第7話 真相の解明と新たな決意
夕暮れが迫る中、UDIラボの解剖室には緊張感が漂っていた。三澄ミコトは解剖台に横たわる被害者の遺体に向き合いながら、集中力を高めていた。目の前には、精密に取り出された臓器が並べられており、その一つ一つが彼女に何かを語りかけているようだった。
「被害者の体内から見つかったナノマテリアル…それが何を意味するのか。」ミコトは自分に問いかけるように呟いた。通常の解剖では見過ごされがちなこの微細な物質が、今回の事件の核心を握っている可能性が高い。彼女はそのことを強く感じ取っていた。
「何か気づいたことは?」中堂系が解剖室に入ってきて、ミコトに声をかけた。彼の鋭い目は、既に何かを見抜いているかのようだった。
「はい。被害者の肝臓に見つかった微細な異物、それは新型のナノマテリアルである可能性が高いと考えています。」ミコトは、中堂に向き直り、詳細な検査結果を見せた。「この物質は極めて小さく、通常の医療機器では検出できないレベルです。それがどのようにして体内に入り、どんな影響を及ぼすのかはまだ不明ですが…」
「だが、それが死因に関係している可能性は高い。」中堂がミコトの言葉を引き継ぐように言った。「企業が極秘に開発したナノマテリアルということは、人体実験が行われていた可能性も考えられる。」
「その可能性は否定できません。」ミコトは厳しい表情で頷いた。「被害者が何らかの形でその実験に巻き込まれたとすれば、その結果が死に繋がった可能性があります。」
中堂は解剖台に目を移し、深い思考に沈んだ。「このナノマテリアルがどのようにして体内に入ったのかを解明する必要がある。食事、飲料、あるいは空気を通じて吸引されたのかもしれないが、どれも可能性がある。」
ミコトは中堂の言葉を聞きながら、自分が持っている全ての知識と経験を総動員して、この謎に立ち向かう決意を新たにしていた。「私たちが解明しなければならないのは、このナノマテリアルの真の目的と、それがどのようにして被害者を死に至らしめたのかです。」
その時、ミコトの携帯が鳴り、画面に「前田奈緒美」の名前が表示された。彼女はすぐに応答し、奈緒美の声が解剖室に響いた。
「ミコト、重要な情報が手に入ったわ。企業がこのナノマテリアルを使って人体実験を行っていたことが確定的になった。内部文書も手に入れたから、全貌を明らかにする手がかりが揃いつつあるわ。」
「そう…それなら、私たちの調査結果と合わせて、彼らの隠蔽を暴くことができるかもしれない。」ミコトは冷静さを保ちながらも、内心の焦燥感を抑えることができなかった。
「企業はこれまでに、多くのデータを消去し、証拠を隠滅しようとしている。でも、私たちが掴んだ証拠を組み合わせれば、彼らが何をしていたのかがはっきりするはず。」奈緒美の声には強い決意が込められていた。
「了解しました。こちらの分析が完了次第、すぐに報告します。」ミコトはそう言って電話を切り、再び中堂に目を向けた。「奈緒美が言ったように、企業がナノマテリアルを使って人体実験を行っていたのは間違いないわ。」
中堂は、冷静な表情のまま小さく頷いた。「その事実を証明するためには、もっと確固たる証拠が必要だ。解剖だけでなく、体内に残された微細な痕跡や、このナノマテリアルの影響を検証する必要がある。」
「私たちの手で、真実を明らかにしましょう。」ミコトはその言葉を胸に刻みながら、再び解剖台に向き直った。「この被害者の無念を晴らすために、私たちができることをすべて尽くすわ。」
中堂もまた、その言葉に黙って頷き、手元の資料を見直した。二人のプロフェッショナルが、全力でこの事件の解明に取り組む覚悟を決めた瞬間だった。
その時、UDIラボの外から警報が鳴り響き、慌ただしい足音が廊下に響き渡った。ミコトと中堂は顔を見合わせ、何かが起こったことを直感した。
「外で何かあったようだ…確認してくる。」中堂はそう言って部屋を出て行った。
ミコトは一瞬考え込んだ後、解剖台に戻り、被害者の体を再度確認した。全てのピースが揃ったわけではないが、真実に近づいている感覚があった。
「もう少しよ…」ミコトは呟きながら、分析作業を続けた。彼女は絶対にこの事件を解決し、被害者の無念を晴らすことを誓っていた。そして、そのためにどれだけの時間と労力を費やすことになろうとも、決して諦めることはないと決意を新たにしていた。
外の騒音が少しずつ遠ざかる中、ミコトは再び静寂の中で集中力を高め、真相解明に向けた最後の一押しに取り掛かった。
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