第2話 俺は知っていた

「……はぁ……はぁ……」

学校を出て、家まで走って帰ってきた俺。玄関にへたり込み、息を整える。

「どうしたの?そんなに慌てて……」

リビングから母さんが出てきた。「いや、なんでもないよ」

「そう?ならいいけど……」

母さんはリビングに戻り、俺は自分の部屋へ。そしてベッドに倒れこむ。

「……長谷部……穂高……」

間違いない、あの声、あの顔……。間違いない。1年生のころ通っていた塾の模試の順位表に載っていた。「長谷部穂高」、それに1年の頃も図書委員であったことあるし、部活で体育館をバド部と共有で使うとき、見かけることもある。間違いない、「長谷部穂高」だ。

「……まさか同じ学校だったとは……」

そういえば俺は、なんで名前を覚えていなかったのだろう。なんで記憶があやふやだったのだろう。まぁ、そんなことはどうでもいいか。

俺は起き上がり、リビングへ向かう。

「どうしたの?」

「ちょっと走ってきて疲れたからなんか飲もうかと思ってね」

「そう……あんまり無茶はしたらダメよ?」

「分かってるって」

冷蔵庫を開け、麦茶を取り出す。コップについで一気に飲み干す。

「ふぅ……。俺、学校行ってくる」

「え?まだお昼ごはんも食べてないでしょ?」

「いいから、行ってくる」

そう言い放ち、俺は玄関を飛び出して走る。学校に向かって。

長谷部穂高があの塾の模試で6位だったことは覚えている。しかし、俺は23位だったことも覚えている。しかし、6位と23位の差は雲泥の差であることも知っている。だから俺は長谷部穂高に負けたくないと思ったし、いつかは勝ちたいと思っていた。その長谷部穂高が今、同じクラスだ。

定期テストで勝ってやる、長谷部穂高に。


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