第22話 新たな未来へ
前田奈緒美は、玲奈が紗絵子の告白を受け入れる姿を見つめながら、静かに彼女を支えていた。紗絵子の「大きな秘密」は明らかになり、その重荷を玲奈が一人で背負うにはあまりにも大きなものだった。しかし、玲奈がその真実を知ったことで、新たな道が開かれたことは確かだった。
玲奈は、奈緒美と共にNDSラボの外へと出ると、冷たい冬の風が頬に当たり、彼女の涙を乾かしていった。彼女の目は赤く腫れていたが、その奥には一筋の希望が見え隠れしていた。奈緒美は、玲奈の肩にそっと手を置き、優しく微笑んだ。
「これからどうする?」奈緒美は静かに尋ねた。玲奈の目に宿った決意を見逃さなかったからだ。
玲奈は深呼吸をしてから答えた。「本当の家族に会ってみたいです。お母さんが言っていたことを確かめたい。それに…お母さんが私を守ってくれた理由も知りたい。」
奈緒美は小さく頷き、「あなたが望むなら、私も一緒に行くわ」と言った。「でも、焦らないで。心の準備ができた時でいいのよ。」
玲奈は感謝の気持ちを込めて奈緒美を見つめ、「ありがとう、奈緒美さん。今すぐじゃなくていいけど、いつか…必ず。」
その後、二人はしばらくの間、無言で歩き続けた。玲奈の心の中で、これからどのようにすべきかを考えていた。母親が自分に残した贈り物は、ただの遺産ではなく、真実を知る勇気と、それを受け入れる力だった。玲奈はそれを胸に刻み込み、新しい未来に向かって一歩を踏み出す決意を固めた。
数日後、奈緒美は再び玲奈を訪ねることを決めた。玲奈が本当の家族に会う準備ができたかどうかを確かめるためだ。玲奈の住むアパートの扉をノックすると、すぐに玲奈が顔を出した。彼女の表情には、少しずつ前向きになろうとする強さが現れていた。
「奈緒美さん、いらっしゃい。どうぞ入って。」玲奈は奈緒美を迎え入れ、二人はリビングに腰を下ろした。
奈緒美は玲奈の変化を感じ取りながら、彼女に問いかけた。「玲奈、最近どうしている?少しは気持ちの整理がついたかしら?」
玲奈は少し考えてから、「はい。まだ完全に整理はついていないけど、少しずつお母さんのことを考える時間を持てるようになりました。お母さんがどうして私を育ててくれたのか、そしてその気持ちを受け入れることができるようになった気がします。」
奈緒美は玲奈の成長に心から感動し、彼女の手をそっと握った。「それは素晴らしいことよ、玲奈。お母さんもきっと喜んでいると思うわ。」
玲奈は小さく微笑み、「ありがとう、奈緒美さん。でも、まだ一つだけ解決しなければならないことがあるんです。」そう言って、玲奈は少し目を伏せた。
「それは…本当の家族に会うこと?」奈緒美は、玲奈が何を考えているのかを理解しようと努めた。
玲奈は静かに頷いた。「はい。でも、どうしていいのかわからなくて…。もし彼らが私を拒絶したらと思うと、怖くて。」
奈緒美はその不安を理解し、玲奈に優しく語りかけた。「玲奈、彼らにとってもあなたとの再会は大きな出来事よ。だけど、何より大切なのは、あなたがどう感じるか。彼らに会ってみたいという気持ちがあるなら、その気持ちを大切にしていいと思う。きっと、彼らもあなたを受け入れたいと願っているはずよ。」
玲奈はその言葉を聞いて、少しだけ勇気を得たようだった。「…わかりました。もう少し時間をください。その間に、自分の気持ちを整理してみます。」
奈緒美は深く頷き、「もちろんよ。急ぐ必要はないわ。あなたが準備ができた時に、私も一緒に行くから。」と言った。
玲奈は感謝の気持ちを込めて微笑み、「ありがとうございます、奈緒美さん。お母さんが亡くなってから、本当にいろいろと助けてもらって…。」
「それが私の役目だからね。でも、玲奈、あなたが自分で前に進もうとしていることが一番素晴らしいのよ。お母さんの愛を胸に、あなたはこれからも強く生きていける。私はその手助けをするだけだから。」
玲奈は涙をこらえながら、「はい、そうします」と決意を新たにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます