華蓮との休日2
準備が終わって、僕は玄関で待っていた
女の子はいろいろと時間がかかる
でもまあ、別に悪い気持ちはしない
返事は一言だったけど嬉しそうにしていたから
もう少し時間がかかるかと思ったが華蓮はかなり早かった
「おまたせ」
いつもはパンツスタイルなのに今日はスカートを履いていた
そんなの持ってたんだな
「んじゃいこっか」
どこに行くかは決めてないけど取り合えずお腹がすくまでぶらぶらすることにした
近衛家は結構町中にあって少し歩けばショッピングモールやらゲームセンターがある
学校もそれなりに近いせいか平日は学生がそこかしこにいる
今日は休日だけど、昼で部活が終わったのであろう生徒が運動着のまま歩いている
華蓮の部活は休日は休みだ、競技系じゃないからそこまで厳しくない
華蓮は異能力漏れ出すエネルギーのせいで普通の人間の十倍は身体能力が高い
そもそも競い合いにすらならないから運動系の部活は出禁だ
「何か見たいものあるか?」
誘ったのは僕だけど急に決めたお出かけだからプランなんてない
華蓮に任せることにした
「・・・靴見に行きたい」
だったら普通にショッピングモールいきかな
「どんなのがほしいんだ?」
「丈夫で歩きやすいやつ」
「なに?登山でもするの?」
何言ってんだこいつみたいな目で見られた。そんなわけないよね
華蓮は学校に三足靴を持っていく
普段用一足と運動用二足
体育の授業でよくダメにするから家にも予備をいくつか置いている
いつも友人と買いに行くから僕がついていくのは初めてだ
選ぶのは華蓮だろうから僕はただの付き添いかな
選んでって言われても満足いくものを選べる自信がない
ショッピングモールの入り口でたい焼きの屋台をやっていたので華蓮に一つ買ってあげた
甘いもの好きだから嬉しそうにしている
満足そうで何よりだ
入ってみると休日なのもあってなかなかにぎわっていた
地区最大のモールだ。靴を売ってる店なんていくらでもある
かなり歩くことになりそうだ
家では気づかなかったけど、昨日山道を長いこと歩いたせいか足がだるい
また後日にすればよかったか・・・いや今日であるから意味があるんだ
華蓮は目当ての店でもあるのか迷わず歩いて行く
このモールにくるのは久しぶりだ。何かいろいろ変わっていて見るだけでも面白い
目当ての店はかなり近くにあった。かなりの割合で男ものがおいてある
華蓮に耐えられるとしたらこういう店のほうがいいようだ
そのまま店に入って華蓮は小一時間物色していた
「んーーーこれかな」
決まったみたいだ。選んでいる最中じろじろこっちを見てきたが見て見ぬふりをした
僕はそういうの疎いからよくわからないんだごめん
店員さんにサイズの合うものを取り出してもらってこっちに来た
「これはいてみなさい」
「え?」
何で間抜けな顔してんのよって感じでにらまれた
「あんたのそれ、昨日の山道でボロボロじゃない。変な道歩くんならこういうのも持っておきなさいよ」
改めてみると少しほつれている個所があった
全然気にならなかったけど華蓮にはみっともなく見えたらしい
あれ。気にしてなかったの僕だけか?
というか自分の靴を見たいのかと思っていたけど僕のを選んでくれていたのか
さっきからじろじろ見てたのはこういうことか
とりあえず受け取って試着してみることにした
かなり頑丈そうな作りだけど履き心地はかなりいい、サイズもぴったりだ
華蓮は満足げにうなずいている
もう山道をあるく予定はないけど、こういうのも持っていてもいいかもしれない
「じゃあ、これ買ってくるよ。選んでくれてありがとう」
靴を履き替えてレジに行こうと思ったら、靴をとられた
「わたしが買うから外でまってて」
僕は店から放り出された
何でかよくわからなかったけど僕が買ってもらう側だったみたいだ
会計を済ませ出てきた華蓮に靴の入った袋を二つもたされた
片方は華蓮のものだろう
「あ、ありがとう。でもよかったのか?お金なら僕が・・・」
「これくらいいいわよ。そんなことより大事にはきなさいよ」
今までのお詫びみたいなものなのかな
前までの態度が完全になくなるわけではないと思うけど
それでもちょっとは優しくなってくれるのかもしれない
その方が華蓮のためにもなるだろうし、長い目で見ていこう
それに華蓮からプレゼントをもらうのは初めてだ
「大切に使わさてもらうね」
「うん。じゃ、次行くわよ」
それから、いろいろ見て回った。服もみたし、アクセサリーもみた
服はそんなに見なかった、でも一着気になったのがあったみたいで買ってあげた
アクセアリーにはあんまり興味はなかったみたいだけど何やら真剣に見ていた
ゲームセンターにも行った、パンチングマシーンがいつの間にか追加されていたらしく華蓮はやりたがったが必死に止めた
壊すのはまずい
そんなこんなしてたら十七時になっていた
お昼ご飯がいつもより少なかったからか、華蓮のお腹が鳴り始める
「何か食べようか、何食べたい?」
「・・・シチュー。ビーフシチュー食べたい」
「ビーフシチューか、どこかいいお店あるかな」
自炊ばっかりだからお店とか全然わからない。ま、調べたらなにか出てくるか
ポケットからスマホを取り出しす
「店のじゃなくて、あんたのがいい」
「え?」
どうやら前に作ったやつが気に入ったらしい
今日はそういう腹なのかな
「前みたいなの作るんだったらちょっと時間かかるよ?」
「大丈夫、八時までだったら我慢できる」
時間制限付きだった
だったらさっさと帰らないと
「じゃあ食材買って帰ろうか」
料理を褒められるのは素直にうれしい
美味しいそうに食べてくれるから作り甲斐がある
ちょっとの間定期的に作ってあげよう
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食材を買って家に着いた
帰宅後のあれこれやってキッチンに立って準備にかかる
制限時間まであと二時間しかない
まあでもそれだけあったら凝ったものは作れなくても食べられるものは作れるな
華蓮の舌を満足させられないかもしれないけど急なことだ許してほしい
次はちゃんと作ってやるから
下ごしらえしていたら荷物を片付けた華蓮がキッチンに来た
「もうちょっと時間かかるよ?リビングでまってて」
さすがにそんな早くは作れないよまだ立って十分たってないんだから
「手伝えることないかなって・・・」
気味悪いけど昼のこともあったしちょっとの間はこんな感じだろうな
「じゃあニンジンの皮向いてくれるか?」
「わかったわ」
すましているように見えるが内心わくわくしてるんだろう
尻尾を振ってるように感じる。見えないけど
なんだか新鮮だ。キッチンに二人並ぶなんてめったにない
隆美さんと一緒することはあったけど華蓮はなかった
キッチンに来るときはお腹がすいてせかしに来るときぐらいだ
まあそんな長くは続かないだろうけどちょっとずつでも料理を教えてあげることにしよう
「ねえ」
「なに?もう剥けたの?」
手元を見たらまだ半分くらいだった
「違うわよ。明日の話」
「明日?有栖のことか」
なんだ急に明け方有栖と話していたからそのことかな
「また行くの?あそこ」
「ああ、そのつもりだけど」
「あそこ・・・ううん。なんでもない」
そこできづいた。あそこに入ったら匂いを追えないんだった
もしかしたらそれが不安なのか
「でも、明日有栖のところに行くのは華蓮しってるでしょ?」
「・・・そうね。じゃあ心配ないわね」
そういって皮むきに戻った
でも何か煮え切れないかんじだ
どうしたものか・・・
「そうだ、華蓮も来るか?有栖も話相手が増えるのは喜ぶと思うし」
「そうね!それがいいわ!私も有栖ちゃんの連絡先教えてもらうわ!」
元気になってくれてよかった
やっぱり不安材料は取り除いておかないと
先までしおれていた耳がたって、尻尾をぶんぶん振ってるのを感じる、見えないけど
あとで有栖に確認の連絡入れておくか
それより今はまたなり始めた華蓮の腹をどうにかしよう
僕も調理に戻った
できたビーフシチューはそこそこだった
ちょっと皮が残ったり、野菜が大きすぎたり・・・
でも華蓮は満足そうだったし僕もうれしかった
はじめてこった料理を作ったにしては上出来だ
もっとうまくならなくちゃね!って言ってたから明日からも手伝ってくれるらしい
華蓮には本当に悪いことをしたとは思っている
でも変わるきっかけになったのならよかったのかもしれない
・・・いや。不安にさせるのは論外だ。絶対にさせちゃいけない
今回華蓮が暴れなかったのだって偶然だ
もう少し帰るのが遅かったら館ごと消し炭だったかもしれない
よく制御できているとは言え、まだ可能性は消えたわけじゃない
知らない場所に行くときは一緒にいくことにしよう
華蓮のあんな顔見るのはこれキリでいい
華蓮は食器洗いも手伝ってくれた
そのあと華蓮はご機嫌にお風呂に向かう
忘れないうちに有栖に連絡を入れておこう
そういえば今日は一度も見ていなかったなとおもいつつ画面を付けようとしたけど充電切れだった
昨日の朝充電してそれっきりだ、完全に忘れていた
充電器にさして電源を入れてみると、とんでもない数のメッセージと着信が画面いっぱいに表示された
やってしまった
それらはほとんど有栖からのものだった。光からも数件
とりあえず先に光のほうを見た
”昨日いけなくてすまん。気づかんうちに寝ちまったみたいだ”
本当に記憶が消えていたみたいだ。すごいな有栖
一人で見に行ったけどなにもなかったよ、と返しておいた
充電の件も一緒に
さて、有栖のこれだけど・・・
メッセージじゃだめだと思って電話をかけることにした
ワンコールというか着信音が鳴ったとたん華蓮と同じくらいの声で
「ひどいわ!たくさん連絡したのに今頃になって!許してあげないんだから!」
「まことに申し訳ありません」
「でも。明日ちゃんと来てくれるなら許してあげる!」
電話後ごしでも有栖は可愛かった
華蓮もつれていっていいかと聞いたら即答でOKしてくれた
僕も明日の支度をして早いめに寝ることにしよう
華蓮にも伝えて僕はお風呂に入った
連絡先も一緒に伝えからか話し声がお風呂にまで届いていた
この家が防音されててほんとによかった
明日聞きたいことを考えておいて寝ることにしよう
華蓮の話し声はそのあと深夜まで続いた
明日は寝不足かもしれないな・・・
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