貞操逆転世界で普通に生きようとしたら、美少女たちが病んでしまった

水間ノボル@『序盤でボコられるクズ悪役貴

第1話 貞操逆転世界だと気づいた

「俊樹、女には気をつけなさい。女の本性は狼なの。油断していたら男の子は、襲われちゃうんだからね」


 子どもの頃、母さんによく言われた。

 女は狼だから気をつけなさい——と。

 今まで何の疑問も待っていなかったが、中学3年の春、俺は気づいてしまった。


 ……この世界は、貞操逆転世界だと。


 学校でも街でも女性ばっかりだ。

 男を見つけようとしてもなかなか見つからない。

 小学校で習ったが、この世界の男女比は1:10。

 女性十人に対して、男性は一人しかいない。


 ……前世の俺は、ブラック企業の社畜だった。 

 記憶を辿ると、自分がトラックに轢かれて死んだところまで覚えている。

 この世界は前世に限りなく近いが、男女比だけが狂っている。


『ニュースです。東京都渋谷区で、20歳の女が40代の男性に暴行したとして逮捕されました……』


 連日、若い女性が男を襲ったニュースがTVに流れる。

 若い女性がオッサンを襲うことも、この世界では普通だ。

 それだけ女性は男に飢えているらしい……


 (前世では信じられないが……)


「俊くん。そろそろ遥ちゃんが来るから、早く準備しなさい」


 今日、高校の入学式だ。

 この世界では女子から男子を保護するため、学校は基本的に男女別学だ。

 しかし最近、試験的に男女共学の高校ができた。

 特別に衝動を抑えられる女子だけがいる高校で、男子も安心して通えるらしい。


「俊くん、本当に気をつけてね。高校には女の子がいるんだから……」


 母さんには大反対されたが、俺はなんとか頼み込んで共学に入学できた。

 前世では普通に共学に通っていたし、俺は普通に女子と仲良くなりたい。

 この世界の男子はかなり草食系で女子を怖がっている。だけど俺は……まあ普通にモテたい。


 (前世では全然モテなかったけどな……!)


「俊樹ー! おはよう!」


 幼馴染の桜井遥が俺を迎えに来てくれた。

 セミロングの黒髪がきれいで、どちらかと言えば清楚な感じの女の子。

 中学の時は剣道部の主将で、可憐な見た目とは違って割とフィジカルが強い。


 ……実は共学に入れたのは遥のおかげで、遥が俺の付き添いになってくれたからだ。

 この世界で男子が外に出るには、女子の付き添いが必要になる。

 遥が一緒に高校に通ってくれることになって、俺は共学に通えるわけだ。


「おはよう。遥ちゃん。俊樹をお願いね」

 

 母さんが遥に頭を下げる。


「はい! 俊樹が女子に襲われないように守ります!」

「遥ちゃんは頼もしいわ」


 遥と母さんが笑い合う。


「ありがとう。遥。でも俺は、女子の友達も作れたらいいなって——」


 俺がそう言いかけると、


「ダメだよ! 女子は下心があるんだよ! 女子と友達になるなんて、絶対にダメ……っ!」

「そうよ。俊くん。遥ちゃんの言う通りよ。俊くんは遥ちゃん以外の女の子と遊んじゃダメだからね!」


 (マジかよ……!)


 遥と母さんに全力で否定された。

 しかし二人の反応は、自然なのかもしれない。

 この世界の普通の男子は、女子を怖がってほとんど仲良くならないらしい。

 女子が近づいても避ける男子が多い。

 でも俺はせっかく共学の高校に入ったんだ。少しは青春したいわけで。


「遥ちゃん。この子は女子に対して警戒が足りないみたいだから、ちゃんとよろしくね」

「はい。しっかり女子から俊樹を守ります!」


 俺は普通に青春したいだけなのだが、この世界ではそうもいかないらしい。

 女子と普通に友達になりたい。

 そして、できれば彼女もほしい。

 陰キャでフツメンの俺だけど、青春したい。

 今まで男子校に通っていたから、余計にそう思ってしまう。


 ——しかし、俺の「普通の男子」としての行動が、学園の女子たちをおかしくさせてしまう。

 この時の俺は、まだそのことに気づいていない。



————————————————

フォローいただけると『毎日更新』のモチベになります!


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貞操逆転世界で普通に生きようとしたら、美少女たちが病んでしまった 水間ノボル@『序盤でボコられるクズ悪役貴 @saikyojoker

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ