第14話 最終決戦と犠牲
電力会社の制御室が暗闇に包まれる中、西川真理は、冷え切った空気の中で胸の高鳴りを抑えながら周囲を見渡した。犯人の命を絶つことで止まったかに見えたシステム。しかし、事態は彼女が思っていた以上に深刻だった。モニターの赤い警告灯が再び点滅し始め、都市全体が危機にさらされていることを示していた。
「何が起こっている?」西川は焦りの色を浮かべながら、無線で奈緒美に確認を取った。
「こちらでも制御が効かない状況です。犯人が残したバックドアから、菅原が遠隔でシステムに干渉しています。今すぐ止めなければ、全てが終わってしまいます。」奈緒美の声には緊張が滲んでいた。
「分かった。何としても菅原を止める。」西川は鋭い決意を込めて応えた。
志摩と伊吹が現場に到着し、西川に加わった。彼らはすぐに状況を理解し、最後の決戦に向けて準備を整えた。西川は彼らに簡潔な指示を出し、犯人の残した痕跡を追跡するよう命じた。
「菅原はどこにいる?」志摩が尋ねる。
「すでに特定済みよ。」西川が答える。「電力供給システムの最上階、そこに奴がいる。これが最終決戦だ。」
「了解。俺たちが奴を止める。」伊吹が自信に満ちた声で応じた。
三人は迅速に行動を開始し、ビルの最上階へと向かった。エレベーターの中で、三人は無言のままそれぞれの覚悟を胸に秘めた。この戦いで、彼らが全てを終わらせなければならない。
エレベーターが最上階に到着し、ドアが静かに開いた。そこには、菅原義隆が待ち構えていた。背中を向けたまま、都市の夜景を眺めている彼の姿は、まるで全てを制したかのような風格を漂わせていた。
「ついに来たか。」菅原が冷静に言葉を発し、ゆっくりと振り返った。「お前たちがここまで辿り着くことは予想していた。だが、もう遅い。」
「お前を止めるためにここに来た。」志摩が銃を構え、菅原に向けて進み出た。
「これ以上の犠牲は許されない。」伊吹もまた同じように前進した。
「犠牲だと?私はただ、新しい秩序を作り出すために必要な変革を起こしているだけだ。」菅原は静かに答えた。その言葉には、狂気と確信が入り混じっていた。
「そのために、無関係の市民を犠牲にするのか?お前のやっていることは、ただのテロだ。」西川が鋭く切り返した。
「テロ?いいや、これは革命だ。古い秩序を壊し、新しい秩序を築くために必要な痛みだ。」菅原は不敵な笑みを浮かべた。「お前たちには理解できまい。私が目指している未来の偉大さを。」
「そんな未来は必要ない。お前の理想のために人々が苦しむことは許されない。」志摩が銃口を菅原に向け、今にも引き金を引こうとしたその瞬間、菅原は手にしていたリモートデバイスを操作した。
「これが、私の最後の贈り物だ。」菅原が押したスイッチと同時に、ビル全体が激しく揺れ、警報が鳴り響いた。
「何をした!」西川が叫んだ。
「全てをリセットするためのシステムが起動したのさ。」菅原は冷たく笑った。「この都市は、今から始まる混乱の中で、新たな秩序を見出すだろう。」
志摩と伊吹が一気に菅原に突進し、その手からリモートデバイスを奪い取った。しかし、菅原はその瞬間、自らの身体に隠された爆発装置を作動させようとした。
「やめろ!」伊吹が叫び、菅原に飛びかかろうとしたが、その瞬間、ビルの照明が全て消え、都市全体が真っ暗になった。
「しまった…」志摩が息を呑んだ。
西川は、何とかシステムを取り戻そうと必死に無線で奈緒美に呼びかけた。「奈緒美さん、まだ何とかなるか?」
「分かりません…しかし、諦めません。」奈緒美はキーボードを叩き続けた。彼女は、この状況を打開するために全ての技術と知識を総動員していた。
菅原は不敵な笑みを浮かべたまま、「お前たちは敗北した」と冷ややかに言い放った。
その時、奈緒美がついにシステムの復旧に成功し、電力供給が一部回復し始めた。モニターには徐々に電力が回復する様子が映し出され、希望の光が差し込んだ。
「私たちが、勝つ!」西川はその瞬間、全ての力を込めて菅原に向かって突進し、彼の腕を抑え込んだ。菅原は抵抗したが、すでに力尽きたのか、次第に動かなくなった。
「これで終わりだ…」志摩が静かに言った。
「いや、まだだ。」西川は菅原を見下ろしながら言葉を続けた。「これから、お前の計画が全て暴かれる。お前が信じていた未来は、ここで終わる。」
菅原は微かに笑い、「私の信じた未来は、きっと誰かが引き継ぐだろう」と呟いた。その言葉が西川たちに冷たく響いた。
その瞬間、菅原の心臓が止まり、全てが静寂に包まれた。
「…終わったのか?」伊吹が息を呑んで尋ねた。
「そうだ。全てが終わった。」西川は疲れ切った表情で答えた。
奈緒美もまた、モニターを見つめながら深いため息をついた。「ようやく…」
都市は再び明かりを取り戻し、命をかけた戦いが終わりを告げた。しかし、その戦いで彼らが失ったものは計り知れなかった。犠牲と引き換えに守った未来、それを胸に彼らは新たな一歩を踏み出す準備をしていた。
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