御霊雅代と矢中田耕一の会話録音データ
覚書
・ 御霊華也氏から送られてきたカセットテープに保存された音声データ。テープには「依頼(矢中田耕一)」と記載されている。
・ 一部雑音で、聞き取れない箇所がある
――父が、残したもの……我が家の、守り神さまなのですが。それを、どうにかしていただきたい。
ええ、はい、守り神さまです。……我が社は、
その言葉どおり、我が社は好調です。……好調すぎるほどに。ええ、ありがたい話です。そう、なんですが……。
はっきり言って私は、恐ろしいんです。はい、守り神さまと……それにまつわる、父の執念が……。
だって、守り神さまというのはああああああ父のあああああああああつまり私のああああああああです。実のあああああああをああああああああして、あああああああ。
……そんなこと、狂気の沙汰としか思えないでしょう。
父が亡くなった今、私にはとても……背負えません。あんな、業は。
はい、ご利益というのは、あります。はっきりとあります。
守り神さまは、家族を心から愛しておられます。父からよく聞かされました。あああああから父をあああああ、いつも導いてくれたと。
守り神さまは、我が社の社員のことも同様に、家族だと思っておられます。そして、我が社で働く社員も皆、守り神さまをああああああだと思い、慕います。
――働きアリの法則、ご存知ですか。
働きアリの集団の中で、よく働くのは全体の約二割程度、残りの八割はあまり働かない。
これは、人間にもいくらか当てはまるようですね。
守り神さまの力は、よく働くアリを十割にするんです。皆、その力の限り働いてくれます。守り神さまの庇護のもとでなら、皆、なんでもやる。会社のためなら、なんでもできる。
それはもう……やり過ぎなほどに。
先程も申し上げましたが、私にはもう背負えません。私は……こんな狂信的な「家族」の長になる器ではない。父とは違って。
笑顔で狂っていく社員たちを見るのは忍びない。それぞれの人生を自由に生きてほしい。父から見れば、この考え方は甘いのかもしれません。
経営の勉強は重ねてきました。会社を背負って、社員たちの生活を守っていくことには覚悟はあります。……あくまで一般的な、経営者としての範囲で。
それにもう、守り神さまにも安らかに眠っていただきたい。
そう、思っています。
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