第6話 システム奪還と犯人の計画発覚
NDSラボの移動式ワークステーションが設置された仮設テントの中、前田奈緒美はデバイスを解析するための作業に没頭していた。周囲は計算式やコードが映し出されたスクリーンで埋め尽くされ、キーボードを叩く音が静かに響いていた。テントの外では、警察の捜査員たちが現場を封鎖し、現場検証が続けられている。火災の後処理を行う消防隊員たちの動きが見えるが、その慌ただしさの中にも、時間が迫っていることを感じさせる緊張感が漂っていた。
前田はデバイスの内部構造とプログラムを解析しながら、次々とファイルを開き、暗号化されたデータを解読していった。だが、その内容は予想以上に複雑であり、彼女の額には汗が浮かんでいた。
「奈緒美さん、何かわかりそうですか?」エレナが焦りを隠せない様子で尋ねた。
前田は手を止めずに答えた。「このデバイスは、単なるタイマーではありません。犯人がシステム全体を掌握し、遠隔で爆発物を操作できるように設計されています。さらに、システムの一部にバックドアが仕掛けられていて、外部からのアクセスを可能にしているようです。」
「バックドア…」エレナはその言葉に、胸の中で何かが引き裂かれるような感覚を覚えた。「それで、犯人はずっと我々の動きを監視しているということですか?」
「そうです。さらに解析を進めると、爆発のタイミングが設定されている場所が見つかりました。これによると、犯人は次のターゲットを都市部の重要な施設に定めています。このデバイスはその爆発を誘発するためのトリガーとなる可能性があります。」
「都市部の重要な施設…」エレナはその言葉を反芻し、即座に対応を考えた。だが、具体的な場所はまだ特定されていない。
その時、村上が息を切らしながらテントに飛び込んできた。「奈緒美さん、解析の結果、新しいログが出てきました!それによると、次のターゲットは…」彼はモニターを指さした。
スクリーンには、都市部のインフラが詳細に表示されていた。水道局、電力会社、通信センター…それらが犯人の次なる標的となり得る施設だった。
「犯人はこれらの施設を同時に攻撃しようとしているのか…」志摩が苦い顔でつぶやいた。「もしこれが成功したら、都市全体が麻痺するだろう。」
「どうやら、犯人は物流システムを掌握しているだけでなく、都市全体を混乱に陥れようとしているようです。」前田はスクリーンを見つめながら冷静に分析した。「そして、このデバイスがその計画の鍵を握っている。」
エレナはその分析に耳を傾けながら、心の中で強い決意を固めた。「このデバイスを解析し、犯人の計画を阻止するしかない。奈緒美さん、引き続きお願いできますか?」
「もちろんです。ここからが本番です。」前田は頷き、再び解析に集中した。
その時、NDSラボのデジタルフォレンジック専門家である高橋剛が、別のコンソールで作業していた手を止めて言った。「これを見てください。このシステムログ、犯人が残した痕跡が消去されていますが、部分的に復元できました。」
エレナ、前田、そして村上が高橋のスクリーンに目を向けた。そこには、犯人がシステムに侵入した経路と、外部との通信記録が表示されていた。さらに、犯人が設定した爆発のカウントダウンが刻一刻と進んでいることが示されていた。
「このカウントダウン…あと12時間しかありません。」高橋の声が緊張感を増幅させた。
「12時間…」エレナはその言葉にさらに焦りを感じながらも、冷静に次の行動を考えた。「今すぐにこの情報をもとに、警察と都市部の施設に警告を発しなければ。」
「わかりました。私たちも引き続き犯人の痕跡を追跡します。」前田が力強く答えた。
その瞬間、再び緊急通信が入った。「伊吹さん、緊急です!都市部の通信センターで異常が発生し、通信が途絶え始めています。」
「始まったか…」志摩が低く呟き、伊吹と目を合わせた。
エレナは、その情報を聞いて、今自分が立っている場所がまさに戦場であることを痛感した。この戦いに勝利するためには、すべての力を結集し、犯人の計画を阻止しなければならない。
「時間がない…でも、私たちは必ずこの危機を乗り越えられる。」エレナは自分自身にそう言い聞かせ、戦いの準備を進めるために、再び現場の指揮に戻った。
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