第5話 警察との協力と内部捜査

夜の帳が深く降りる中、デイリーファーストの関東配送センターは、瓦礫と煙が混ざり合う混乱の中にあった。灯りが途切れ途切れに点灯しているだけで、センターの広大な敷地は、まるで闇に包まれた無機質な迷宮のようだった。救助活動を行う消防隊員たちの懸命な作業により、炎はようやく沈静化しつつあったが、まだ完全には消え去っておらず、あちこちから立ち上る黒煙が夜空に向かって伸びていた。


センターの入り口付近に立つエレナは、冷たい夜風を感じながらも、その風景をただじっと見つめていた。自らの無力感と、これから直面するであろうさらなる困難を思うと、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。だが、その思考を遮るように、彼女の耳に届いたのは、複数のサイレンの音が近づいてくる音だった。


黒いSUVが数台、砂利を跳ね上げながらセンターの駐車場に滑り込むようにして止まった。ドアが勢いよく開き、そこから降り立ったのは、警察のMIU404のメンバーたちだった。伊吹と志摩が、迅速に現場の状況を確認し、すぐさまエレナのもとに向かってきた。伊吹の力強い足取りと、志摩の鋭い眼差しが、ただならぬ事態を物語っていた。


「舟渡さんですね?こちらMIU404の伊吹と志摩です。」伊吹が簡潔に自己紹介し、すぐに本題に入る。「状況はどうですか?」


エレナは一瞬ためらったが、すぐに現場で起きたことを伝えるため、彼らを倉庫内へと案内した。道中、残された瓦礫や崩れた棚を見つめながら、彼女はここで起こった惨事の原因を解明することがいかに重要かを再認識した。


「このデバイスが現場で見つかったものです。見てください、ここに『24時間後』と表示されています。」エレナは慎重に保管していたデバイスを二人に見せた。


志摩がデバイスを手に取り、その表示をじっと見つめた。「これが犯人の予告か…。まだ時間があるということか。」彼はその後、伊吹に視線を向け、無言の了解を得ると、すぐさま通信機で部隊に指示を飛ばした。


「どうやら、犯人はまだ完全に我々を試しているようです。舟渡さん、このセンター内に協力者がいる可能性についてはどうお考えですか?」伊吹が慎重に尋ねた。


エレナはその問いに一瞬息を詰まらせた。「協力者…?正直、考えたくはありませんが、この規模の作戦を実行するには、内部の助けがあったとしても不思議ではありません。」


「では、その可能性を考慮に入れて行動しましょう。」志摩が頷きながら言った。「このデバイスも解析が必要です。NDSラボに協力を要請しています。彼らがデジタルフォレンジックでこれを調べてくれるでしょう。」


エレナはNDSラボの名前を聞いて少し安心した。「NDSラボ…彼らが協力してくれるなら、解決への道筋が見えてくるかもしれません。」


その時、現場に駆けつけたNDSラボのメンバーたちが到着した。前田奈緒美がチームを率いていた。彼女は落ち着いた表情で現場の状況を確認し、すぐにデバイスの解析に取り掛かった。彼女の冷静さとプロフェッショナリズムに、エレナは心の中で少しずつ希望を取り戻していくのを感じた。


「奈緒美さん、このデバイス、解析できそうですか?」エレナが尋ねる。


前田奈緒美は真剣な面持ちでデバイスを手に取り、頷いた。「できます。少し時間がかかりますが、この中に何が隠されているのかを突き止めます。」


その言葉にエレナは力強い決意を感じた。「お願いね。時間がないの。」


前田はすぐさまラボのメンバーに指示を出し、彼らは持ち込んだ機器を用いて現場で解析を始めた。彼女の背後で作業するチームメンバーたちは、次々とデータを収集し、NDSラボ本部との通信を通じてリアルタイムで情報を共有していった。


エレナはその光景を見つめながら、改めて24時間というタイムリミットの重さを感じていた。時間は刻一刻と迫っている。彼女は深く息をつき、次の一手を考え始めた。


「この場所には、何かまだ隠されているはず。デバイスだけじゃない…犯人が残した痕跡が…。」エレナはそう呟きながら、センター内を改めて見渡した。彼女の目には、まだ解決していない謎と、それを解き明かすべき責任が映っていた。


黒い煙が空へと消えていく中で、彼女の決意もまた、さらに固くなっていった。これから始まる戦いに備え、エレナは静かに準備を整えた。

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