衛星機甲 クレイジー・ムーンの章

困った神サマ


「突然じゃが、鋼鉄のレインよ。おぬしらに頼みがあるのじゃ」



 ピコピコとした猫耳に、顔の下半分を布で隠し、少しえらそうに扇を仰いでいるのが、この転生の間の主であるウィディア。宇宙3女神の長女であり時と空間の神だ。



「他の神が転生させた者たちの中から、『星の力の継承者』を探して欲しいのじゃ」



「……また急ですね。レティア様とメイティア様がおられるのでは?」



「ワシはここを離れられぬし、狭間の神レティアは封印中、因果と恋の神メイティアはイケメンを求めて出張中じゃ。おぬしらにしか頼めん!」



 拝むようにお願いポーズをするウィディア、よく見ると、片目が薄目になってこちらをうかがっている。



 めんどくさそうな予感がしたのか、鋼鉄は鎧の中でじんわりと汗をかいていた。

だが、どんな頼みでも断れない理由が、鋼鉄にはあった。



「私はあなたに大きな借りがある。その恩はわすれていない」



「そう言うと思っておったっ! 素直な地球人は大好きじゃ~」



 嬉しさのあまり飛び上がり、尻尾をフリフリとさせるウィディア。



「さぁて~、そこに扉があるじゃろう、好きな色を選ぶがよい」



 乱雑で上下に配置された扉たち。一つ一つに色が付いている



「どの色がいいと思う? レイン」



 さっきまで無口だったレインと呼ばれるヒューマノイド型機械生命体が淡々とした口調で喋る



「はい、マスター、ワタシは、黒がいいと思います」



「黒かっ! ならばこ奴じゃな!」



 テンションが上がり始めたウィディア、指をパチンと鳴らすと扉の上部にすぅっと名前が浮かびあがる。




 『終(つい)の剣閃、ヴェロニカ』




「剣閃……剣士か」



「ぬふふ~そうとは限らんぞい。まあ、行ってから確かめるんじゃな~」



「レイン、装備の確認を」



「かしこまりました。マスター」



「おおそうじゃ、言い忘れておった」



「む?」



「一度扉に入れば、極度に人体に損傷を与える装備、ディフュージョンスーツの一部システム、各種スキルは制限されるぞい。万が一死にでもしたら神同士の問題になるのでな~」



 2秒ほど固まる鋼鉄。



「了承した。装備は現地で確認しよう」



「はい、マスター」



「うむ! では達者でな~! お土産も期待しとるでの~!」



 扉に入り転送されている最中、鋼鉄は頭の中で「まったく困った神様だ」と、そう思うのだった。



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