第4話 新規追加ボスを求めて
【旅立ちの祠】の前に立ちながら辺りの様子を伺ってみた。この辺りに沸くザコモンスター達がチラチラと俺の方を見ながらうろついてはいるが、飛び掛かってくる気配はなさそうだ。
いずれも25年前に見覚えのあるモンスターはレベル5で楽勝だったヤツらばかり。レベル15にもなった俺がカラまれる事はない、か。
だが、目当ての追加ボスらしきヤツの気配もない、っと。
「それにしても、探しているヤツが見当たらないのがこんなにも嬉しいとはな」
実に些細な事ではあるが、こうやって離れて懐かしいモンスターの姿を眺めている事にそう感じられるのはおっさんゲーマーだからだろうな。
何せ、昔はこうやって眺めて探す事が不可能だった。
今時のRPGだとフィールド上でモンスターに当たると戦闘になるシンボルエンカウント方式が当たり前だが、昔は基本的に姿が見えないエンカウント方式だった。
こちらから相手を選べる、嫌なら避けて戦わない手も採れるシンボルの様にはいかないのがエンカウント。
フィールド上にモンスターの姿はない。歩いている時に突然に、何かのモンスターに遭遇した事になって戦闘が始まる。
エリア毎に出没するモンスターの種類は大体決まっていたが、始まってみなければその中のどれに当たったかわからないという…。
HPもMPもギリギリで目的地に向かっている時に限ってエリア最強が現れたり…、アイテムドロップの為に狙っているヤツが全然出てこなかったり…。
全ては運次第の中でキリキリされられたものだが、それだけに目的を果たせた時の達成感が大きかったのも事実ではあった。
「まあ、今となってはあの理不尽もいい思い出か」
さて、こうして黙っていても出ないのならば動いてみるか。祠の手前に生えている【極上の癒し草】に手を伸ばしてみた。これを持ち帰るクエを受けてこの場に来たのだからトリガーになっている事もあるだろう。
草に手が届く直前。丁度、その上の辺りの何もない空間に裂け目が開き始める。
「やはり、これかっ!」
そこから何かが噴き出し始めた様だが。
「なんだ?」
目を凝らしてよく見ると『return0;』、『int nbuf=0』。アルファベットの様で? 何かを表すの式の様で?
あまり見慣れぬ文字の列が次々と噴き出しては地面に落ちて溶ける、まるで雪の様だ。
「この感じは、モンスターの封印が解かれる、みたいな事だろうか?」
ともかく。当然ながら25年前の『ブレイヴ・ソウルズ』オリジナル版の時に起こっていなければ、このフルダイヴのリメイク版でも初めて見る様な光景が起きているのは確かだ。
やはり、新規追加要素が出て来る扉を開いたと思ってよさそうだ。
「グギギッ、グォゲロロロ!!」
裂け目の奥から鳴き声らしきもの。少し遅れて何かが飛び出して来た。
「ケロガーだと、噂のヤツがケロガーだったとはな……」
出発点のオルバ村周辺だけに沸く濃い目のグリーンボディのカエル型。大きく開いた口からサーベルタイガーの様な長い牙が2本突き出しているのが特徴の、ゲーム中最弱のザコモンスター。
一見、その様に見えたのだが。
「いや、違うのか? ケロガーEX301……、なんだこれは」
形状は同じで色違いの上位互換のヤツらがいたのはすぐに思い出したところだ。ハイケロガー、サージェントケロガー、キングケロガーという感じで強くなっていく。
そこへ唐突過ぎるEX301ときた。リメイク版の追加ボスだから、そういうものだから、と言われてしまえばそれで終わりではあるが。
「さっぱり意味がわからん……」
だが、こいつがゲーム序盤の割にやたら強いと噂の追加ボスなのだろう。
「まあ、やってみるか」
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