしばらく考え込んでいたが、やがて決意を固めたように頷いた。「行きます、奈緒美さん。お母さんが私を守るために残したものを見つけたい。」
その夜、奈緒美、高橋剛、そして玲奈の三人は、指定された座標へと向かうことに決めた。廃工場は、かつて活気に満ちていた場所だが、今では荒れ果て、誰も寄り付かない場所となっていた。夜の闇が工場を包み込み、月明かりがわずかにその輪郭を照らし出していた。
工場の内部は薄暗く、古びた機械が錆びついて静まり返っていた。奈緒美は懐中電灯で辺りを照らしながら、慎重に歩を進めた。「ここに紗絵子さんが何かを隠していたはずよ。探してみましょう。」
玲奈は緊張しながらも、一歩一歩工場の奥へと進んでいった。過去の記憶が断片的に蘇り、かつてここで紗絵子と過ごした時間が鮮やかによみがえった。「ここ…お母さんと一緒に来たことがあるかもしれない。」
高橋剛が壁に埋め込まれた古びたロッカーを発見し、中を確認すると、埃まみれの箱が出てきた。「これが手がかりかもしれません。開けてみますか?」
奈緒美が頷くと、高橋剛は慎重に箱の蓋を開けた。中には、古い日記といくつかの写真が入っていた。日記には紗絵子が玲奈を守るために取った行動や、失踪事件に関する詳細が記されていた。
奈緒美が日記を読み進めると、紗絵子が失踪事件の背後にある人物に気づき、彼女と玲奈が命の危険に晒されていたことが明らかになった。その人物が紗絵子を追い詰め、最終的に彼女が玲奈を連れて逃げる決断をしたことが記されていた。
玲奈はその内容を聞いて、自分の中で長い間封印されていた記憶が一気に解放されるのを感じた。「お母さんが…私を守るためにこんなことまでしていたなんて…」
奈緒美は玲奈を見つめ、静かに言った。「紗絵子さんはあなたのために全てを捧げたのよ。彼女の愛は、本当に深いものだった。そして、その愛があなたをここまで守り続けてきた。」
玲奈は涙をこぼしながらも、紗絵子への感謝の気持ちと共に、自分の中に強い決意が芽生えるのを感じた。「お母さんが守ってくれたものを、私は無駄にはしません。これから、真実をもっと知って、私自身の力で前に進んでいきたい。」
奈緒美は深く頷き、「私たちはこれからも一緒にいるわ。玲奈、あなたは一人じゃない。これからも私たちがあなたを支えるから、安心して真実を追い求めていきましょう。」
その言葉に玲奈は力強く頷き、二人は工場の中で紗絵子が残した手がかりをさらに調べ続けた。失踪事件の背後にある陰謀が徐々に明らかになり、物語は次第にその核心へと近づいていく。
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