第13話 菅原の背景と黒幕の正体

電力会社の制御室が緊迫した空気に包まれる中、西川真理は、犯人の足取りを追うべく、警戒態勢を保ちながら廊下を進んでいた。犯人はすぐ近くにいる――その確信が、彼女の動きを一層鋭くしていた。


一方、NDSラボでは、前田奈緒美が解析を進める中で、これまでの事件の全貌が徐々に明らかになりつつあった。犯人の通信ログを辿る中で、ある重大な事実が浮かび上がった。それは、全ての事件の背後に、かつて日本の通信業界を支配していた男、菅原義隆の影が見え隠れしているということだった。


「菅原義隆…彼が全ての黒幕だったなんて。」奈緒美は画面を見つめ、信じがたい思いでつぶやいた。画面には、菅原がCEOを務めていた頃に使用されていたセキュリティコードが、犯人たちの通信に組み込まれている証拠が映し出されていた。


「菅原は、ただの企業家じゃなかった。」小野寺翔太が息を呑んで言った。「彼は自らの理想を実現するために、都市全体を混乱に陥れようとしている。」


その頃、西川はついに犯人の姿を捉えた。制御室の奥、電力供給システムの中枢に向かう細い廊下で、黒いフードを被った男がシステムにアクセスしていた。その背中が冷たく輝くモニターに映し出されていた。


「動くな!」西川が銃を構え、鋭い声で叫んだ。


男はゆっくりと振り返り、フードを取った。その顔には、これまでに出会ったどの犯人とも違う冷酷な表情が浮かんでいた。彼の目には、まるで全てが計画通りに進んでいるという確信が滲み出ていた。


「やっと会えたな。」西川が言った。


「お前がここに来るのは、わかっていた。」男は静かに答えた。「だが、私を止めることはできない。すでに全ては終わっている。」


その言葉を聞いた瞬間、西川の脳裏に過去の事件がフラッシュバックした。あの時も、犯人がそう言っていた――そして、彼女は守れなかった命があった。しかし、今度は違う。


「そんなことはさせない。」西川は決意を込めて言い放ち、男に一歩近づいた。「お前たちが何を企んでいるのか、すべて暴いてやる。」


その瞬間、無線から奈緒美の緊急の声が響いた。「西川班長、菅原義隆が背後にいます。彼が全ての計画を指揮している。彼の目的は、ただの混乱ではなく、この都市を支配する新しい秩序を作り出すことにあります。」


「菅原義隆…やはりそうか。」西川はその名前に重みを感じながら、男を睨みつけた。「お前もその計画の一部か?」


男は冷たく笑い、「私はただ、彼の理想を実現するために動いているだけだ。」と答えた。「今、全てが終わりに近づいている。お前たちは何もできない。」


その時、制御室のシステムが突然大きなアラーム音を発し、警告メッセージが次々と表示され始めた。都市全体が危機にさらされる予兆だった。


「やめろ!」西川は即座に動き、男に向かって突進した。しかし、男はそれを予期していたかのように素早く身をかわし、システムのメインコンソールに手を伸ばした。


「これが最後の一手だ。」男は冷笑を浮かべながら、コンソールのスイッチを押した。その瞬間、制御室内のモニターが全て赤く染まり、システムが完全に停止する危機的な状況に陥った。


「何をした!」西川は叫び、男に向かって突きかかった。しかし、その瞬間、男は自らに電気ショックを与える装置を起動させ、意識を失った。彼は捕まることを拒み、自らの命を絶ったのだ。


「しまった…」西川は唖然としながらも、すぐに制御室のシステムを確認した。都市全体の電力供給が今にも途絶えようとしていることが示されていた。


「奈緒美さん、システムが停止しました!何とかしないと…」西川は焦りを隠せずに報告した。


「こちらで緊急対応を試みます。時間がありませんが、私たちにできる限りのことをします。」奈緒美は必死にシステムの再起動を試みた。


だが、その時、無線が再び繋がり、小野寺が報告した。「奈緒美さん、菅原義隆が別の場所にいることが判明しました。彼が最終的な攻撃を仕掛けるつもりです。」


「これが…本当のクライマックスね。」奈緒美は決意を新たにし、システムの復旧と菅原の追跡という二重の課題に立ち向かう覚悟を決めた。


西川もまた、男の死体を見下ろしながら心に決めた。「この都市を守るためには、菅原を止めるしかない。」


全てが一つに繋がり、物語は最終的な対決へと突入していく。都市の命運を握る者たちの戦いが、今まさに始まろうとしていた。

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