龍見有栖1
放課後
僕はまだ頭の整理が追い付いていない
色んな事が起きすぎて頭が回らない
革命のこと
龍見有栖こと
片方は今考えなくていいことなんだろうけど
ずっと頭の片隅に残ってしまっている
僕は今いつも通り華蓮の部活が終わるまで教室で待っている
クラスメイト達も身支度を済ませてぞろぞろを教室を出て行った
龍見有栖ももういない
昨日とは違い、足早に帰って行ったのだ
僕だけでなく、クラスメイトもみんな驚いていた
人が変わったような彼女のことをみていない人などいなかった
人も少なくなった教室で、窓の外を見てぼーっとしていると光が声をかけてきた
「なんだぁ遠くのほう見ちゃって思春期らしくセンチな気分に酔いしれてんのか?」
今朝みたいにニヤニヤしながらだ。いや光はいつもこんな感じだ
「いろんなこと起きすぎて頭がパンクしそうだよ」
「ま、お前もいろいろ大変だよな。わかるぜ~貴樹」
光は多分、というか絶対に革命のことを知っている
何せ最初に情報をつかんできた小南の次期当主なのだから
光に相談すれば何かアドバイスでも情報でももらえるだろうから聞いてみようか
「今日の夜の事なんだけどよ。時間は言った通りで大丈夫だよな?」
「そのことなんだけどさ、今日のは・・・
言いかけたが光に待ったをかけられた
「確かに今じゃなくてもいいっていうのはよくわかってる
だけどな、ちょっとは休憩すんのも大事だぜ」
確かに光のいう通りなんだろう
昨日探索の話を持ち掛けてきた時にはもうあの情報を得ていたに違いない
だけどそれを承知で誘ったのだ、僕が考え込む性格だということを知っているから
光はいい加減だけど優しい人間だ
「まあ憔悴してるお前をただ見んのも面白いけどよ」
前言撤回、こいつは悪魔だ
「友人が悩んでんだ、ちょっとは力貸させてくれや」
ただ一人の親友がここまで言ってくれてるんだ。無下にはできない
光の言う通りにちょっと息抜きすることにしよう
「そうだね。やっぱり行くことにするよ。時間はあの通りで」
「よしきた。そんじゃ山の入り口で待ち合わせだ
俺が先についてりゃお前ならわかるだろ」
待ってるぜ~と後ろを向いて手を振りながら光は教室を出て行った
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ぼくは考えるのをいったんやめて、あのあたりのマップをも一度確認することにした
学校から南側、田園地帯を抜け山道を進んだところにそれはある
昨日龍見有栖についていったその先だ
まさかな、そんなわけ
光は確かに小柄な少女だと言っていた
金髪で、血のように赤い目をしているまるで吸血鬼のような
まるで龍見有栖のような少女がそこにいたという
あの後家に帰って華蓮にそんな話していた時、もしかするとなんて頭によぎった
吸血鬼は人を魅了しおびきよせる性質があるという
本物がいたという証拠なんてない。それこそ吸血鬼なんておとぎ話の存在だ
だけどそう考えると納得いくことがある
僕が華蓮をすっぽかしたこと
龍見有栖が昼間ほとんど動けていなかったこと
夜になるにつれて姿が変わっていったこと
僕の腕を嚙んだこと。多分あれは食事の類だろう
ただ、今日の放課後のことはよくわからない
日が出ているにもかかわらず彼女は普通に動けていた
日光に弱いとされているがそれが間違いだったのだろうか
もし本当に謎の少女が龍見有栖だった場合、今日の夜にわかるはずだ
沈んでいた気持ちがだんだん浮き始めたとき、教室のドアがとんでもない音を立てて開かれた
そこに華蓮が立っていた
どすどすと足音をたてて近づいてくる
時計を見ると部活が終わる時間をちょっと過ぎていた
いつもなら終わった後連絡が来るはずだけど、今日は違った
僕のカバンを机のフックから取り上げ、真後ろに立った華蓮は僕の首根っこをつかみ引きずるように連れ出した
「今日は絶対逃がさないわよ」
声色は少し怖かったが、華蓮を見上げてみるとちょっとすねた顔をしていた
昨日一緒に帰らなかったにもかかわらず僕が先についていたことがそうとう気に食わなかったのだろう
約束をすっぽかした僕が悪いのだからされるがまま引きずられることにした
さすがに学校の外は恥ずかしかったので途中で華蓮が好きな甘いものでも買ってあげるということで手打ちにしてもらった
女の子を怒らせると怖い、華蓮だともっと恐ろしい
この日常が微笑ましいと思い口角を上げたらとけつに蹴りが飛んできた
暴力には断固反対する!
そんなこんしていたら悩みなんて頭から消えていた
僕は革命軍の鎮圧に協力する覚悟が決まった
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現在時刻は一時四十分
待ち合わせ時間ちょっと前に合流し、光と共に山に入った
車の通れる道ではないため徒歩での移動となった
多少運動もしていて体力はあるものの、山道となったらまた別だ
二人でへとへとになりながら目的地に着いた
「あれがその建物か?」
「ああそうだ。報告にあったものと同じだな」
僕らの目のまえにはマップにあった通り研究所のようなものがあった
あたりはフェンスに囲まれ、侵入を拒んでいたがこんなところには誰も来ない
僕らみたいなもの以外は
「んじゃ早速見てみてくれ。なにかわかるかもしんねぇ」
「わかった」
僕は異能力を行使し建物を見た
するとそこには古い洋館らしきものが見えた
光にも共有し、間違いがないことを確認した
今日はあいにく夜から曇り空だ
雨が降るとは予報にないのはいいのだが、月明かりがささないのが残念ではある
「確かにあるけどどうやって近づこうか?」
「いやまず、許可なく他人の敷地内に入るなんてダメだろ」
「いいんだよ。どうせ北方の連中の敷地だ。なんかあったら家の力使えばいいんだから」
横暴にもほどがある。どこかの誰かさんに匹敵するようなもんだ
「取り合えず近づけるところまで近づくぞ」
やはり怖いもの知らずだ光は
だが小南の人間にはこういう大胆な心持ちは必要なのかもしれない
少しは巻き込まれる僕の気持ちも考えてほしいがこの件を最初に依頼したのは僕だ
いたしかたない。もうどうにでもなれ
とりあえずフェンスの前まで来た僕たちは中を覗き込んだ
その時突然研究所は姿をくらまし僕らの間の前にさっき視た古い洋館が現れた
月明かりもないし異能力を使っていないにも関わらずだ
僕も光も予想だにしなかった光景に身構えた
「何が起こった!?」
「俺もわかんねぇ!ただ話に聞いていたのとはちょっと違うな」
光の顔を見てみると恍惚とした表情を浮かべていた
かくいう僕も驚きはしたが好奇心のほうが勝っている
洋館をまじまじと見つめていると扉が開き、執事風の服を着た長身の男が出てきた
多分謎の二人の大きいほうだ
僕らは息をのんだ
男は細身ではあるがあの身長だ。しかもどんな異能力を持っているかもわからない
僕の眼で一時的に静止させることはできるが逃げ切れる保証がどこにもない
とりあえず対話を要求してみることにしようと口を開こうとしたとき先に男のほうから話しかけてきた
「お嬢様がお待ちです。こちらで汚れを落としてからお入りください」
私はただの執事である
そういわんばかりのしぐさと言動に僕らは顔を合わせた
ここは従うのが正しい
光は口聞きだから知らないが
僕はあの瞳を、姿を見ている
お嬢様とはだれのことか大体予想がつく
それにおそらく危害を加えられることもない
僕らのことを拒絶しているならとっくに家の前まで飛ばされているだろう
彼女が何を企んでいるかはわからないがとりあえず僕らは汚れを落とし中に入った
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