第4話 残り時間と次なる一手

配送センター内での混乱が続く中、舟渡エレナは外部の状況を確認するため、わずかに開けた瓦礫の隙間から外を覗き込んだ。夜の闇は一層濃くなり、僅かに見える街灯の光が、今やエレナにとって唯一の外部との繋がりを示しているかのようだった。遠くから近づくサイレンの音が、ようやく救援が到着したことを知らせる。しかし、その音が近づくたびに、エレナの心には焦燥感が増していった。


彼女は無線機に手を伸ばし、技術チームの村上に再度連絡を取ろうとしたが、その前にシステムが不安定で通信が切断された。「くそっ!」彼女は無意識にその言葉を呟いたが、すぐに冷静さを取り戻し、現状を整理しようと努めた。現場の混乱、火災の急速な広がり、そして村上が警告していた「24時間」という言葉。全てが繋がり、今の自分たちが直面している危機の深刻さを物語っていた。


エレナは周囲を見渡し、倒れている作業員たちを確認した。彼らの中には軽傷で済んだ者もいれば、意識不明の者もいた。救助活動を行う消防隊員たちが、瓦礫を除去しながら必死に負傷者を運び出しているのを見て、エレナは再び自分の役割に集中しなければならないことを思い出した。


「今、この瞬間が重要だ…」エレナは自分にそう言い聞かせた。彼女は意を決して立ち上がり、再び通信を試みた。何度かの試行錯誤の末、ついに無線機が繋がった。


「村上さん、聞こえますか?こちらエレナ。今、状況はどうなっている?」


しばらくの沈黙の後、村上の緊迫した声が返ってきた。「エレナさん、悪いニュースです。ログデータを解析していたら、どうやら次の爆発が24時間以内に起こる可能性が高いことが分かりました。さらに、犯人が配送システム全体にアクセスしている痕跡を発見しました。現在、システムの一部が完全に掌握されている可能性があります。」


エレナはその言葉に心臓が凍りつくような感覚を覚えた。「つまり、犯人はまだシステム内に潜んでいて、次の爆発のタイミングを完全にコントロールしているということ?」


「その通りです。しかも、犯人が仕掛けた爆弾の数も、まだ全容が掴めていない。次の爆発が、都市全体を巻き込む規模である可能性も否定できません。私たちは全力でシステムを取り戻そうとしていますが、時間がない…残りはおそらく24時間を切っています。」


「24時間…」再びその言葉がエレナの頭を駆け巡る。彼女はこれ以上の被害を防ぐために、どう動くべきかを必死に考えた。だが、その限られた時間の中で全てを解決するのは並大抵のことではない。「村上さん、他に何か手掛かりは?」


「実は、もう一つ気になることがありまして…」村上は言葉を選ぶように慎重に話し始めた。「爆発が始まる少し前に、システム内に奇妙なアクセスログがありました。そのログは、今までに見たことのないコードで暗号化されていて、解析に時間がかかっています。ただ、そのログが次のターゲットのヒントを示している可能性があります。」


「何か分かったらすぐに知らせてください。こちらでもできる限りのことをする。」エレナは無線を切り、次の手を考えながら現場に目を向けた。


突然、彼女の目に入ったのは、瓦礫の中で輝く何かだった。エレナはその場所に近づき、それを拾い上げた。それは小型のデジタル機器であり、おそらく犯人が現場に残したものだった。エレナは直感的に、この機器が何か重要な手掛かりを持っていると感じた。


「これが…犯人の手掛かり?」彼女はそのデバイスを慎重に調べようとしたが、突然、機器のディスプレイに文字が浮かび上がった。それはただ一言、「24時間後」と表示されていた。


「何だこれは…?」エレナはその文字を見て、一瞬言葉を失った。犯人は、彼女たちに24時間というタイムリミットを突きつけ、次の爆発を予告しているのだ。エレナはすぐにこの情報を共有し、全ての関係者に知らせる必要があると決意した。


「時間がない…」彼女は再び自分に言い聞かせ、すぐに行動を開始した。次の24時間が、彼女たちの運命を決することになると感じながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る