第2話 旅立ち

「少年。君はその子を生き返らせるんだろ?」


女を背負って道を歩いていると、ホワイトがそう言ってきた。


「一応そのつもりだが何でだ?」


「そう言えば言ってなかった?死人に命を吹き込むには200年の寿命が必要なの」


「どういうことだ?」


「我々吸血鬼は死なない。正確にいうと死ぬと無傷に戻るんだ。でも老衰は違う。

 だから寿命があるんだ」


「ほーん。で、それは大体何年くらいだ?」


「知らないな」


「は?」


「老衰で死ぬことはわかっているんだが、死んだ奴はいないんだ。

 君は死ぬ前に吸血鬼にしたし…」


「じゃあほんとに生き返らせるかわかんねぇじゃん」


「まあそこは後で話そう。で、寿命っていうものは不安定で、生物が生きた時間

 そのものなんだ。だから、死んだ瞬間に取り込まないと効果がない」


「つまり?」


「つまり、200歳の吸血鬼を殺す時、その子がそばにいなくちゃならないんだけど」


「なるほど。あの女は連れていけないってことか」


「そう。だから寿命は他の吸血鬼に取り込ませて、その子の近くで取り込んだ吸血鬼から寿命を取り出すんだ。で、その吸血鬼を探さなきゃいけない」


なんかパズルみたいだ。どうやらオレは結構すごいことを言ってるのかも知れない。

だが、オレにとってこの女は大切な存在だ。

この女はオレを知らないがオレはこの女をとても良く思っている。


「分かった。で、アテはあるのか?」


「…一つあるんだけどね。ちょっと性格に難ありでね」


やはり吸血鬼というのはホワイトみたいなのだけではないのか。

まあこれから共に行動する奴だ。気が合うといいが。


「とりあえず会いに行ってみようぜ」


「簡単にいうけどどこにいるか知ってるの?」


「いや知るワケないだろ」


「そりゃそうだ。えっと、その吸血鬼、エリブレイドっていうんだけどね。

 かなりの変人で、空に住んでるの」


「へえ。は!?」


「だから空に行くよ」


「やっぱちょっとまってタイm」


…こうして、オレの奇妙な冒険が始まってしまったのである。

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