第10話 仲間の存在と新たな脅威

志摩と伊吹が廃工場で犯人を逮捕したのは、夜の冷たい風が吹き抜ける静かな時間だった。犯人のフードを剥ぎ取り、手錠をかけると、彼の冷たい目が志摩を見据えた。そこには悔しさもなく、むしろ勝利を確信したかのような冷笑が浮かんでいた。


「これで終わりだ。」伊吹が吐き捨てるように言った。


しかし、犯人は静かに笑みを浮かべ、低く囁いた。「まだ終わっていないさ…お前たちは、全てを見誤っている。」


その言葉が耳に届いた瞬間、志摩の中で警鐘が鳴り響いた。「どういう意味だ?」


犯人は答えず、ただその冷たい目を志摩に向け続けた。志摩はすぐに無線を手に取り、NDSラボの前田奈緒美に連絡を取った。


「奈緒美さん、犯人が何か言いました。『まだ終わっていない』と。仲間がいる可能性が高いです。今すぐ、システム内の異常を確認してもらえますか?」


奈緒美はすぐに応じた。「了解しました。すぐにシステムを再チェックします。」


その時、伊吹がふと犯人の足元に目を向けた。彼が踏んでいた地面の一部が、わずかに不自然に隆起していることに気づいた。伊吹はその場所を軽く蹴り上げ、隠されたハッチのようなものが現れた。


「こいつ…ここに何か隠している。」伊吹は険しい顔をして志摩に告げた。


志摩はすぐにそのハッチを開け、中を覗き込んだ。そこには小型の通信機器と複数のリモートデバイスが整然と並べられていた。その一つが微かに点滅している。


「おそらく、これで他の仲間に指示を出しているのか…」志摩はすぐに無線で報告を入れた。「奈緒美さん、ここに通信機器があります。おそらく他の仲間と連絡を取るためのものです。すぐに解析をお願いしたい。」


「こちらも異常な通信ログを確認しました。」奈緒美の声が響いた。「犯人の通信がまだ続いている可能性があります。他にも仲間がいるのかもしれません。」


その瞬間、犯人の無表情な顔が一瞬だけ揺らいだように見えた。それを見逃さなかった志摩はさらに問い詰めた。「お前の仲間はどこにいる?今すぐ話せば、お前の罪状も軽くなるかもしれない。」


しかし、犯人は一切口を開かず、ただ冷ややかな視線を返すだけだった。その態度がかえって志摩と伊吹の不安を煽った。犯人の背後には、もっと大きな計画が隠されているのかもしれない。


「ここで止めなければ、奴らは次の一手を打ってくる。」志摩は拳を握りしめ、強い決意を滲ませた。「絶対に逃がさない。」


一方、奈緒美はすぐさまNDSラボに戻り、システムの再解析を開始した。犯人が残した痕跡を追い、さらに仲間がどこにいるのか、そして次に何を仕掛けてくるのかを突き止めるために、全力で解析を進めていく。


「もしこの解析が間に合わなければ…」奈緒美は考えを振り払い、集中力を高めた。犯人たちが組織的な犯行を続ける限り、都市全体が再び危機に瀕する。時間との戦いが、再び始まったのだ。


やがて、画面に現れた新たなデータが、奈緒美の目に飛び込んできた。それは、犯人たちの仲間がまだ活動を続けていることを示す、決定的な証拠だった。


「これだ…!」奈緒美は小さく呟いた。「犯人の仲間たちが、まだ都市のどこかで動いている…」


次なる脅威が、今まさに迫っていることを、奈緒美は直感で感じ取った。しかし、それが具体的に何を意味するのか、まだ全貌は掴めていなかった。

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