第12話 迫るタイムリミットと共闘

NDSラボのメンバーが現場に向けて出発したのとほぼ同時刻、警視庁のMIU404(警視庁機動捜査隊)のメンバー、伊吹藍と志摩一未は、緊急の出動命令を受けていた。伊吹はすでにエンジンをかけ、車の運転席に身を沈めていたが、その目は燃えるような決意で光っていた。


「志摩さん、急ごうぜ!時間がない!」伊吹がアクセルを踏み込むと、車は一気にスピードを上げた。彼の言葉には、普段の軽妙さではなく、緊迫感が滲んでいた。


「わかってる。だが、焦りすぎるなよ。ここで何かあれば、それこそ最悪だ。」助手席に座る志摩は、冷静さを保ちながらも、その声には鋭い警戒心が感じられた。


「わかってる。でもさ、これだけの規模の事件…俺たちが止めなきゃ、また犠牲者が出ちまうんだ。」伊吹の手はステアリングをしっかりと握りしめていた。


「そのためにも、まずは状況をしっかり把握するんだ。焦りはミスを呼ぶ。」志摩は伊吹に落ち着くように促しながら、スマートフォンで最新の情報を確認していた。


「どうやら、NDSラボの前田奈緒美たちも同じ場所に向かってるようだ。彼女たちが掴んだ情報は間違いないはずだ。」志摩は画面を見つめながら続けた。「俺たちは、現場で彼女たちと合流する。そして、できるだけ迅速に、かつ慎重に動くんだ。」


「了解!でも、あの奈緒美さんたちか…前に一度会ったことがあるけど、やっぱり鋭い人だな。あの人たちとなら、うまくいく気がするぜ!」伊吹は顔を緩ませたが、すぐにまた表情を引き締めた。


「俺たちも気を引き締めていくぞ。」志摩は軽く相槌を打ちながら、車のスピードを上げる伊吹に目を配っていた。


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同じ頃、NDSラボの車両もまた、山間部にある廃棄施設へと向かっていた。奈緒美は後部座席で地図を確認しながら、これからの行動をシミュレーションしていた。時間は迫っており、ミスが許されない状況だった。


「高橋、警察との連携は取れてる?」奈緒美は前方座席の高橋に尋ねた。


「はい、MIU404のメンバーが現場で合流する予定です。彼らが到着次第、すぐに共同で行動に移ることになります。」高橋は振り返って答えた。


「伊吹と志摩…彼らなら信頼できる。」奈緒美は思い出すように言った。「以前、別の事件で一緒に動いたことがあるけど、彼らの仕事ぶりは間違いない。」


「心強いですね。私たちも全力でサポートします。」高橋はその言葉に深く頷いた。


車内には、緊迫した静けさが漂っていた。奈緒美は、頭の中でこれまで集めたすべての情報を整理し、最悪の事態を想定しながらも、最善の結果を目指していた。


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現場に到着した伊吹と志摩は、すぐに周囲の状況を確認した。廃棄された施設は見た目以上に広大であり、隠れる場所も多かった。彼らは慎重に足を進め、NDSラボの車両が到着するのを待った。


「ここだ。間違いない。」伊吹は周囲を見渡しながら言った。


「気を抜くな。相手は手強いぞ。」志摩はすぐに対応できるよう、耳を澄ませた。


その時、遠くから車のエンジン音が聞こえてきた。NDSラボの車両が到着し、奈緒美、高橋、そして他のメンバーが車から降り立った。伊吹と志摩はすぐに彼らに歩み寄った。


「前田さん、久しぶりです。」伊吹が軽く挨拶をすると、奈緒美は微笑んで答えた。


「伊吹さん、志摩さん。こういう状況で会いたくはなかったけど、心強いわ。」奈緒美は短く言い、すぐに本題に入った。「状況は刻一刻と変わっています。私たちが掴んだ情報によると、この施設で何らかの実験が行われる予定です。それを阻止しなければなりません。」


「了解です。私たちも全力でサポートします。」志摩は冷静な表情で応じた。


「施設の内部は広く、複雑な構造になっているはずです。手分けして捜索しましょう。私たちは主にデータの回収と証拠の保全に当たりますが、皆さんには周囲の警戒をお願いしたい。」奈緒美は簡潔に指示を出し、全員がそれぞれの役割を確認し合った。


「任せてください。」伊吹は力強く答え、周囲の状況を再度確認した。「俺たちは、何としてでも実験を止めます!」


全員が一丸となり、廃棄施設への突入が開始された。彼らの緊張はピークに達し、誰もが集中力を最大限に引き出していた。施設内部に入ると、冷たく薄暗い空気が彼らを包み込み、そこに漂う不気味な静寂が、これから起こるであろう戦いの予感を高めた。


「手分けして動くぞ。」志摩が静かに指示を出し、全員がそれぞれの位置についた。


奈緒美は施設の奥へと進み、目的のデータが保存されているであろう部屋を目指した。一方、伊吹と志摩は警戒を怠らずに周囲を監視し、何か異常があれば即座に対応できるよう準備を整えていた。


「静かすぎるな…」伊吹がつぶやいた。


「油断するな。何かが起こる前触れかもしれない。」志摩は冷静に返した。


その瞬間、廃棄施設の奥から微かに音が聞こえた。全員がその方向に目を向け、緊張が一気に高まった。彼らの前に立ちはだかるのは、企業の陰謀を実行しようとする者たちか、それとも別の何かか。


「行くぞ。」奈緒美が静かに合図を送り、全員が慎重にその音の発生源に向かって歩みを進めた。

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