第9話 冒険者
俺とリューゲが料理屋を探して歩いていると、城へと続く長い一本道に出た。
その綺麗に舗装された石畳の大通りは、他の道の五倍はあろうかという広さで、街の外れでも関係無く多くの人が往来している。
その脇には大きな建物も多く並んでいた。
「この道は王都に唯一の城への一本道になります。中心部から外れまで多くの店がございます」
「すごいな。どの建物も豪華だし大きい」
「ここは貴族もよく通る場所なので、売っているものも高級なものが多いですね」
言われて外から店の商品を見てみると、たしかにどれも高価そうだ。
「もし何か欲しいものがございましたら何なりとお申し付けください」
「いや、大丈夫だ。あ、でも料理屋には寄ってみたいな」
「かしこまりました。それでは少し散策しましょうか」
「ああ」
そうして二人で石畳の大通りを歩く。
馬車も行き交い、貴族と見られる人が降りて建物に入っていく。
大きな荷物を運ぶ馬車もある。
路上で酒を売る人もいる。
その周りには人々が集まって騒がしく話をしている。
パンを売る人もいる。
詩を披露する吟遊詩人もいる。
子供も、大人も、老人も。
そこには、実に様々な人々がいた。
「ふふ、色々な人がいるでしょう?」
「ああ」
「ハルさんが人について知るには良い場所だと思いますよ」
「そうだな」
リューゲに答えながら、俺はキョロキョロと周りを見回していた。
なにせ、人も店も多い。
気になるものばかりだ。
その中で、料理屋へ入っていく集団に目が止まった。
何か、他の者達とはちょっと表情が異なるように見えた。
「あの料理屋に入ってみたい。どうだ?」
「あちらは冒険者の人達に人気の場所ですね」
「冒険者?」
「はい。王国内はもちろん、世界中を冒険する人達です」
世界中を冒険。
その言葉に少し心が踊るのを感じた。
「あの向かいに大きな建物があるでしょう?あれが冒険者達の仕事を斡旋する冒険者ギルドの建物なんです。皆、近いから寄るんですね」
「そんなのがあるんだな。そうか。決めた。あそこにしよう」
「かしこまりました」
人の波を避けながら料理屋に入っていく。
先ほど服を変えた甲斐があって誰にも気づかれていない。
あの提案をしてくれたリューゲには感謝だ。
料理屋に入ると外の雰囲気とはまた大きく異なる場所だった。
まず客の服が違う。
大半が重装備をしているか、ローブを着ているか、教会の人のような格好をしている。
そして、重装備をしている者達のほとんどは、どこかギラついた雰囲気を出している。
目が合うと品定めをするかのような視線に晒される。
これが冒険者か。
俺は少し怯んだものの、とりあえず先ほど見た冒険者達を探した。
彼らは店の奥の方にいたので、俺もその近くに行こうとする。
そこを重装備の客に呼び止められる。
「おっと、待ちな」
「ん?」
「あんた冒険者ギルドのもんじゃねえだろ?」
「ああ」
「じゃあ駄目だ。この奥は冒険者でもCランク以上のパーティしか通せねえ」
「そうだったのか、すまない。なら別の席を探そう」
「おう、分かればいいんだ」
と、そこへリューゲが口を挟む。
「よろしいのですか?」
「ん?そういう決まりなら仕方無いだろう」
「ですが……」
すると、先ほど見た冒険者から声がかかった。
「どうしたー?」
「あー、いえ、この二人が奥に行こうとしたので止めたんです。冒険者じゃねえみたいで」
「ほー?」
その冒険者は席を立つと近寄ってくる。
そして、俺を興味深げにジロジロ見るなり俺を止めた男に言った。
「通してもいいんじゃねえか?」
「いいんですかい?シュタークさんが言うなら誰も止めらんねえが……」
「なんか面白そうな奴だしな。あんた、奥で食べたいんだろ?来いよ」
シュタークと呼ばれたその男は、俺にニカッと笑ってそう言った。
周囲の客も、店員も、皆が俺達に注目している。
さっきの男の口ぶりといい、シュタークは有名人のようだ。
「ありがとう。なら、お邪魔させてもらおう」
「おう」
せっかくなので通してもらった。
シュタークの席には他に三人の女が座っていた。
俺とリューゲは案内されてその丸テーブルに入れさせてもらう形になった。
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