再び龍見邸へ

 日曜の午後一時


 僕と華蓮は天津さんに有栖の家に飛ばしてもらった


 閉ざされてすぐ目の間に有栖がいた


「待っていたわよ!二人とも!」


 とてつもなくテンションが高くて後ずさりしてしまった


 華蓮が両手を広げるととんでもないスピードで抱きついて満面の笑みを浮かべている。カワイイ


 昨夜の通話でかなり仲良くなっていたようだ


 距離の詰め方がおかしいと思うのは僕だけなんだろうか


 でも仲良くなるのはいいことだ


 まだ出会って四日だけど僕も有栖とはいい関係を気づけていけそうな気がする


 「連日に関わらず来てくださりありがとうございます、近衛様。

  いえ、貴樹様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか」


 有栖と華蓮がじゃれ合ってるさなか、天津さんが話しかけてきた


 「ええ、それでお願いします。これからは華蓮もお呼ばれするかと思いますので」


 「ではそのように」


 華蓮は呼ばれるというより自分から会いに行きそうだけど


 じゃれ合いに満足したのか有栖は僕と華蓮に座っててと言ってキッチンに入って行った


 天津さんもそのタイミングでリビングから出ていき戻ってこなかった、おそらく他の仕事をしに行ったのだろう


 「今日は紅茶以外もあるの、何がいい?」


 有栖の手に持たれているであろうペットボトルやらなんやらがキッチンの裏からひょこひょこと見える


 小さいからそこまでしか見えないのだ。かわいい


 見かねた華蓮がキッチンまで手伝いに行った


 僕も行こうと思ったけど三人となると逆に邪魔になると思ってそのまま座っていることにした


 しばらくして2リットルのペットボトルを両手で抱えた有栖とコップといくつかのお菓子を持った華蓮が出てきた


 僕たちも家からいろいろ持ってきていたからちょっとしたお菓子パーティーになりそうだ


 有栖は机に持ってきたペットボトルをよいしょといって置き一息ついた


 なんだか小動物に見えてきた。かわいい


 「じゃ、何からする!?」


 さて何からといっても、この家のリビングにはほとんどなにもない


 まずテレビがない、立派な家具はあるがそれだけで娯楽道具は見当たらない


 昨日来た時にちゃんと見ておけばよかった


 「この部屋って思ってみたらなにもないのね」


 華蓮が不思議そうに周りをみている


 「そいえばそうだった!どうしよう、いまから天津に何か買ってこさせようかな」


 さすがにそれは天津さんが可哀そうだ


 そういえば僕はこの家に来てから応接室とこの部屋しか見ていないことに気づいた


 「気になってたんだけどこの家ってほかの部屋でどうなっているの?」


 「そうね、華蓮ちゃんもこの部屋見ていないわね。じゃあ私がガイドしてあげる!」


 華蓮も興味を持ったようで尻尾をぶんぶん振っている。見えないけど


 僕らは部屋をでて家の中を探検することにした


 まずは玄関から


 「ここは玄関ね。でもただ大きいだけで何もないから面白くないよね」


 「こういう洋館って色々飾ってあるイメージだけど、そういうのはないの?」


 「私はそういうの興味ないの、それに人全然来ないから見る人いないもん」


 やっぱり趣味の問題だったのか


 有栖は豪華絢爛というよりかわいいものが好きみたいだ。リビングの家具もかわいらしいのが多い


 華蓮は天井にぶら下がったシャンデリアのようなものに夢中だった


 本家のほうにもこんなのはないから物珍しかったのだろう


 「次は応接室ね。貴樹は昨日見たけど華蓮は見てないからね」


 応接室は玄関から入ってすぐ右にある


 「昨日とは全然ちがうね」


 入ってみると、昨日なかった家具たちがおかれていて、別室のようになっていた


 「あはは、昨日は演出のためにいろいろどかしていたから・・・これが本来の部屋なの」


 ここはリビングとは違いこの洋館らしい内装だ


 築何年なのかわからないけどかなりきれいなものだ、これも天津さんの仕事の成果なのかな


 華蓮はあまり興味がなさそうだった。ただ椅子がふかふかそうだったので触っている


 「次はーんー。部屋はいっぱいあるけど使わないのが多いから何もないとこが多いの」


 アゴに手を当てながら考えている。かわいい


 「天津の部屋と~私の部屋と~・・・あ!私の部屋見る?」


 さすがに乙女の部屋を見るのはよくないと思って遠慮しようとしたけど


 「見たいわ!どこにあるの!?」


 華蓮が今日一番の食いつき方をした


 「そういえば昨日見てみたいって言ってたよね。こっち!」


 通話で何やら話していたらしい。僕は扉の前で待つことにした


 中でわいわい騒いでる二人の声が聞こえてくる

 

 仲良くなるのが早すぎる。好みが同じなのかもしれない


 ちょっとしたら出てきた


 今度お泊りの約束をしたらしい。うらやましい限りだ、いやなんでも


 有栖が華蓮に踏みつぶされないか心配だけど、さすがにないか


 「天津の部屋はいいとして・・・次はお風呂かな」

 

 「お風呂!」


 華蓮が間髪入れずに興味を示した。今日一のテンションを数分で更新した。これはさすがに世界記録

 

 華蓮はスキップしながら有栖についていく。とても楽しそうだ。連れてきてよかった


 「ここが脱衣所」

 

 「うわ~」


 僕らの家の二倍ほどの広さだ


 うちも普通の家よりは広いと思っていたけどここは比べ物にならない


 「そしてこっちが浴場よ」


 こっちも広い。浴槽がうちの浴室くらいある


 湯ははられていなかったけどこれは入ったらきもちがよさそうだ


 華蓮は入りたがっているが壊しかねないので止めておいた

 

 エネルギーを放出しきった後なら大丈夫かもねって言ったら、それならいいやってすんなり諦めた


 言うことを聞くようになってくれてうれしい


 あとは何もない部屋だけしかないとのことだったので僕らはリビングに戻った


 ここ広い家で二人暮らしださぞ寂しいだろう


 話相手ができるだけでこんなに喜ぶのはこれのせいでもあったのかな


 することもなかったのでお菓子を食べながらいろいろ話すことにした


 昨日華蓮と話したことも話してくれた


 その間華蓮は相槌をうったり、まだ言ってないこともあったのか楽しそうにしゃべっている


 こういう華蓮を見るのは初めてだ


 普段他の人と話しているところを見ていない。いつもこんな感じなのかな


 そういえば家に友達を呼んだこと一度もない


 たまに部活の話とか出かけた話を聞かせてくれるからいるにはいるんだろう


 「ねえ、貴樹ちゃんと聞いてる!?」


 いろいろ考えてたら、目の前に有栖の顔があった。いいにおいがする


 「ごめんごめん、ちょっと考え事してた。なんの話だっけ」


 有栖は呆れた顔をした。僕のこと嫌いにならないでね?


 「貴樹の料理を食べてみたいって話!天津、料理はへたくそだからいつも出来合いのものしか食べてないの」


 「それなら今晩一緒にたべる?」


 いつの間にか食べ物の話になっていたらしい


 というか天津さんの意外な弱点を知ってしまった。さすがに完璧ってわけじゃなかったみたいだ


 それを抜いても余りある優秀なひとではあるけど


 「本当!?じゃあお呼ばれしちゃおうかな~」


 楽しみだな~といいながらお菓子をポリポリ食べてる


 あんまり重いものはやめてあげよう。華蓮は物足りないかもしれないから数を用意するか


 「そろそろ本題にはいろっか」


 有栖がジュースを飲んで一息ついた


 本題・・・あっそういえば忘れていた。二人の微笑ましい光景のせいで抜けていた


 昨日の続きだ


 「昨日途中で天津に切られたからね。続きしよ」


 突然真面目な顔になって僕のほうを向いく


 昨日いったいなぜ光の異能力がわかったのかについて聞かせてもらうことになった

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