第3話 死

「…吸血鬼ってのは何でもできんのな」


「まーね。練習すれば君も出来るようになるよ」


そんなことを話しながら空を飛ぶ2人の吸血鬼。いや意味わからん。

吸血鬼はコウモリになって飛ぶとかいうが、ホワイトもオレも人間の姿だ。

やはり吸血鬼伝説は当てにならないようだ。


「一応言っておくけど、君の次の決断はYESだからね?」


「はぁ?」


「覚えておけばいいから」


いきなり変なことを言う。ヴァンパイアジョークだろうか?

決断はYES。一応覚えておこう。


「あ、見えてきたね。あれがドルイング城だよ」


「マジで浮いてやがる…」


目の前の雲が晴れ、見えてきたその城は、空に浮かんでいた。

真ん中の大きな塔と4つの小さな塔からなる城には羽が生え、時折羽ばたく。


「エリブレイド生きてるかな〜?」


「死んでる可能性があるのか?」


「寿命以外にも自殺はできるからね」


自殺。オレの最も嫌いな言葉だ。だがまあ、不死身の吸血鬼には色々あるのだろう。

エリブレイドとやらは性格に難があるようだし。

そんなことを考えながら飛んでいく。オレはホワイトに抱えられているだけだが。


さて、あと100mほどで城というところまで来た。

どんどん城は迫ってくるが一向にスピードが落ちる気配が無い。

少し不安に思っているとホワイトが叫ぶ。


「さあ、歯でも食いしばって!」


…え?


「おいおいお前まさか!!」


どガッシャァァん


ガラスが割れるような、石が砕けるような。

そんな音を聞きながら目を閉じる。


これがこのオレ、白雲つかさの、


初めての死だった。



…赤い背景に文字が浮かんでいる。


『再開シマスカ?

YES NO』


…決断だ…!

確か決断はYESだったな。


「YES 、だ」


そういうと世界がいきなりブラックアウトする。

真っ暗な世界に少し恐怖を感じる。


おそらくオレは死んだ。吸血鬼は蘇る。

あれが蘇りの手順的なものなのだろうか。




…まず最初に、鼓動がきこえた。

次に手の感覚が戻る。

足の感覚が戻る。

腕、脚、胴、首がどんどん戻ってくる。

最後に、頭の感覚が戻る。


世界が明るくなる。

瞬きをする。

ホワイトが見える。


「どうだった?」


「…なるほどな。こう言うことか。

 オレはどれくらい寝てたんだ?」


「10秒」


「え?」


「みんな何でか分からないけどきっちり10秒なの」


変なシステムだ。まるでゲームだな。

再開なんて言い方も、吸血鬼の存在も、何もかも。

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