12.愛ともふもふに包まれて

「んっ! ぁ……ふぁ……っ」


 のお陰か、思いのほかすんなりと入っていく。粘液のニチャ、ネチャとした音が何ともいやらしい。


「ひっ……うぐッ……!」


 嫌じゃないけど流石にちょっと怖くなってきた。すがるようにしてリカさんの腕を掴む。


「痛いよね。ごめんね」


「ちがっ、……もっと近くに……暗くて、よく見えない……から……っ」


優太ゆうた……」


 顔を寄せてくれる。リカさんはふんわりとしたやわらかい笑顔を浮かべていた。ああ、物凄くほっとする。


 俺は気持ちの赴くままにリカさんを抱き寄せて――キスをした。


 薄そうに見えて意外とやわらかい唇。食んで離すと膨らんで。また食むと俺の唇の形になって。


「ふふっ……」


 唇を重ね合わせたままリカさんが微笑み出した。くすぐったそうに。嬉しそうに。


 何でだ? ……ああ、そうか。俺からするのはこれが初めてだから。


「ンっ! ……ぁ……」


 リカさんのが更に深いところへ。俺の息が乱れ始める。早く整えないと。


「んっ! ぁ……ふっ……リカ、さん……?」


 おでこに、頬っぺたに、鼻先に……小さなキスを落としていく。


 労わるようでいて、悪戯っぽく。慈愛に満ちているようでいて、小悪魔的でもあって。


 文字通り翻弄されていく。無論、悪い気はしない。俺の口からも笑みが零れる。


「あっ!? がっぅ……はぁ……?」


 おかしいな。馴染むどころかどんどん苦しくなっていく。中で膨らんでないか? 圧迫感が増しているような気がする。


 特に根元のあたりがヤバい。何か出っ張ってる。まさかこれは……金玉?


「はぁ……優太……ゆう、た……」


 眉を寄せて俺の名前を呼ぶ。耳も肩もピクピクしてる。感じてくれてるんだ。俺のこの体で。


 頑張ろう。


 一瞬で前向きになった。先程までの不安は何処へやらだ。


「あ゛!? あっ、……~~っ、はン……っ!」


 でも、やっぱり苦しい。大きく小刻みに息をつく。


「はぁ……はぁ……ぁっ……」


 リカさんと俺の吐息が混ざり合う。熱くて少し汗臭い。なのに不快感は全然なくて。


 例えるならお酒かな? 嗅ぐだけで頭の奥がじんと痺れていくような。魅惑的だけどちょっと危険な感じで。


「……持ち上げるよ」


「持ち……? わっ!?」


 抱き寄せられてリカさんの膝の上へ。俺の額がリカさんの肩にぶつかる。


「あ゛あぁっ!!?」


 その拍子に貫かれた。腹の奥まで。ガタガタと肩が震え出す。息が浅く、小刻みになる。ヤバい、ヤバい……なんて馬鹿みたいに慌てるけど。


「痛く……ない?」


 痛みが消えた。何で? さっきまであんなに苦しかったのに。ダメだ。頭がぽやぽやで考えが纏まらない。


「馴染むまで……このままで」


 リカさんの息は荒いままだ。下から覗き込むようにしてリカさんの顔を見る。


 ……あ、この体勢めっちゃキスしやすい。


 俺はそのまま顔を寄せて唇を重ねた。下からそっと掬い取るような形で。


 リカさんは直ぐに応えてくれる。数回食んだら口を開いて、俺の舌を受け入れて。


 舌と舌を絡ませて互いの唾液を混ぜ合わせていく。甘いな。とろとろしてる。こういうのカクテルキスって言うんだっけ。


 必死に飲み下すけど間に合わなくて、俺の口の端から止めどなく溢れ出ていく。ああ、勿体ないな。


「ゲホっ、ゲホっ……!」


 気管に入った。咳が止まらない。


 口を拭きながら下を向くと――見えてしまった。


 リカさんのが俺の体の中に入ってる。尻の感覚も相まって実感が再燃した。


「ん? あ……」


 リカさんの白い頬がほんのり赤く染まる。


 そうしたら、俺の悪戯心が柄にもなく触発されて。


「ここ? ……いや……ここまでかな?」


 俺は思い切って自分の腹を撫でてみた。


 薄い皮膚の向こうに硬い何かがあるのが分かる。それはへその裏のあたりまで来ていて。


「俺、初めてなんですよ? それなのにこんな深いところまで入って来て……」


「めっ、面目ない……」


「へへっ、う~そ♡ 嬉しいですよ」


 力任せにぎゅっと抱き締める。腕の中でリカさんが震えた。手応えありか? 俺の口から笑みが零れた。ああ、幸せだな。


「申し訳ついでに、もう一つ謝っておきたいことがあるんだけど……」


「何ですか?」


「言い忘れてたんだけど、その……私達のはんだ」


「はっ……? 抜けないって、まさか……一生?」


「いや、射精をし終えるまでだ」


「ああっ! な~んだそういうこと……」


 ほっと胸を撫でおろす。だけど、リカさんの表情は晴れなくて。


「射精は全部で3回で……その……物凄くたくさん出てしまうんだけど」


「構わないですよ」


「えっ? いいの……?」


「だって、リカさんのですし」


「…………」


「………っ!?」


 ここでようやく我に返る。俺、今何っつった……!?


「あっ!? えっと、その…………っ」


「ああ、私は本当に果報者だね」


 優しさが胸を抉る。居た堪れない……。


「ありがとう」


 耳元で囁かれた。こめかみにチュっと甘いキスを添えて。


 たったそれだけのことで浮かれ調子になる。我ながらチョロ過ぎるな。


「じゃあ、動くね」


 俺が頷くとリカさんがゆっくりと覆い被さって来た。俺は再び布団の上へ。仰向けに寝転がるような恰好になる。


「あン!? あはっ……!!」


 リカさんが腰を動かし始めた。小刻みに、激しく。


 根元の引っ掛かりを再認する。これがロックか……と何処か他人事のように思う。


「あぅっ!? あァ! ぁ……~~ッ!!」


 何だ? 凄くビリビリする。

 

「そこ、だ、め……」


「大丈夫。怖くないよ」


 なだめるように額にキスをしてくれる。リカさんがそう言うなら。俺は子供みたいにこくこくと頷いて。


「ぁン!! あっ、あっぁっあっ!!」


 受け入れていく。この新しい感覚を――抱かれる快感を。


「りか、さ……すき、す……きぃ……っ」


 好きが溢れ出す。同時に涙も。ぐちゅぐちゅでとろとろ。リカさんでいっぱいになっていく。心も、頭も、体の中も……何もかも全部。


「優太……かわいい……っ」


「あ゛ぐっ! んん゛~~っ!!!」


 俺は奥をゴリっと突かれてイった。飛び散った自分の精液が俺の胸や顎にかかる。


 拭き取りたい、息を整えたいけどリカさんは止まってくれなくて。


「はぁ……ぁっ……!」


 夢中になってる。俺に。俺の体に。嬉しい。堪らない。没頭してほしい。もっと。もっと。リカさんも俺でいっぱいになってほしい。


「ゆう……っ、た……!」


「っ! はンッ……!!!」


 中に広がる。リカさんのが。腸壁に当たってじわじわだらだらと広がっていくイメージ。


 これってされてるんだよな。俺には子供は出来ないけど、気持ちはちゃんと芽生えたように思う。


 お嫁さんの自覚っていうのかな? リカさんと添い遂げたいと思ったんだ。ははっ、ちょっとオーバーだったかな?


「優太、良かったらこれを」


 ふわっと風が吹いたと思ったら、俺の手にもふっとした何かが。


「っ! 尻尾……」


 リカさんのふっくらとした尻尾が両脇腹に、そして両手の上に乗る。


「よっ、4本……! あれ夢じゃなかったんですね」


「うん。まぁ……」


 リカさんが気まずそうに目を伏せる。やっぱあれはヤキモチからのお披露目だったのかな?


 俺の頬がだらしなく緩むけど、もう気にする必要もないよな。


 勢いよくリカさんの尻尾に抱き着いた。やわらかくて香ばしい。太陽みたいな匂いがする。


「もひゅ……もひゅ……」


 他の尻尾が覆い被さってきた。至福だ。


「あっ!? ぁっ……ああっ……ふぐっ……!」


 何かが腹の中で噴射された。言葉で表すならびゅーびゅーーっ!!! て感じだ。


 これ全部精液なのか? 流石にちょっと苦しい。リカさんの尻尾に足を絡めてぎゅーーっと抱き着く。


「ごめん。ごめんね……」


「謝らないで。俺、ちゃんと幸せですから」


「優太……」


 泣きそうな顔でこっちを見てくる。あ゛~~もう!!


「リカさん、接吻してください」


「勿論、喜んで」


「んぅ……」


 俺はリカさんを掻き抱きながら頭を撫でた。キスに乗じた形だ。面と向かって頭を撫でるのは……まだちょっと抵抗があるから。


「ん……」


 甘いキスともふもふに埋もれていく。幸せだ。ここがピークじゃないよな? 幸せ過ぎてちょっと怖くなる。


 叶うことならこのまま平穏な日々が続きますように。


 そうして切に願った。俺に最高のギフトを与えてくれた神様に向けて。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る