第12話 電力会社への急行とさらなる危機
夜の冷たい風が肌を刺すように感じられる中、西川真理は特別捜査班を率いて電力会社の本社ビルへと急行していた。無機質なコンクリートの建物が目の前に迫ってくると、彼女の中で緊張感が一層高まった。時間がない――犯人たちの計画が動き出している今、少しの遅れも許されない状況だった。
「到着まであと3分、全員準備を整えて。」西川は無線で部下たちに指示を出し、冷静さを保とうと努めた。だが、彼女の脳裏には、過去に関わったテロ事件の記憶がフラッシュバックしていた。あの時も、時間との戦いだった。そして、彼女は守れなかった命があった――その思いが、彼女の胸を締め付ける。
「今度こそ…絶対に守る。」西川は決意を新たにし、車内で武器の確認を行った。
その頃、NDSラボの前田奈緒美もまた、緊迫した状況の中でシステム解析を続けていた。画面には、犯人たちが仕掛けた複数の通信ログが映し出されていた。全てが複雑に絡み合い、都市の電力網に深刻な影響を与える寸前だった。
「奈緒美さん、電力会社に繋がる通信ログがどんどん増えています。犯人は間違いなく、ここで最後の一手を打つつもりです。」小野寺翔太が焦りを滲ませながら報告した。
「わかっています。私たちが全力でこのシステムを守り抜かないと…都市全体が危険にさらされる。」奈緒美は手を止めず、解析を進めた。「菅原義隆…あなたがこれほどまでに徹底的な計画を立てていたなんて。」
西川たちが電力会社のビルに到着した時、既に建物の中は異常事態に陥っていた。警備員たちが慌ただしく走り回り、緊急事態を伝える警報音が鳴り響いていた。
「西川班長、内部に入る準備が整いました。」部下の一人が報告し、西川は頷いた。
「全員、慎重に行動するように。犯人がまだ内部にいる可能性がある。」彼女は冷静に指示を出し、部隊を引き連れて建物内に突入した。
ビルの内部は異様な静けさに包まれていた。西川は緊張感を保ちながら、廊下を進んだ。すべての感覚が研ぎ澄まされ、いつでも動けるように身構えていた。彼女の耳には、遠くからかすかな機械の音が聞こえてきた。
「何かが動いている…」西川はつぶやき、部下たちに手信号で静かに進むように指示した。
彼らがたどり着いたのは、電力会社の制御室だった。ドアを慎重に開けると、中には複数のモニターが並び、その全てに赤い警告メッセージが表示されていた。
「侵入されている…」西川は唇を噛みしめた。
その時、彼女の目に何かが映った。モニターの一つに映るカメラの映像――そこに、廊下を進む黒い影が見えた。
「犯人がまだ内部にいる!全員、すぐにその場所に向かえ!」西川は無線で指示を出し、すぐさま動き出した。
廊下を走りながら、彼女は再び過去の記憶に囚われそうになった。しかし、今度は違う。今回は、彼女が守り抜く番だ。
一方、NDSラボでは、奈緒美が最後の解析に全力を注いでいた。「これが犯人の最終目的…都市全体を暗闇に沈め、その混乱の中で何かを企んでいる。」
彼女の目は画面に釘付けだった。そこには、菅原がかつてCEOを務めていた企業のセキュリティコードが、犯人たちの通信に使われていることが映し出されていた。
「これで決まりだ…菅原が黒幕。」奈緒美はその事実を確信し、西川に急報した。「西川班長、犯人の背後には菅原義隆がいます。彼が全ての黒幕です。」
「了解。私たちもすぐに動く。」西川は冷静に答えたが、その声には確かな怒りがこもっていた。
「絶対に、逃がさない。」彼女の目は鋭く光り、これからの決戦に向けて意気を新たにした。
ビルの奥深くに潜む犯人の影と、システム内で蠢く見えない脅威。全てが今、激突する運命にあった。西川、志摩、伊吹、そして奈緒美――彼らの闘いは、まだ終わっていない。
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